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五十年前のJKに転生?しちゃった・・・  作者: 変形P
昭和四十一年度(高校一年生)
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三十二話 バレーボール!その二

十一月に開催される地区のバレーボール大会新人戦は、その年のバレーボール部の一年生が出場する交流戦だ。参加校の数によってトーナメントが組まれる。


試合に慣れた上級生が参加しないこと、今までバレーを本格的にして来なかった一年生がいることから、松葉女子高チームの勝率は高くないが、今年は注目株の河野さんが出場するから期待大だ。


ちなみに七月には全国高等学校総合体育大会、いわゆるインターハイの地区予選があったが、結果は言うまでもない。


試合に先立つ十一月一日は河野さんの誕生日だ。十月末に河野さんから強い要請があった。


「頼む、美知子。私にもミチンガをくれないか。今度の試合で青海高校に勝ちたいんだ!」


俺は快く、夏休みに作っておいたエメラルドブルーのブレスレットをあげた。


「試合中に緩まないように、しっかりと結んでくれないか」


そこで俺はブレスレットの両端を本結びで結んだ。帆船の時代に船乗りがロープが緩まないように使った結び方の一つで、スクエア・ノットとも呼ばれる。


ブレスレットの一端をループ状にし、もう一端をループの中から通して、外側をぐるっと回って再びループの中に通し、両端を引っ張って締める結び方で、結ぶのも結び目を解くのも簡単だが、引く力が結び目を締めるように働くため、自然には緩みにくい。


手首の動きを制限しない程度に巻き、


「これでどう?プレーの妨げにならない?」と尋ねた。


河野さんは手首を動かしてみて、


「軽いし、柔らかいし、邪魔にはならないよ。ありがとう、美知子」と、とても喜んでくれた。




今回の大会は日曜日に市民体育館で行われた。またバスに乗って市内に行く。


恵子と委員長も一緒だが、淑子や麗子たちは用事があって来れなかった。


一年生の別のクラスの、河野さんのファンの女子生徒も何人か会場に行くようだ。


「青海高校は地区の強豪校だから、一年生もバレーの経験者が多く入ってくるって」


俺は河野さんから事前に聞いておいた情報を恵子たちに披露した。


「松葉はただの女子高だから、中学時代の名選手はあまり入って来ないわね」


「六月の練習試合で青海高校といい勝負をしたけど、ああいうことは滅多にないみたい」


「だから、練習試合で活躍した河野さんが期待の星ってわけね」


俺たちは最寄りのバス停でバスを降り、歩いて体育館に向かった。体育館に入ると、二階の観客席に上がる。観客はそれほど多くない。


俺たちの席の近くに河野さんのファンたちも座った。先ほどから俺の方をちょくちょくにらんで、何か話している。


「みーちゃん、河野さんのファンからにらまれているね」


「そ、そう?」


「やっぱり体育祭で河野さんに抱きついたのが良くなかったんじゃない?」


「そうよね。あのときは、私にだけ抱きつけば良かったのに」


いや、河野さんと委員長を均等にたたえただけだからね。


そうこうしているうちに、松葉女子高チームの第一戦が始まった。相手は市立高の女子チームで、あまり強い選手はおらず、余裕で勝ち抜いた。


両手をあげて喜ぶ俺たち。河野さんのファンのグループは、俺たちよりも大きい歓声を上げていた。


トーナメント表を見ると、次の相手がライバルの青海高校だ。・・・こっちが勝手にライバルと言っているだけで、青海高校にとっては松葉など眼中にないかもしれないが。


松葉チームが体育館の外へ出て行ったので、俺たちも降りてみることにした。ファングループも、俺たちと競うように階段を降りていく。


体育館の外側の一角に松葉女子高チームが集まっていた。出場しない先輩も来ていて、いろいろ注意したりしているようだ。


俺たちは邪魔をしないように遠巻きに見ていたが、先輩が河野さんの左手首に巻かれたブレスレットに気づいた。


「河野、何だこれは?」


「これは美知子・・・友だちからもらった、望みが叶うという腕輪です。青海に勝つよう願いを込めました」


その言葉を聞いてファンの女子生徒たちが俺を見た。


チームのほかの一年生もブレスレットを見せてもらっていた。


勝利は保証できないけど、少なくとも全国大会優勝といった大きすぎる願いでなくて良かった。


近くの水道で首を傾けて水を直接飲む。委員長は両手をお椀の形にして水をためて飲んでいたので、女子高生として恥ずかしい行為かなと思ったが、恵子も同じ格好で飲んでいた。


再び二階の観客席に戻る。もうすぐ青海高校との試合だ。青海高校も第一戦は余裕で勝利していた。


両チームが体育館に入ってきた。まず、コートのエンドラインに整列すると、相手チームに礼をして、コートの中に入っていった。チームメイトのかけ声が響く。


青海高校のサーブから試合が始まった。


レシーブし、トスからスパイクへと運ぶが、相手のブロックに阻まれる。


さすがは青海高校。一年生でもけっこう強い。第一セットはあっという間に取られてしまった。


「あわわ、大丈夫かしら」試合の行方を心配する恵子。


しかし河野さんは、コートの中でチームメイトに


「勝利の女神がついているから、頑張ろう!」と叫んで、左手首のブレスレットにキスしていた。


「みーちゃん、ミチンガの力で勝てるよね?」


俺に聞かれても困る。


しかし河野さんの鼓舞が効いたのか、第一セットを落としてかえって緊張が解けたのか、第二セットでの松葉チームの動きは良くなっていた。


要所要所で河野さんのスパイクが決まる。時にはフェイントを織り交ぜ、着実にポイントを稼いでいった。


「相手チームをうまく翻弄しているわ。さすがね」委員長のメガネが光る。


簡単に、とは言えなかったが、なんとか第二セットを取った。


「もう胸がドキドキしっぱなしだわ。早く決着をつけて」と委員長がややぐったりして言った。


「確かに心臓に悪いよ」と俺も言った。「でもあと二セット取らなきゃ」


第三セットは、第二セットよりも激しい応酬となった。


スパイクとブロックが交差し、落ちたボールをぎりぎりで拾う。そんな展開を繰り返し、サーブ権が移るだけでなかなかポイントが入らなかった。


やがてチームメイトに疲労の色が見えてきた。相手も苦しそうだが、松葉チームほどではない。


何度目かのジュース(デュース)を経て、最後にようやく河野さんのフェイントが決まって第三セットを勝ち取った。


応援していた俺たちも疲労困憊して、大歓声を上げることもできず、その場に崩れ落ちた。


「はぁ、はぁ・・・」心臓に悪い展開だ。


「あたし、もうだめ・・・」


「頑張るのよ。河野さんたちはもっと辛いんだから」


第四セット開始の直前、河野さんたちは円陣を組んで気炎を吐いた。まだまだ、やる気十分だ。


しかし第四セットでの松葉チームの動きは悪かった。何とかレシーブをするが、強い攻撃に結びつかなくなっていた。


河野さんにトスが上がっても、強いスパイクは打てず、フェイントを繰り出すことが多かった。


逆に青海高校チームは勢いづいて、これでもかと言わんばかりに強いスパイクを打ってきた。松葉チームはブロックしようとするが、ブロックしきれなくなっており、とうとう第四セットを落としてしまった。


「河野さんが、疲れて・・・負けちゃった」嘆く恵子。


「まだ、第五セットがあるわ」そう言った俺自身にも、もはや絶望的に思えた。


ところがいざ第五セットが始まると、センターの選手に向けたトスが、実はライトにいた河野さんへのロングトスで、右側から強いスパイクを放って決めた。


河野さんがサーブを打つと、相手選手の手前でボールが浮いて、レシーブし損ねてポイントが入った。


「何これ?第四セットと全く違う!」


「わかったわ」委員長が叫んだ。「第四セットで疲れ果てたように見えたのは、動きを最低限に抑えて、体力を温存してたのよ!・・・そして相手チームをあおって、体力を使わせたんだわ!」


「え?それ、ほんと?」


「多分。・・・バレーボールのことは良くわからないけど・・・」声が小さくなる委員長。


とにかく河野さんの強打が復活したことだけはわかった。


俺たちも、河野さんのファンの女子生徒たちも、気力を振り絞って声援した。


そしてマッチポイントとなり、河野さんの放った“伸びるサーブ”が相手チームの選手の体に当たって、ボールがコート外に落ちた。


飛び上がって喜ぶ松葉チームの選手たち。俺たちも大歓声を上げた。ところが河野さんは、しばらく茫然とした後、うずくまって足元に落ちていた何かを拾った。


そして河野さんはガッツポーズを取って「やったー」と叫ぶと、チームメイトのところへ駆け寄って行った。


「試合が終わったから、また体育館の外へ出て来るよ。見に行こう」


俺は恵子たちを誘って立ち上がった。もちろんファンの女子生徒たちも後れを取らない。


体育館の外へ出ると、まもなく松葉チームが現れた。互いに肩をたたきながら、喜び合っている。部の先輩も、河野さんの頭をくしゃくしゃと撫でながらほめたたえていた。


その河野さんが俺の方を見ると、突然両手を上げて駆け寄ってきた。


「美知子――!!」


「え?」と俺が思う間もなく、河野さんは俺の体を両手でつかむと、高く抱き上げた。


「美知子のミチンガが効いたんだよ!」


・・・そうか、あのときコートで河野さんが拾ったのは、切れて落ちたブレスレットだったのか。


そう思った瞬間、河野さんは俺を抱きしめ、頬にキスをした。


それを見ていたみんなが目を丸くした。恵子も、委員長も、ファンの女子生徒たちも・・・。


「お、おめでと・・・」俺は河野さんにそう言うのが精いっぱいだった。


河野さんたちは青海高校との試合で全力を使い果たしてしまったのか、続く第三試合はあっさりと負けてしまった。


俺たちも精根尽き果て、家に帰ることにした。帰りのバスの中で委員長がぼそりとつぶやく。


「河野さんは、美知子さんにいろいろしてもらうばかりで、美知子さんに何もしてあげていないのに、キスするのはずるいと思うの」


確かに、委員長には成績アップのお礼にキスをすると約束しているからな。


「割り増しを要求するわ!」


割り増しって何をどうするんだろう?背筋に冷たいものが走った気がした。


恵子も何かぶつぶつ言っていたが、何を言ってるのかよく聞こえなかった。


ほかにも気がかりなことがある。河野さんのファンたちに妬まれないかということだ。




月曜日の休み時間に、さっそくその子たちが俺を訪ねてきた。


「藤野さん!」


「は、はい」緊張して見つめ合う。


「私たちにもミチンガを作ってほしいの。お金なら出すから」


「え、そっち?」俺は拍子抜けした。


「・・・お金は要らないから、好きな色の刺繍糸を持って来て。そしたら作ってあげるわ。少し時間がかかるけど」


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