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向こうから来たのです

一話にしたら、長くなったのです。ごめんなさいです。

 「フェリ~、ねえ、あれってなんなの、なんなの~」


 「エリ、慌てすぎ。フェリノアさんの事、呼び捨てになってるよ」


 「いえ、それはフェリで構わないのですが」


 「あ、じゃあ、私達も呼び合ってるように、エリとメルでいいから」


 「また勝手に決めて~。でもフェリさん、これからは私の事も、メル呼びでいいですから」


 「はい、判りました、お二人とも。それでどうしたのです?」


 「それでどうしたのですって、さっきの事よ。なんなの、あれ」


 「あれ、とは?」


 「自己測定よ。なに、あの記録。少し自信がある程度じゃないじゃない」


 「え~と、王都ではあれは普通ではないのですか?」


 「国中何処であっても普通じゃないと思うけど」


 「そうなのですか?開拓村に出向いて来られていた冒険者の中には近い方がいらっしゃったのですが」


 「それ多分、最高ランクの冒険者。そんなのと普通の人比べたらダメ」


 「そ、そうなのですね。これからは心します」


 などという、騒動を経験し、それから数日は平穏な学園生活?を過ごしていました、が、本日放課後になり、皆席を立ち帰ろうとしていた時の事、廊下の方が騒がしくなり、黄色い声が上がりだしました。


 「ルイネス殿下と、ヨシュア様、ロイス様が此方の方に来てらっしゃいますわ」


 「何処かに御用なのでしょうか?」


 「1-2の教室みたいですわ」


 ざわざわとした喧騒の後、ドアが開かれると、教室の後ろ側より、中に声が掛かります。通例により直接大声で呼びかけるのは、良しとはされていませんので、廊下側の列の最後の席の方、受付嬢と言われる方が対応なさいます。


 「こちらの教室に、フェリノア・アレイシスという生徒が居ると思うんだけど、呼んでもらえないかな」


 「ルイネス様、お呼びしますので、少々お待ちください」


 立ち上がり、そそくさとこちらに向かってくると、声を掛けられます。


 「フェリノアさん、殿下がお呼びです。<何かされました?>」


 最後は小声で話し掛けてくれたのですが、心当たりはありません。なにせ関わらない様に心掛けてる方達なのですから。なので、


 「ありがとう御座います。ご用件は何なのでしょうね。訊ねてみます」


 そう答えた後、お呼びされた方の元へと歩み寄りました。


 「君が、フェリノア・アレイシスか。用が有る、ついて来てくれ」


 その場で踵を返そうとする殿下に一言。


 「申し訳ありません殿下。フェリノア・アレイシスは私でありますが、名乗りもしない殿方三人に目的地も告げず呼び出されるいわれはありません。とるに足らぬとはいえ令嬢です。幾ら殿下とはいえ礼儀に反してはいませんか?」


 「ルイネス・エーデルシュタインだ。わが友二人が其方に話があるというので、学園長に訓練場を使う許可を貰っている。ついて来てくれ」


 「初めまして、ルイネス・エーデルシュタイン様。アレイシス子爵家が三女、フェリノア・アレイシスと申します。お申し出お受けしました。ご案内をお願いいたします」


 「ああ、ついて来い」


 皆が見守る中、そう声を掛けられ訓練場に向かわれるのですが、興味がある生徒たちが大勢、遠巻きについて来ています。


 「周りの方達は、そのままで宜しいのですか?」


 「証言を得る証人として役には立つだろう。構わない」


 それから私達四人の間には沈黙が訪れるも、目的地へと向かい、辿り着きました。周りを大勢の生徒に興味津々と見守られる中、お話が始まります。


 「フェリノア嬢すまないな。私としては興味がないので用はないのだが、二人の親友が其方に自己測定の結果の件で、話があるというので呼び出させてもらった」


 「では、殿下自体はお話は無い、という事で宜しいのでしょうか?」


 「そうだ」


 「おいお前・・・」


 「お待ちください、ロイス・アルスコット様。自己測定の結果の件と申されますのなら、貴方より先に、お話が早く済むであろう、ヨシュア・シューベルク様とお話したいと思います。ヨシュア様、魔力視をお持ちだと思いますが、その目で見られて、まだお話がおありですか?」


 「いや、先程までは信じられず、ロイスと共に話に加わるつもりだったが、未熟な私でも分かる。教えを乞うている、宮廷魔術師団長以上の魔力の塊のような其方を見せられては、話をするだけ無駄だ。友人のロイスを見守るだけの立場に代えさせて頂こう」


 「了解しました。流石お噂通りの冷静沈着な方でいらっしゃいますのね。では、先程はお話を遮り申し訳ありませんでした、ロイス・アルスコット様。お話をお伺いいたします」


 「では言おう。どうやって周りの先生方や生徒達を誑かしたのかは知らないが、貴様の嘘の自己測定の結果は認められないし、そのような人間が学園に相応しいとも思えない。なのでさっさと学園を自ら出て行ってもらいたい」


 「ロイス様、貴方が何をもって結果を嘘だと仰っているのかはわかりませんが、出て行けとの先程の発言、そのお言葉は、ご友人方も納得されているお言葉なのですか?」


 「お前のような奴に、俺以上の成績が出せる訳はないだろう。それを知っているからこそ、二人はお前に話すのを納得している」


 「お噂とは違い視野狭き、心の小さき方なのですね、ロイス様」


 「この上侮辱までするか、貴様・・・」


 「ではお伺いします。先程も申しましたが、何をもって自分以上はないとお思いですか?」


 「貴様は知らないだろうが、私は小さい頃から人以上の鍛錬をしてきた。それが答えだ」


 「判りやすくお話をする為に、先ず握手をしましょう。思いっきり力を込められて構いません、私は徐々に力を込めていきますので。その後の方が納得して頂けるかと思います」


 そう言って、手を差し出すと、顔色を変えて、力を込められた。なので、こちらも徐々に力を込めていくと、


 「く、は、離せ。なんだこの力は」


 「先ずは測定結果の握力は判って頂けたかと思いますが、視野が狭すぎます。それに自信を持ちすぎです」


 「貴様・・・」


 「確かに貴方は、将来この国を背負われる、ご友人二人と共に歩めるよう、また尊敬できる父君を目指す為、普通の方以上に努力はされていると思います。学園入学時に最上級生と互角に剣を振るえるのですから私も努力は認めています。ですが、何故それが最高なのでしょう?」


 「何故だと、この血がにじむ思いの努力を・・・」


 「そこなのです。訓練をして下さっている、貴方の父君も兵の方も、その心意気を判っておいでです。なのでその時点、その時点で最適な訓練をされたと思います。その時点の最適です」


 「貴様何を言って・・・」


 「ロイスさま、お尋ねします。その訓練で死にそうになった事は、ございますか?腕が千切れそうになったり、足が違う方に向いたり、油断した時背中から思いっきり傷を負わされたりしたことなど、御座いますか?」


 「そんなものある訳が・・・」


 「聞いて下さい。貴方方のいう辺境の開拓地を任された我が家は噂通りの貧しさです。父は爵位に対する給金を貰ってはおりますが、それだけでは足りず年々私財を使い、国から申し付かった開拓村を支えてきました。我が領はそれだけして支えても、税となる収入が無いのです。私が幼いころなどは、領民は食うや食わず、何とか生きている状態でした。父はその方々に税になるものを寄越せなどとても言えなかったのでしょう。さりとて国から任された事業を途中で放り出し、止める事も出来ません。

 そんな状態なので、我が家の食事も、噂を聞いている皆様が想像できます様に、相当貧しい物でした。幼い頃、最後の方などは、水の様なスープでしたね。

 ある時、母がぽつりと言うのです。このままでは皆の健康が心配だと、もう少しでも野菜でもいいから手に入らないものかと。なので、家の子供としては将来必要とされない私は、五歳の頃でしょうか、領地である開拓村へと赴きました。ですが領民も飢えているのです。食料を寄越せなどとは言えません。なので領民の畑の横に、私が自由に出来る畑を耕して野菜を育てました。途中から鍬では間に合わないので、魔法も使い、耕し成長させ、我が家の分だけでなく、少しは領民にも分けられるほど作りました」


 「・・・・」


 「そうして、数年過ごしていると、我が家に弟が生れていたのですが成長が遅いのです。初の跡取りとなる男の子です。家族もとても喜んでおりましたが、母がまたぽつりと言うのです。少しは栄養をとる為に、お肉も欲しいわね、と。偶には細切れの様な物が、スープに入っている事はありましたが、偶になのです。満足出来るほどではありません。

 なので私は決意しました。嘆きの森に行こうと。開拓村に行って、畑を耕している時、村の狩人や冒険者が村の為の獲物を狩ってくるのを、偶に見ておりました。なので自力で取ってこようと。

 最初の方は入り口の方でも怪我が絶えず、回復魔法を覚え使いこなせるよう努力しました。奥へ行くほど獣や魔物は強くなりますが、その分食料のお肉も大量に手に入ります。なので奥を目指して進みましたが、野生の敵は強く、死にそうだからと手加減などしてくれません。何度腕を嚙み千切られようとしたか、突進で何度突き飛ばされ足が違う方を向いたか覚えていませんが、それでも頑張りました。今日はもう食材が手に入ったので終わりと思い、踵を返した際、背後から傷を負わされたこともあります。なので反省して、結界魔法を覚え防げるようになりましたが。

 貧しい我が家と領民たちと生活をしていく為、そのようにして過ごしてきましたが、お話をお聞きになり貴方様の訓練より劣っていると思われましたか。お話はそれだけです」


 「すまなかった。私は本当に君の言う通り、視野が狭かったようだ。それと、私は家族や友人に大切にされていたのだと、改めて思う事が出来た、感謝する。

 本日の事、改めて詫びさせてもらう。すまなかった」


 「判って頂けたらいいのです。今のお顔を窺いますと、さっぱりとした顔立ち。私が聞いた噂通りの方に戻られたようで安心しました。それでは皆様のご用が済んだのでしたら、これでお暇させて頂きます」


 「ああ、時間をとらせて、済まなかった。ありがとう、フェリノア嬢」


 会話を済ませ立ち去る際、殿下の横に並んだ際、小声で申し上げました。


 「殿下。お城へ帰られたら、今日の事、もう一度お考え下さいませ」


 立ち去る私を憮然とした態度で見送る殿下がありありと判ります。まあ、これで、攻略対象も近寄っては来ないだろうと、心が軽くなるのでした。

楽しんで読んでいただけたら幸いです。

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