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俺の妹になってくれっ!!〜純愛vs変態の恋愛バトル〜  作者: トノカ


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第4話:鬼囲家緊急会議~プロジェクトS 新たなる挑戦~

「……それで、何か私に言う事はありませんか? 坊っちゃん。」


「何が不満だったんだ、完璧な作戦だった筈だ。あと縄がキツくて痛いぞ。」


「ええ、完璧に犯罪者になれますね。敵対グループの関与を疑うレベルの完璧さです。」


 鬼囲家の才馬の私室。

 今そこでは椅子に縄で縛り付けられた才馬の周りを、ネネが腕組みしながらグルグルと回っている所だった。

 別に才馬を生け贄に邪神召喚の儀式の進行をしているのではない、単なる今日の反省会である。


「ふぅっ、今日の依望様に対しての坊っちゃんの行動は、百歩譲ってセクハラです。譲らなければ性犯罪です。お金で女の子に無理矢理言う事を聞かせようなどとは、鬼囲家末代までの恥ですよ。」


「待て、俺は金で強制などした覚えはないぞ。あれは歴とした交渉だ。それと縄については無視か?」


「坊っちゃんから見て強制でなくとも、あれだけお金を積まれて迫られたら一般人は普通に怖いですよ。30億なんて大金、何処かの中小企業でも買収するつもりですか?」


「むう……しかし、前回ネネにやった時はこんなに怒らなかったではないか。何が違うのだ。」


「引いてたから怒らなかっただけで、女の子をお金で買う行為自体を認めていた訳ではありません。それにその後、椅子に固定していたあれは何ですか? あれこそ確実に無理矢理だったでしょう。性犯罪ですよ、坊っちゃん。」


「そうなのか。庶民の世界は色々面倒だな。」


「坊っちゃんが世間知らず過ぎるだけで日本の常識です。」


 確かにあれは少々荒療治ではあったかも知れない。一緒に添い寝からの深夜のトイレ付き添いなど、兄妹の頼もしさや良さを教える最高のシチュエーションだと才馬は思って居たのだが、確かに燈子には不評気味であったし……。


「そうか、ならばもうしない。ネネに嫌われたくもないからな。」


「また直ぐそういう事を言う……。」


「何だ、また何か問題があったのか?」


「問題ではありませんが、坊っちゃんはもう少し女心と言うものを学ぶべきかと。」


「ふむ。まあその女心とやらは、俺が優先的に学ぶべきものだと、今回の作戦にあたり他のメイド達からも言われてはいるが……。」


 ネネの言葉の意味は良く分からないが、女心を知る事が妹を作る上でも重要である事は才馬も既に承知している。

 だからこそ、大量の少女漫画を参考にして屋上に燈子を呼び出したりしてもみたが、あれも失敗だった。

 何だかんだで、天才である才馬が三日以上かけても修得出来なかったスキルはこれが初めてである。


(やはり、燈子を妹にする為の女心の修得には、教本だけでは足りないと言う事か……。)


「………むう。」


「……はぁっ、まったく。こんな騒ぎはこれっきりにして下さいね。坊っちゃまは私達の主にして、世界すら動かす鬼囲グループのCEO、鬼囲才馬なのですから。少しは自制と言うものを……。」


「ネネ、お前に女心を教われば依望を妹にできるのか?」


「話聞いてました?」


「愚問だな、聞いていた。」


 片腕であるネネの説教を聞き流す程、才馬は愚かではない。天才とはいっても、人は万能にはなれないのだ。人の意見にはきちんと耳を傾けるのが、才馬のCEOとしての人望の所以である。


「ま、まあ、確かに私は少なくとも坊っちゃんよりは女心を知っていますが……。」


「よし、ではネネ。お前をこれより『プロジェクトS』の女心担当アドバイザーに任命する。」


「何ですか『プロジェクトS』って、セクハラの略ですか? センセーショナルの略ですか? セクハラでセンセーショナルに新聞に載りたいんですか?」


「シスターの略だ。プロジェクト名は凝った物より分かりやすさ重視だ。」


「分かりやすく諦めていませんね……。と言うか、その意味分からないプロジェクトに私も参加しなきゃ駄目なんですか?」


「ああ、これは命令だ。そんな嫌そうな顔をしても無駄だぞ。」


「坊っちゃんに仕えてから今まで、こんな不名誉な辞令出されたのは初めてですね。私でなければ仕事辞めてます。良く耐えてますよ私、頑張ってますよ私。」


 適材適所、そして信頼できる人物を重要なポジションに配置するのは人事の基本だ。そしてネネのその不満は受け取るが認めない。才馬は今回の自分の決定に絶対の自信を持っていた。

 部下の意見は聞くが、最終決定権を持つのは才馬自身なのである。


「ではネネ、アドバイザーとしての初仕事だ。プロジェクトの進行の為、俺に女心について教えてくれ。後、そろそろ縄を解いてくれ。」


「やっぱり本気なんですね……。まあ、一人で暴走されるよりはマシですが……。」


「ちょっ、ちょっと待って下さいっ!」


「むっ? どうした、マイ。今まで黙っていたのにいきなり叫び出して。」


「いやいやいや、ネネ先輩に女心とか無理無理の無理ですよ!? マイの状況見て下さい、完全に蛮族の所業ですよ!? あ痛たたたっ! ネネ先輩本気で痛いですっ!」


 部屋の中でも窓際の日が当たる辺りで、マイは床に正座で座らせられたまま、膝に重そうな石板を何枚か乗せられていた。

 そんなマイの悲鳴混じりの異議申し立ては、ネネが石板に軽く体重を掛ける事で瞬間的にただの悲鳴に変わる。結構有名な拷問のお手本の様な光景である。


「マイはまだペナルティの途中ですよ。無駄口を叩くなら石板の枚数を増やしますからね。と言うか蛮族とか失礼な事を言わないでください。言うならせめて可愛くヤバンちゃんとかにしてください。」


「石板増やしながら言わないでくださ痛たたたっ! こんな拷問が得意なフレ◯ズは絶対人気出ませんからっ、イロモノの出落ち係ですからひぎいぃぃっ!? くっ、ご主人様さえ人質に取られてなければマイの方が強いのにぃっ!!」


「まったく、マイもマイで反省が足りませんね……今回の滅茶苦茶な作戦は貴女の案だそうじゃないですか。周りに迷惑かけた分、たまには反省するように。」


 ネネの108のお仕置き術の一つ『石の下に三時間』はマイにしっかり効いている様で、もう完全に涙目になっている。あれは実際辛い、才馬も何度かやられたが、あれはかなり拷問だ。


「ぐううぅっ、こ、こんな前時代的なお仕置きでマイの出世心を折ろうなんて痛たたたたっ!? 助けて下さいご主人様っ! ご主人様専用のマイのお膝がピンチですっ!」


「はっはっはっ、相変わらず仲が良いな二人とも。だがネネ、そろそろ真面目に女心の会議の時間だ。マイを解放してやれ。それと俺の縄もな。キツくて痛い。」


「……仕方ないですね。まあ、マイも少しは反省した様ですし。」


 そう言ってマイの膝から軽々と重そうな石板を取り除くネネ。しかし結局才馬の縄は外してくれそうもなかった。

 一方のマイもやっとの事で解放され、自分の膝を抱えてふーふー息を吹き掛けている。こっちも縄を解いてくれる気配はない。もう諦めた方が良さそうだ。


「ふーっ、ふーっ! もうっ、マイのお膝はご主人様の頭を乗せる場所であって、石板を積む台じゃないんですよ! ご主人様はマイのお膝で良い夢を見て、マイは筆頭メイドの夢を見るんです!」


「夢で終わらせて置きなさい。……それで坊っちゃん、女心を知りたいのでしたね。」


「ああ、俺に女心とは何かが分かれば、依望を妹に出来る筈なのだ。必ず修得して見せる。」


「うーん……まあ、良いでしょう。坊っちゃんが女心を学ぶ事そのものには私も賛成ですから。私なりに教鞭を取りましょう。」


「マイの方が絶対適任だと思います……。」


「黙りなさいイービルちゃん。暗黒の出世欲を持つケダモノめ。もしくは狩りごっこと称して嫁をイビる小姑め。」


「ヤバンちゃんに言われたくないです。イービルちゃんってちょっと語呂が似てるだけで上手くないですからね。マイは心まで清廉潔白なア◯イさんです!」


「二人とも、話が進まないからもう喧嘩は止めろ。命令だ。」


「「……すいません。」」


 ちょっと古いネタは通じない人が多いから止めろといつも言っているのだが。まあ良い、何にせよ女心会議が先である。


「……コホンッ。では気を取り直して、女心とは何かを坊っちゃんに教えようと思うのですが……。」


「うむ、待ちわびたぞ。」


「ぶっちゃけ女心が言葉で簡単に説明出来るようなものなら、誰も苦労はしていません。簡単に人から習えると思わないでください。女心ナメんな。」


「おかしいな。あれだけ学べと言われたのにいきなり突き放されたぞ。ネネの取った教鞭は何処に捨てられてしまったのだ。」


 それでは永遠に女心を知る事が出来ないではないか、ひいては依望を妹にする事も出来ない。それでは困る、非常に困る。

 しかし、悩む才馬の目の前に、ネネはホワイトボードを引っ張り出しつつ、マジックペンを教鞭の様に持って言った。話ながら、女心と言う文字をハートマークの絵の中に書き込む。


「いいえ坊っちゃん、まずは話を聞いてください。女心と言うのは『秋の空』にも例えられる掴み所のない雲の様なものです。人によって、気分によって、環境や、その日の朝の占いによってもガンガン変化し続けます。」


「なんだと!? それは困ったな。女心を掴めとは、雲を掴めと言われているに等しいじゃないか。そんなものをどうやって掴むんだ。」


「その通りです。世の男性方はそうして困りながらも一生懸命対処しようとしているのです。その無理難題に挑むところが、女心を学ぶスタートラインになります。簡単に学べると言う思考は捨ててください。」


「まあ、間違ってはいませんねー。ご主人様は女心の『お』の字も知りませんから、スタートライン一歩手前ってところでしょうか。」


「スタートラインよりも手前なのか!? 三日も掛けて、俺はまだスタートすら切れていないのか……恐ろしい難題だ。」


 ネネは説明しながら、ホワイトボードにスタートラインと才馬の絵(棒人間)を書いた。才馬の位置はスタートラインの少し手前である。才馬はその事実に震えた。


「どうすれば良い……どうすればスタートを切ってゴールが出来るんだ。」


「ふぅっ……坊っちゃん。今、ゴールと言いましたか?」


「あ、ああ、言ったが。」


「その認識が甘いのです。」


「な、なんだと……!?」


 続いてネネはマジックをキュッキュと鳴らし、スタートラインからずっと先まで『女ごこロード』なる道を描いた。しかし、その先にゴールの文字はない。才馬は更に震えた。


「ま、まさか……女心の修得にはゴールがないとでも?」


「学問だってそうでしょう? 学ぶに際限などありません。経済学や経営学を坊っちゃんは高い次元で学ばれていますが、未だに学び、進化なさっています。それは充分ではないと坊っちゃんが感じているからですが、女心もそれと同じと思って下さい。充分と思う事そのものが傲慢です。」


「た、確かに学問ならば考え方はその通りだが……以前心理学の一種かとメイド達に聞いたら、学問とは違うと笑っていたぞ。女心とは、学問ではないのに、修得出来るスキルでもないのか?」


「当たり前です。スキルって……段位とか資格取るんじゃないんですよ? やっぱり、そこから分かってなかったんですね。」


「そうですねー、心理学に近いと言えば近いですけど、個人に依存するので、学問って言える程の法則性はありませんからね。ご主人様は天才ですけど、びっくりする程に個人の感情に疎いですから、マイもそんな事だと思ってました。」


「そ、そうだったのか……心理学に近い……修得出来るスキルではない……学問とも違う……くっ、まるで実像が掴めん。まさに雲のようだ。」


「本来なら、この時点でこんなに考え込むものじゃないんですけどね……。」


 女心と言うもののあまりの不確実さに、才馬の頭は未だかつてない程にクラクラしていた。

 17年間の人生で今まで学び、経験してきた全ての事柄と照合しても、類似するものが見付からない。


「『空気を読む』って意味ではスキルとも言えますし、性質的には学問に近いですけど……ご主人様は前者がトコトン苦手ですからねえ。」


「空気を読む……? 何故俺が、凡人の思考に合わせる必要があるんだ?」


「これですからねー。本気で分からないって顔してますからねー。ご主人様は生まれながらの帝王ですから、仕方ないですが。」


「まあ、坊っちゃんには女心を不確実性の強い学問として始めて貰いましょう。あまり複雑な事を言うと、また暴走を始めそうですし。」


「学問か、それなら任せろ。」


 才馬はメイド二人の言葉に、再び決意の炎を燃やした。『空気を読む』と言う事がトコトンまで苦手な才馬だが、その分を学で補う方針である。

 ネネはボードに『学問ではないが近い』と書き加え、丸で囲んだ。更に才馬(棒人間)の位置をスタートラインの上にまで移動させてくれる。才馬は確かに、前進している実感があった。


「ふぅっ、やっと一歩前進だな。こうして女心について知っていけば、いつかは依望を妹に出来る筈だ。」


「……まったく、まだ勘違いをされている様ですね。」


「な、何っ!? まだ間違いがあるのかっ!?」


「坊っちゃん。ざっくりですが、経営学を学んで分かるのは、会社を運営する方法です。経済学を学んで分かるのは、お金の流れを知る方法なんです。」


「なんだそんな事か。分かっている、あくまで学問とは知識だ。それを活用し、行動してこそ何かが得られる。女心も同じだと言いたいのだろう? 妹を得る為に……。」


「違います。女心を学ぶ事とは、女の子と仲良くする方法を知るものであっても、妹にする為の方法を知るものではありませんっ!!」


「なっ…!?」


ズガーンッ!!


 その瞬間、才馬の全身に稲妻が落ちたような衝撃が走った。まるで、今まで信じていたものが根元から破壊されるような衝撃。世界の全てが偽物であったと言われたかのようだった。


「……そ、そんな馬鹿な……女心とは、妹を作る為に学ぶものでは……。」


「それはあくまで坊っちゃんが言ってるだけです。女心を学ぶ事に、『妹にする』なんてトチ狂った目標は最初から設定されていません。一般的には彼女とか奥さんとかを作る為に学ぶものです。」


「あ、ちなみにマイも最初に、『何にせよ依望様の気持ちを動かしたいなら』って言いましたよー。妹にする以前の問題だったので。」


「………そんな……。」


 それでは何の為に女心を学ぶと言うのだ。彼女とか、奥さんとかは求めていない。妹が欲しいだけなのだ。では何を学べば妹が……。

 そんな風に苦悩する才馬の前で、しかしネネは変わらない口調のままホワイトボードにペンを走らせる。


「そんな顔をしないでください坊っちゃん。雲のような女心の中にこそ、無限の可能性があります。そしてそれこそが、坊っちゃんの勝利の鍵となるのです。」


「しょ、勝利の鍵だと!?」


「そう、その名も……トキメキです!」


「トキメキ……。」


「ぷっ。流石は少女漫画コレクターのネネ先輩ですね。ここでトキメキとは。」


「黙りなさいマイ。坊っちゃん、このトキメキが重要なのですっ!!」


バンッ!!


 力強い口調でホワイトボードを叩くネネ。そして、大きく書かれたトキメキの四文字。才馬の目には、ネネがとても大きく見えた。


「ネネよ。何なのだ、そのトキメキとは。」


「簡単に言えば、異性に対して『格好いいな』とか、『可愛いな』とか、『この人の事が好きだ』って思わされる時の事です。もっと言えば、胸キュンするタイミングですよ! 異性に思わず見惚れてしまったりとか……。」


「ほう……ちなみに今、ネネに対して『大きいな』と感じたのだが。これはトキメキか?」


「セクハラか、あるいは頼もしさではないでしょうか。おいガキ、笑うな。」


「ぷくくっ……す、すみませんっ……胸キュンッ……ぶはっ!ww」


「マイ、後で覚えてなさい?」


 ふむ、これはセクハラや頼もしさなのか。胸キュンとは中々難しいが……だが、先程よりは理解できる気がする。才馬にも思い当たる節があるのだ。


「ならば、俺がネネやマイに対して普段感じている、『可愛いな』と思う感情がトキメキなんだな?」


「うっ……ま、まあ、そうですね……。」


「ネネ先輩ちょろいですねー。まあ、マイもご主人様のそういうところにはキュンキュン来ますが。」


「なるほど、これがトキメキか……。」


そして、これこそが依望を妹にする為の勝利の鍵になる……と。


「ネネ。具体的には、何がどうなって勝利の鍵になるのだ?」


「そうですね。一般的には、このトキメキが続いたり、強くなればなるほど相手を意識してしまいます。最初はちょっと気になるくらいですが、連続していくと好意が明確になっていく感じですね。沢山トキメかせると、その分好意が蓄積されていきます。」


「なるほど、好意が蓄積……。」


「その蓄積度を、仮に好感度……いえ、『キュンポイント』としましょう。」


「ネネ先輩ノリノリじゃないですか。段々楽しくなってきてません?」


「仕事ですから、勿論仕方なくですよ。」


キュッキュッ


 『トキメキ』と書かれた場所から『キュンポイント』と書かれた場所に対して矢印が描かれる。そして、『キュンポイント』からも更に矢印が描かれた。その矢印の先には、彼女、奥さんなどの項目が箇条書きにされており……その一番下に『新たなる可能性』の項目が付け加えられた。


「可能性……。」


「そうです、このキュンポイントはあらゆる可能性を秘めています。男だろうが女だろうが、極論、相手に命を投げ出させる程の力があるのです。」


「い、命を……そんな事が……。」


「まあ、ネネ先輩の言ってる事は大袈裟に聞こえますけど、結構真実ですからねー。」


「そうだったのか……その力を、キュンポイントをもってすれば、依望を妹に出来るのだな?」


「あくまで可能性の話ですよ。トキメキの感じ方は人それぞれですし、妹にする為に必要なキュンポイントも人により未知数です。素養や相性にも依りますが、恋人にするよりかなり厳しいと思って下さい。」


 本来ならば恋人にするだけでも大変なのに、プラトニックなお付き合いどころか、三段飛ばしでいきなり変態行為を要求しているのだ。その時点で望みはほぼないだろう。

 相手がお金に釣られるような子ならまだ可能性はあったが、純情一直線の素直そうな子だったとネネは記憶していた。


(まあこれで坊っちゃんの暴走が抑えられるなら、それで充分ですね。女心の勉強は、元々坊っちゃんには必要でしたし。)


「トキメキ……キュンポイントか……よし、分かったぞネネ!」


「それは良かったです。勿論、女心の内の一部分をピックアップしただけですので、そればかりを学ばれても困りますが……妹を作る為に、一番分かりやすくて学ぶべきなのがトキメキなのは間違いないでしょう。トキメキを学ぶ内に、他の女心の事も分かってくると思いますし。」


「ああ、ネネのお陰で学ぶものがかなりイメージしやすくなった。何にせよ、これで女心を学ぶスタートが切れるぞ! 早速、新たな視点で少女漫画を読んでみるとしよう! それでは、俺は書庫へ向かう。ネネ、マイ、紅茶の準備だ!」


「「承りましたっ!」」


スルスルスルッ


 才馬はそう高らかに宣言すると、自らの関節を外して縄を解き立ち上がった。

 鬼囲才馬は日々進化する。縄解きのスピードも回を増す毎に早くなっている。二人のメイドはその背中に、確かな前進を感じていた。そして……








 ネネは数時間後、自分が凄く余計な事を言ってしまった事を後悔していた。



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