184.上級生産職への道
「はあ、ようやくできた……」
おっさんの帰還というイベントから一夜明けた月曜日。
いつも通り、ポーション類の作成をしていると、遂に蘇生薬の★12が完成した。
普段は【魔力操作】と【気力操作】を5:5ぐらいの割合でやっていたが、今なら割合を変えられるんじゃないかと思い変えてみた。
そうして、それぞれの割合を7:3ぐらいに変えてみたところ、★12になったというわけだ。
正直、割合を変えるなんて今まで考えてもみなかったぞ。
ともかく、これで『上級錬金薬士への道程』をクリアできる。
俺は蘇生薬をインベントリに収納してワグアーツ師匠の元へと急いだ。
「ふむ。確かに蘇生薬の★12だな。これで課題は全て達成という訳か」
「そうなりますね。しかし、さすがに骨が折れました。まさかスキルの割合を変える必要があったなんて……」
「なるほど、全て等分でやってきた訳か。【魔力操作】と【気力操作】で作るものの割合は、魔力的な作用をもたらすものは魔力が多め、物質的な作用をもたらすものは気力が多めだと品質が上がりやすいからな。ものによっては割合を変えないと最高品質には到達せんよ」
「……それを知っているなら教えてくれてもよかったと思いますが?」
「何でも教えていては意味がなかろう。自ら試行錯誤して答えを導き出すことも必要だ」
「……まあ、それはそうですが」
「ともかく、これで課題は無事終了だ。お前ももう上級錬金術士の仲間入りだな」
〈チェインクエスト『上級錬金薬士への道程』をクリアしました〉
〈称号【上級錬金術士】【上級調合士】を取得しました。称号【中級錬金術士】【中級調合士】は上書きされます〉
〈スキル【上級錬金術】【上級調合術】が取得可能になりました〉
はあ、ようやく【上級錬金術】【上級調合術】の2つが入手可能になったか。
βの時は特に制限なく上級スキルも入手できてたから気にしてなかったけど、正式サービスからはロックがかかっていたものな……
とにかく、これで上級スキルも覚える事が出来るようになったんだ。
早速、この2つのスキルを覚えて……って、消費SPが25ずつに上がってる!?
βの時は中級スキルと同じSP15で覚えられたのに、正式サービスからはこんなところでも変化してるのか……
SP自体は大量に余らせておいたから問題ないけど……これ、かなり危険なんじゃないかな?
とりあえず2つとも上級スキルに進化させてと……
「その様子だと、無事に上級スキルを覚える事に成功したようだな」
「ええ、まあ。なかなかコストが重かったのですが」
「ふむ、異邦人だからこそできる業だな。我々では何十年と時をかけてスキルを極めていくものなのだが」
「そこは異邦人ですからね。対価がない訳ではないですが、便利なものですよ」
「なるほどな。異邦人の弟子というのは初めてであるゆえ、勝手がわからなかったがそう言うものか」
「そう言うものですね」
「なるほど、わかった。この先、異邦人の弟子を取る機会があったらそれについても考慮しよう」
「ええ、お願いしますね。かなりのコストを支払う必要がありますから」
「そう言うものか。……そう言えば、本来であれば上級になった祝いに【錬金術の基礎】と【調合の基礎】を教えるのだが……」
ああ、あのスキルってこのタイミングで覚えられるのか。
「お主には必要がなさそうだな。既に上位のスキルを覚えてると見た」
「そうですね。【錬金術の極意】と【調合の極意】を覚えてますから必要ないですね」
「わかった。……それで、この先はどうするつもりなのかね?」
「そうですね……問題がなければこのまま上級の錬金薬士を続けるつもりですが」
「問題か。問題ならばあるな。上級錬金薬士になるには国の許可がいる。だが、異邦人にはまだその許可が下りていないはずだ」
つまりはアップデート待ちか。
『技の羅針盤』もそうだが、今のところはここが限界だな。
「そうなんですね……さて、どうしたものか……」
「各種ギルドが掛け合っているので、近日中には許可も出るようになるだろうが……どうせなら『技の羅針盤』を使って、別の錬金術を学んでみるのも悪くはないぞ?」
「そうですか? いくつも学ぶのは中途半端になりそうなものですが」
「普通の人間ならばそうなるだろうな。だが、異邦人というのは成長速度が我々の常識とはかけ離れている。複数の道を究めるというのも不可能ではないだろう。……まあ、どちらにしても『技の羅針盤』も許可が下りていないと聞く。そちらの許可が下りた後の話になるだろうがな」
「そうですね、そのときに考えてみますよ」
「それがいい。……ところで、他の錬金術で学べそうなものは何があったのだ?」
「ええと……『魔法錬金術士』ですかね」
「……ああ、あれか。また希有な道を。……いや、ガンナーであればその道を歩むのも道理か?」
「……知っているのですか?」
「ああ、知っている。と言うよりも、私の知り合いに魔法錬金術師がいるというのが正しいか」
「……ちなみに、その方を紹介していただくことは?」
「魔法錬金術士の道に進むのであれば喜んで紹介しよう。彼の者も弟子になるものがいなくて悩んでいたからな」
「……そこまで珍しいんですか、魔法錬金術士って」
「錬金術を扱うには魔力は必須であるが、魔術を修めると言うのとはまた別になるからな。錬金術の中でもまったく異なる理を扱うのが『魔法錬金術士』だ。その力は物作りと言うより戦いのためにあるようなものだからな」
「……そうなのですか?」
「まあ、想像しろと言っても難しかろう。まずはそう言うものだと考えておくといい。実際に学ぶ時が来れば喜んで紹介させてもらおう。もちろん、このまま、錬金薬士の道を進むのも構わないがな」
「……ちなみにどちらがお勧めなんですか?」
「君の成長速度を考えるに、魔法錬金術士を経由した方が後々のためになると思うがな。こればかりは向き不向きもあるし一概には言えんよ」
「わかりました。一先ずは持ち帰って考えてみます」
「それがよかろう。ああ、ポーション作成用の素材は今後も販売するので必要であれば買いに来るように」
「……確かに必要なのでしばらくは買いに来させていただきます。ちなみに、あの薬草類はどこで仕入れてるんですか?」
「ああ、あの薬草類は魔術学園を経由して仕入れているものだ」
「魔術学園?」
知らない地名だな。
まだ実装されていないか、それとも調べていないからわからないだけか。
「君達異邦人は知らないか。ここよりしばらく離れた地にある学術都市だ。魔法や魔術だけでなく、様々な知識を研究している国家でな。錬金術や魔術を極めようとしているならいずれは訪れる必要があるだろう」
「……そこについても持ち帰りですね。しばらくは王都から離れられないので」
「他国に渡る以上は許可も必要になるからな。……もっとも、君の場合は錬金術ギルドから簡単に許可をもらえるだろうが」
「そうですね……許可が下りたらいずれ行ってみたいと思います」
「そうだな。どちらにしても、修行の進み具合によってはあそこを訪れてもらう必要はある。それなりの長旅になるので覚悟しておくことだ」
つまりはゲーム内時間で数日程度はかかる行程なのか。
……確かに『他国』と言っていたし、そんなすぐには到着する距離でもないか。
「まずは上級の錬金術を練習するといい。その後、次にどの道に進むかを考えるのもよかろう」
「そうさせてもらいます。それでは、今日はこれで」
「うむ。それではな」
まずはワグアーツ師匠の元での修行は一段落と言ったところか。
さて、後でスキルの割合を変えることについての話はクランで共有しないとな……
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「なるほどね。私らのアイテムが★12にならないのはそう言う可能性があるからなのね」
時は過ぎて夜時間。
ちょうど全員がログインしてるタイミングがあったため、蘇生薬の一件から得た情報を全員で共有することに。
外部へは……しばらく隠しておこうか。
「ふむ……わしらの場合は物質的な側面が多いからのう。おそらく気力を多めにすればよかろう」
「ボクの場合、魔導弓だけが★12になるのは魔法的な側面もあるって言う理由かなー? 後は杖を★12で作ればクエスト完了だけど……魔力と気力どちらを多めにすればいいのかな?」
「私の服や革鎧も気力多めの方が出来がよくなりそうね。……まったく、スキルなしでも★11は作れるから、スキルの比率なんて全然気にしたことなかったわ」
「私の料理も最後に残ってるのは魔法関係を上げる料理ですね。……という事は、魔力多めで作ればいいのかな?」
「おじさんの知らないところで、皆苦労してたんだねぇ……おじさんも3ヶ月ぐらい経てば苦労することになるのかね?」
「ああ、することになると思うぞ。皆、1ヶ月くらい足止め食らってたからな」
「……ライブラリメンバーで1ヶ月って言うのはかなりなものだね。……うん、そのときはアドバイスよろしく頼むよ?」
「まあ、それくらいならな。ただ、感覚的なものが大きいから余り期待しないでほしいけど」
「そこは何とかなるように頑張ってみるよ。……そこまで行くのにどれだけかかるかわからないけどね」
「おじさんの件は、おじさんがそこまでたどり着いたら教えてあげましょう。それよりも、トワ。上級生産スキルを覚えるのにSP25を消費したって本当?」
「本当だ。なんならSSもあるけど見るか?」
「別にそこまでしなくてもいいわ。……しかし、消費SPを上げてくるとはね。SPはかなり余らせているけど、一歩間違うと大惨事なんじゃないかしら?」
「まあ、それもそうだな。最終手段としてサブジョブを変えるって方法はあるだろうけど……」
「それこそ、本当に最終手段よね。……生産掲示板でそれとなく注意喚起しておいたらどうかしら?」
「そうだな。今度暇なときにやっておくよ」
「そうして頂戴。手間だって言うなら私が代わりにやっておいてもいいけど?」
「さすがにこの程度ならな。自分でやっておくよ。……今度のメンテナンス中にでも」
「タイミングとしてはそんなところでしょうね。もっとも、上級生産スキルまでたどり着けてるプレイヤーがどれだけいるか……」
「おじさん、他にいるとしても極めて少数だと思うんだ。君達、先を行きすぎてると思うよ?」
「そうかしら? βの時よりはのんびりやってると思うのだけど?」
「……うん、比較対象が間違っているね? 一般生産者の上位陣がようやく『中級の壁』に到達したぐらいなんだから、もう少しゆっくりでもいいと思うんだけどね」
「別に急いでいるつもりはないんだけどな。……まあ、無理はしてないから、周りが追いつくのを待つさ」
「……サービス終了までに追いつくことがあるといいね?」
とりあえず情報共有も済んだので、この場はお開きとなった。
なお、この後、すぐにユキが最後の料理とやらを★12で仕上げて【上級料理】スキルを覚えたのは言うまでもない。
……ホント、この辺の感覚的な話をする場合、ユキは異常なリアルスキルを見せるよな……
正式サービスから始めたのに、俺達ライブラリメンバーについてこれている辺りがここに現れていると言うところか。
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