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【保存済キャッシュ】2023.09.14_chivaTV_ギョッシーは実在するのか?昭和の闇に消えた幻の怪獣とは

 「昔っからあの湖には『鯨がすんじょる』って、年寄りの間じゃ有名だったんよ。それがいつの間にかギョッシーなんて言われてさ、若者が大騒ぎし始めてね……」


 当時を思い出しながらそう語ってくれたのは、地元で長年農業を営む佐々木信弘さん(仮名・74歳)だ。

 房総の山奥にある、地元民ですら滅多に近づかない小さな湖が一夜にして全国に知れ渡った。

 それはまさしく、1970年代特有の”オカルト狂乱”の始まりであった。


 1973年9月、偶然に記録されたその”怪獣の鳴き声”は日本列島を震撼させた。

 きっかけは、現地にキャンプに訪れていた家族連れが回していた8ミリフィルムと、父親が偶然「生録」の趣味で回していたカセットレコーダーの音声だった。

 映像には、湖に向かって石投げをして遊ぶ長男の修一君(当時7歳)と次男の亮太君(当時5歳)の微笑ましい様子が映っている。しかし、途中から様子が一変する。

 静かだった湖面の中央が突如として大きく盛り上がり、その直後、マイクの許容入力を超える”奇妙な地鳴りのような怪音”が響き渡ったのだ。

 この不気味な映像と音声が当時の人気バラエティー番組に投稿され、お茶の間に放送されるや否や、日本中は蜂の巣をつついたような大騒ぎとなった。


 奇しくも同年の8月には、北海道・屈斜路湖での「クッシー」の集団目撃情報が世間を賑わせていた時期だ。空前のUMAブームの真っ只中に現われた新たな怪獣は、湖の古名「魚宿三潴(ぎょすくみづま)」から、いつしか「ギョッシー」と名付けられた。


 東京大学のY教授(音響工学)は、当時最新の周波数分析器を使ってこの音声を解析。

 のちに「既存のどのクジラの鳴き声とも周波数帯が異なる。いくつかの点において既知の生物のボイスパターンとは全く相容れない部分があり、未知の存在である可能性を否定できない」とのコメントを発表し、火に油を注ぐこととなる。


 現場となった「魚宿三潴」は、千葉の房総半島という東京からも日帰りが容易な立地であったことから、週末ともなれば周囲の山林は黒山の人だかりとなった。

 連日、観光客の自家用車や観光バスが狭い山道に詰めかけたことで、前代未聞の交通渋滞が引き起こされ、近隣住民は悲鳴をあげた。

 しかし、この商機を逃さなかったのが当時の観光レジャー企業と地元自治体だ。

 獣道同然だった山道を突貫工事で舗装し、湖畔には怪しげな首長竜のモニュメントや土産物店が次々と出店。ギョッシーは一大B級観光地として、歪な盛り上がりを見せていった。


 しかし、空前のブームに沸いたギョッシーは、わずか半年後の「ある夜」を境に、奈落へと転落することになる。


「みんな見てたよ。あの日は土曜の夜でね、大人も子供もテレビの前に釘付けだった。まさかあんな事が起こるなんて、誰も、夢にも思っていなかった」


 佐々木さんは今でもその日の事を思い出すと、視線を泳がせ、手を微かに震わせる。


「当時4歳だったうちの息子もね、目をこんなにキラキラ輝かせて、テレビにかじりついてたんだ。だども、あんなことになって……。番組が終わった後、息子が『父ちゃん、なんで?いったい何があったの?』って何度も何度も聞いてきてね。……俺、なんて答えればいいのか分からなかった。今になっても分からんよ。あれは一体、何だったのか」


 佐々木さんを始めとする、全国の無数の家族があの日、リビングルームで「それ」を目撃した。

 それはお茶の間に容赦なく襲い掛かった、あまりにも破壊的な放送事故。

 天災といっても過言ではないほどの、無慈悲な惨劇だった。


「あれは一体なんだったのか?」


 全国の家庭で繰り広げられたであろう、子供たちの無垢で無邪気な問いかけ。それに答えられる大人は、あの夜、日本中に誰一人としていなかっただろう。


 たった一夜のテレビ放送でスターになったギョッシーは、やはりたった一夜のテレビ放送によって忌まわしい禁忌となり、社会の記憶から無理矢理に消し去られる事となった。


 筆者もまた、今なおあの日の惨劇をどう理解していいのか、その答えが見つからない。

 皆さんには、あの画面の向こう側の「答え」が見つかっただろうか。

 もし分かったなら、どうか僕に教えて欲しい。

 あの日、誰に尋ねても返ってこなかった問いかけ。


 ――あれは一体なんだったのか、と。

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