異能の双子と神の宝 2
「鉄にあいされし?どういうことだ?」
巴矢彦が聞き返した。
「巴矢彦は武術が得意だ。矢はおまえの望む方角に飛び、太刀はおまえの手のように動く。そうだろう?」
珠水彦の声は細い。細いが、奥に響いてくる。
「鉄が武器がおまえとひとつになりたがっている、、、ようにみえる」
「た、たしかに矢の狙いを外したことはないし、太刀はわが手のように使いこなせる。だか、それは稽古したからだ」
「稽古する前から。巴矢彦は童のころから、そう、初めて小太刀を持った時から大人も敵わないほど強かった」
「まぁ、そうだな。生まれついて武の才があると、父上も言われた、、、」
「巴矢彦は鉄、つまり武器の心がわかるし、鉄は巴矢彦の心を叶えようとする。武器を持ったとき、おまえはその武器とひとつになり、動ける。鉄に淫されるとはそういうことなんだ」
「それは悪いことなのか?おまえが心配するほど?」
巴矢彦は珠水彦の表情をよく見ようと肩を抱いた手を伸ばした。漆黒のなかにもわずかな青みを宿した大きな瞳が、ゆらゆらと揺れている。
「巴矢彦、弓矢はともかく、太刀に宿るものはものすごく強いんだ。使うものが弱ければ喰われてしまうほどに。太刀が、鉄が人を変えてしまうこともある」
今度は珠水彦の方が、巴矢彦を強く抱きしめた。
「強く。こころを強くしていてくれ。どんな太刀も捻じ伏せるほど。強く!」
「わかった。心を強く持つ」普段大きな声を出すこともない珠水彦の必死さに、気圧されたように頷いた。
「もうすぐ、わたしたちは離れてることになる。巴矢彦、石上がお前を預かりたいと言ってくる。お前ひとりだ。わたしはおそらくここに、父上のもとに残る」
「それも夢でみたのか?」
「いや、三輪の森で黒い影たちが相談しているのを聞いたんだ。蛍が聞いて教えてくれた」
「三輪の森?神の場所じゃないか。人は誰も入れないんだろう?」三輪山は山そのものが神と言われ、神に仕える神官が定められた日に入ることができる。
「誰も来ない場所だから、誰にも聞かれる心配がないんだ。
あの者たちが何者かはわからない。だがわたしたちはもう、いつもお互いを助け合える場所にはいられない」
「こころ強く在るよ。誓う。だから。だから、おまえもちゃんと」巴矢彦の瞳もかすかに潤んだ。「影の上にいろよ」




