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龍族である!思ったより普通じゃない?

キリのいい所で切ったら少し短くなった。

その分、次は長め……になるかも?


「くっ! ふふ! くふふ! あ~はっはっはっ!!」

(まだ笑ってるよ、全く……)


――例の登場シーンの後。一同大笑い……てか抱腹絶倒から立ち直るまで十数分。漸く発作が収まった龍族の皆様方は当然、このシルバースライムに興味を持った。信じてもらえるかは別にしてシノブは全てを語った。自分の前世が人間といった事から今までどうやって生きてきたかを。

 龍族達はそれを聞いて、大層驚きながらも納得していた。アッサリ受け入れられた事に驚くシノブであったが、長い事生きる龍族は以前にも似たようなモンスターを見た事があるとの事――ちなみに、そのモンスターは畑を耕して自給自足していたゴブリンだったとか――シノブも自分と似たようなのが過去に居た事に驚いたが、そんな事があったのならと納得した。

 そんな訳で受け入れられたシノブは、取り敢えずついて来て欲しいと頼まれた男性について行ってるのだが……一向に笑いの発作が収まっていない。そんなに面白かったのか?


(まあ、良いけど……ここが龍族の村か~。素朴って感じだね。何か以外……)


 ドワーフの街とは違い、ただ斜面を削って石造りの家を建てただけの簡素とも言える村。皆が着ている服もシンプルな造りのローブ。穏やかと言うよりもどこか……達観と言うか冷めている様な雰囲気のする村。


智慧(ちけい)有る種族……て言うのがボクの中のイメージなんだけど……な~んか少し違うと言うか……)


 正直な所。シノブがこの村を見た時に思ったのは『止まってる』だった。理由を問われても、わからないとしか言い様が無いが……そんな風に感じた。この村は時が止まっていると。


「ひ~! は~! は~! ふ~。漸く収まった」

(ホントだよ……)


 漸く笑いの発作が収まった、青い髪の20代後半ぐらいの男性――スォイルが目を拭いながら言う。青い髪の穏やかな好青年といった感じだが、先程までの大爆笑の所為で若干イメージが崩れている。そんな彼をシノブは呆れた様に見ている……既に龍族に対しての憧れとか色々なモノがどっかに行ってしまっている。


“いろいろききたいんだけど”

「ん? 何をだい?」

“ひとのすがたをしてるのは?”

「単純に魔術だよ。私達は『無属性魔術』と呼んでるけどね」


 事も無げに告げるスォイル。しかし、シノブは内心非常に興奮していた……てか飛び付いてる。飛び付かれた方は堪ったモンじゃ無いが。


“それってぼくにもつかえる?”

「ぬわっとぉ?! ちょっと?! 離れて! 離して!」


 突然始まった騒動に周囲の皆の注目を集めるが……皆、面白そうに遠巻きに眺めるだけであった。白状者共め……




   *   *   *


「酷い目にあったよ……」

“ごめんなさい”


スォイルに謝るシノブ……先日も似た事をやっている所為か、楕円形の身体が、もんのすご~く平べったくなっている。


“で? どうなの? できるの?”

「……結論から言えば無理だよ」

(…………)


 告げられた言葉にシノブの動きが止まる。


“なんで?”

「単純に魔力量。龍族以外じゃ使えない事は過去魔属石を使って実験済み」

(……………………)


 告げられた内容にシノブの時が止まる。


(……やっぱりダメか)


 人化の夢は絶たれたかと、黄昏(たそがれ)るシノブ。急遽哀愁(あいしゅう)を漂わせたシノブに若干引いてしまうスォイルであった。


「え~と……大丈夫?」

“だいじょうぶだよ”

「なら、良いんだけど……」


 気を取り直して質問を続けるシノブ。ちょっとだけ現実逃避しているのは秘密で。


“みんなひとのすがたをしてるけど?”

「それは、あんな大きな姿では色々過ごし難いしね」

(納得)


言 われてみれば確かにそうである。龍と言えば全長何メートルは軽い筈。そんな巨体では住む場所ですらそう簡単にはいかない筈である。


“こんなやまおくにいてしょくりょうとかは?”

「ああ。私達は食事は必要としないよ。大気や大地に存在する魔力を吸収しているからね。食事はあくまで嗜好品にすぎないよ」

(ご都合)


 まあ、確かに。巨体ならばそれに見合った食事量になる筈。こんな山奥では、それを満たす事など出来る筈が無い。そう言う事情ならば納得出来る。

……(かすみ)食ってる仙人かと思ったのは秘密なシノブであった。


“こんなやまおくにすんでるのは?”

「一つには、ここは大地を流れる魔力の集結点なんだよ。」

(……龍脈みたいなモノかな?)


 魔力を糧に生きている龍族にしてみれば、ここは重要な場所なのだろう。例え山奥であったとしても。

 イヤ、龍族にとっては住む場所など、山奥だろうと変わらないのかもしれない。環境如きに左右される様なヤワな種族とは思えない。


「もう一つは、刺激しない為だね」

“なにを?”

()()()だよ」


――話を聞けば。彼等が山奥に住むもう一つの理由は人間達に配慮してとの事。

 種族的に強すぎる龍族は、ただ(そば)に居るだけで驚異に思われてしまう為。エルフや獣人の様に人間達の隣に在る事が出来無いらしい。憧れを通り越して畏怖になってしまうから。

 だから龍族は距離を取った。最も、今でも人間達は龍族の動向に気を配っているらしいのだそうだ。


(仕方無いのかもね。襲われないとわかってても、虎や熊とは一緒には寝られないしね……)


 差が有れば妬みが生まれるのは必然。しかしその差が大き過ぎれば排除に向かう。例え力の差があったとしても。


「そう言う訳で、私達はここに居るのさ」

“じゃあ。このむらがとまっているのは?”

「?! 気づいたのかい? この村の現状に?」


 驚きと共にスォイルが尋ねる。正直、それに気づくとは思いもしなかった。このスライム侮れないと、密かに思うスォイルであった。


「君の言う通り、この村は()()しているよ。色々な意味でね」

“どうゆうこと?”

「こんな山奥に住んでいる所為もあるし。人間達に変な疑いを持たれたく無いし――何よりも怖いのさ」

“なにが?”

()退()


――どうやら、龍族はある意味最強の種族である為、現時点で発展を遂げ終えているとも言える。となれば、次にくるのは自然と衰退である。龍族はその衰退が訪れる事に恐怖しているのだそうだ。如何に龍族と言えど自然の流れには逆らえない。

 それ(ゆえ)に、()()()()()()()()のだと言う。


(そんな事は無いと思うんだけどな~)


 月に行ける(ほど)科学文明の発達した世界を知るシノブからすれば、まだまだ発展の終わりとは到底思えないのだが、こればかりは彼等の問題なのだから下手に口を出せない……言っても信じないだろうし。




   *   *   *


「ここだよ」


 話しながら歩く事、十数分後。スォイルの家にたどり着く。見た感じシンプルな石造りの大きな家……ホント、龍族の家には見えない……


「ただいま」

“おじゃまします”


 スォイルに続いて家に入るシノブ。居間に通されると、そこには一人の女性が居た。青い長い髪を一本に纏め左肩から下げている。20歳ぐらいの慎ましく落ち着いた印象の女性。


「お帰りなさい――変わったお客様ね?」

“はじめまして。しのぶです”

「?! あらあら。ご丁寧にどうも。スォイルの家内のエフィです」


 シノブが描いた光文字に驚くも、すぐに挨拶を返すエフィ。彼女はクスクス笑いを浮かべながら、スォイルに尋ねる。


「どこで、こんな面白いお客様を見つけてきたんです?」

「降って来た」

「……降って来た??」


 そしてスォイルが一連の出来事を語る。急に降って来たシノブと、その後の例のシーンまで全て。

 それを聞いたエフィは――


「ーーーーっ!!」


――俯いて声を出さずに思いっきり笑っていた。肩が大きく震えている上に、目尻に涙も見える。


(いっそ、声を出して笑ってくれた方がこっちとしては……)


 憮然とした雰囲気で、笑いが収まるのを待つシノブ。(ほど)なくして収まったエフィがスォイルに尋ねる。


「ふふふ。ねえ、あなた。彼を連れて来たのは……」

「うん。そう、あの子に……」


 二人して話し合い、蚊帳の外なシノブ。しかし、すぐにスォイルがシノブに話しかける。


「ちょっと。ついて来てくれないかい?」

“いいけど。どこに?”

「ついて来ればわかるよ」

(??)


 居間を出るスォイルの後を、内心で首を傾げながら追うシノブ。流石に、取って食われる事は無いだろうとは思うが、行き先がわからないのは正直、不安であったが、三つほど隣の部屋の前でスォイルが立ち止まる。


「入るよ」


 声を掛けて部屋に入るスォイル。後に続いてシノブも入る。そこには――


「……お父様?」


――ベッドの上で半身を起こした、弱々しい女の子が居た。

ご愛読有難うございました。


本日のモンスター図鑑はお休みです。

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