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登山である!もう誰にも止められない

年末が近い……執筆ペースを維持するのがキツクなってきた。

(慣れれば結構良い気持ちだよね~)


 呑気な事を宣う我らが主人公、シルバースライムなシノブ。彼は今、空の上に居た。

 当然、彼は飛べない。スライムが飛べる訳無い。飛んでいるのは例の雛鳥……いやもう雛とは言えない。自由に空を飛んでいるのだから。

 その頭の上にへばり付く様に乗っかっているのがシノブであった。先日のアクロバティック飛行以来、シッカリと調き……ゲフゲフン、(しつけ)をしたおかげでトンデモナイ飛行はしなくなったのである……空の旅に連れて行かれるのは、半強制的だが……

 彼も、何度も何度も空の旅に半ば強引に連れて行かれれば、良い加減慣れる。慣れざるを得ない。そんな訳で、今では景色を眺める余裕もある。


(スライムなボクが空を飛んでいる……飛べないスライムは只のスライムだ……な~んてね♪)


 そりゃそうだっ! と、ツッこむ者はこの場には居ない……居て欲しい。


(~♪ ~~♪――うわっと?! どうしたのさ? フェズ?)


 呑気に頭の中で歌なんぞ歌っている途中、急にフェズ――子供達との長い協議の末、命名――が方向転換をする。危うく落ちそうになったシノブがフェズの様子を伺うが、フェズは別に変わった所は無い。


(……()()だよ)


 実の所、こういう事は初めてでは無い。フェズと共に空中旅行をしていると、何回かこういう事があった。そして気づいた。どうもフェズは決まって()()()()を避けて飛んでいる事に。

 今の急旋回もそうだった。ドワーフ達の街がある山に連なった更に大きな山。そこには近づこうとしない。


(何かあるのかな? あの山……帰ったら誰かに聞いてみよ)




   *   *   *


「あの山? ああ、あるぞ」


 空の旅から戻って来たシノブはグレッコにあの山について訪ねていた。

 ちなみに、フェズは街の最下層にある広場……の土俵の上にドッカリと鎮座している。シノブの調……ゴホゴホ、(しつけ)がしっかりと効いている為、街の中に入れる事が許されたのである……最も、土俵の上に居座ってしまった事に関しては一悶着……三悶着ぐらいあったが……


“なにがあるの?”

「あそこは『龍族』の住処だ」

(…………)


 グレッコがそう言った瞬間、シノブの時が止まった。普段ならばプルプルと震えている身体が微動だにしなくなる。

 グレッコがシノブの目の前――核の前――で手を振っても何も反応が無い。どうしたのか、と軽く叩いてみようと更に身を乗り出そうとした瞬間――


“いるの?”

「――のわぁっ?!」

“どこにいるの?”

「ちょっ?! 離れろっ! 近い近いっ!!」


 言ってる事はラブコメ風だが、実際はそんなモンじゃ無い。オッサンの胸元に飛び掛かったスライムがへばり付いているのだから……

 ああ、それとキミ。キミの会話方法って魔術による光文字だって事忘れてない? そんな至近距離じゃ眩しくて見えないよ?


「目がっ!! 目がーーっ!!」


 どっかの大佐のセリフを叫ぶグレッコが救助されたのは、騒ぎを聞いた連中が駆けつける数分後の事であった。




   *   *   *


「ヒドイ目に遭ったぜ……」

“ごめんなさい”


 (いま)だ視界がチカチカするグレッコに謝るシノブ。スライム(ゆえ)にわかりづらいが、本人は土下座しているつもりである。


“それでりゅうぞくいるの?”

「……ああ、居るぜ……」


 シノブの勢いに押されながらもグレッコは答える。仕方無いぞオッチャン。男なら誰だって一度は本物の龍を見てみたいものだ!


“いってもだいじょうぶ?”

「……まあ、取って食われるって事にはならないだろうけどよ……」

“ならいってもいい?”

「……ダメだって言ったら止まんのかよ、オマエ」

“むり!”

「…………そう言うと思ったぜ……」


 溜め息を吐きながらグレッコが言う。顔が無くとも、今のシノブがどれだけ目を輝かせているかは良~くわかる。下手に止めれば再び溶解液のシャワーであろう。


“というわけでいってきます!”

「――ってぇ! ちょっと待ちやがれっ!! アレどうすんだ、アレ!!」


 グレッコが指差した先に居るのは……シノブに非常に非常~に懐いている巨大な鳥であった。


(あっ)




   *   *   *


(スライムが~山を~行くよ~♪ ズンチャッチャ~♪ ズンチャッチャ~♪)


 数時間後。シノブは龍族の住まう地へ向けて、道無き道をひた進んでいた。

……何で数時間も経ってかと言うと、当然フェズの説得に費やした為である。何かエルフの村でも以前同じ事をしたな~、と思いながらも何とか説得は成功した。

……ギリギリ来れる所までついて来た上に、めっさ心配そうに鳴き声を上げる姿に半端無く心が痛んだが、心を鬼にして置いてきた。


(……取り敢えず帰ったら暫くは離してくれないだろうね……それ、エル達にも言えるよね)


 エルフの村の事も思いながらシノブは進む。な~んも舗装されていないデコボコだらけの山道でも、粘液状生物には苦にならない。疲労も無いし。

 しかも、モンスター……と言うか生き物が見当たらない。精々小さな虫ぐらいである。グレッコ曰く、龍族の種族的存在感によって他の生き物が近寄らないそうである。流石龍族、種族の頂点に立つ者。

 そんな訳で、モンスターの襲撃等を気にせずに進む事が出来るので、足取りは軽い。

 問題は――


(道が無いから自分が進んでいる方向が正しいか、わからないんだよね)


――その一点に尽きる。

 ドワーフ達が住む山には山道があったが、こちらには無い。従って、目的地へと正しく進んでいるのかわからないのであった。


(しかし、何でこんな山奥に住んでるんだろ?)


 グレッコの話しでは、龍族は他の種族との交流が殆どと言っていい(ほど)無いらしい。住んでる場所が山奥な上、例の伝言鳥――タイプバードも本能でここには近づけないらしいので、連絡のやりようが無いのであった。

 何故かと訪ねたら、行けばわかるとだけ教えてくれた。妙に神妙な顔つきで。


(まあ、行ってみればわかるんなら、行くだけだしね……問題は、この場所食べ物が無い……)


 モンスターどころか、生き物は小さな虫だけ。後は僅かに生える高山植物のみ。今更ながらに、勢いのまま出て来た過去の自分に一言(ひとこと)言いたくなったシノブであった。


(流石に遭難はイヤだしね~。戻る事も視野に入れておかないと……とは言っても、今日はここまでだね)


 暗くなった周囲を見回して、取り敢えずの寝床を探すシノブ。手頃な岩の隙間に身を潜める。


(前世の皆。ボクはもうすぐドラゴンに会えるよ。それじゃ、オヤスミ~~)


 久々に元の世界の『家族』達を心に思いながら、彼は眠りにつく。




――――スライム睡眠中――――


(……え~~~~?)


 起きた第一声がそれであった。シノブが目を覚ましてみれば、辺り一面、()で覆われていた。

 雪では無い。()にである。自分の居る場所から約半径1メートルより先は、霧に包まれて何一つ見えやしない。空も見えない為、太陽の位置での方角判別も出来無い。


(どうしよ…)


 普通こういう時はジッとしているのが良いのだが、何時になったらこの霧が晴れるのかわからないし、食料のあてもないシノブにしてみれば、危険でも動くしかない。

 問題は――


(進むか、戻るか、どっちにしよ……)


――その一点に尽きる。

 この場面。戻るのが正しい。しかしドラゴンに会いたいシノブにしてみれば、後ろ髪引かれる思いである。


(う~~~~~~~~~~~~ん)


 悩みに悩んだ結果――


(――行っちゃえ♪)


――アッサリ自分の願望に従うシノブであった。




――――スライム遭難……もとい進行中――――


(結構メンドイ……)


 霧の中を慎重に進むシノブ。その進行速度はハッキリ言って遅い。なんせ一々前方を確認しながら進んでいるので仕方が無い。下手すれば、いきなり目の前が崖だったりする。

 霧はいっこうに晴れる気配が無い。身体の中に持っていた風属性の魔属石で風を起こしてみたが、焼け石に水・暖簾に腕押し・糠に釘。やるだけ無駄であった。


(ぶっちゃけ、真っ直ぐに進んでいるかも怪しいんだけどね……)


 どうしたものかと思いながら、シノブは目の前に現れた岩の上に飛び乗り――


(――あれっ?)


――岩が前に傾いていき――


(――はっ?)


――岩と共に落ちた。


(――はあぁぁぁぁーーーーっ?!!!!)


 シノブは気づかなかったが、飛び乗った岩は崖のすぐ手前にあり、しかも歪な形をしていたので不安定だったのだ。


(ちょぉぉーーっ!! あうっ?! まっ!! はぎょっ!!)


 岩肌にぶつかりながら落ちていくシノブ。スライムな身体のおかげで傷一つ付かないが、目――核が回る事はどうしようもない。


(のわっとぉーーーーっ!!!!)


 何かにぶつかり一際(ひときわ)大きく跳ね飛ばされるシノブ。そして――


(――ふみゅっ!!)


――漸く地面に墜落……着地するシノブ。

 すぐに身体を動かして調べてみるが、幸い傷は無い様である。流石スライム。


(ん~~? でも視界が真っ黒……って違うか。ボクの視線が地面に向いてるだけか……)


 ここがどこかを確認しようと辺りを見回して――


(――あれっ??)


――自分が大勢の人に見られている事に気づいた。


(…………)


 前を見る。右を見る。左を見る。後ろを見る。全方位を見て自分の状況を理解する。

 どうやら自分は村の通りの、ど真ん中に落ちて来たようだ。大勢の人達が、いきなり落ちて来た銀色の物体を、呆気に取られた表情で見ている。


(……ここが、龍族の村?)


 周りに見える人達は普通の人間に見える。見えるのだが――圧倒的に存在感が違う。ただそこに居るだけなのに、無条件で平伏したくなる。

 間違い無く、ここに居るのは『龍族』なんだと本能が訴える。


(――って! 今はそれどころじゃ無い!)


 すぐに近くの家の壁をよじ登り始めるシノブ。シノブを見ていた人達は、ただ彼の行動を黙って見続ける……正直、どうしたら良いのかわかっていないのだろう。

 そして、屋根の上からの大ジャンプ。


(とうっ!!)


――そして、色とりどりの『光』が現れてシノブの周りを漂う。

地球のjapan出身者曰く、『魔法少女の変身シーンの様だ』的演出を行いつつ、地面に着地すると同時に全ての光も消え、最後に光で描かれた文字が現れる!!






“しーたん。さんじょう!”

「「「「「…………」」」」」

“しーたん。さんじょう!”

「「「「「……………………」」」」」


 空気が凍る。てか皆の時が凍る。

……おかしい。しっかり着ているのにローブが肩をズルッと落ちる。

 皆が皆。思考も何もかも停止する中、新しい文字が描かれ――






“しーにゃんのほうがよかった?”

「「「「「……………………」」」」」


 その言葉にも反応する事無く皆が固まっていると――


「「「「「――ぷっ! わっははははははーーーーっ!!!!」」」」」


――突然、皆が笑い出した。盛大に、心の底から楽しそうに。腹を抱えて。


(……え~~と?)


 何かわからないが、掴みはオッケーらしいと思うシノブであった。

ご愛読有難うございました。


本日のモンスター図鑑はお休みです。

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