第14話 自動的失敗
怒りに身を任せて勢いで作ってしまったフラウちゃん特製豪鉄ハリセンだったが、完成したそれはとてもいい出来に見えた。だってなんかいつも私が作る物よりも、魔力回路から溢れ出る光が少し強い気がするんだもの。
だけどそれが完成するころにはマスターへの怒りも落ち着いていたので、結局フラウちゃん特製豪鉄ハリセンで殴るのは止めた。
たぶん今ぶっ叩いても、マスターはなんでぶっ叩かれたか分からないと思うし。
それはそうと、結局ローズさんのことを異性としてどう思っているのかは、マスターに聞けずじまいだったなぁ。
~数日後~
今私の目の前の商談用のテーブルには侯爵令嬢、いや元侯爵令嬢が白いビキニアーマーを着用して座っている。
ヘンリエッタが着る純白のビキニアーマーは、優れた防御性能を誇るが、10秒間見続けられるとバストトップの部分が透けて見える《《気がする》》というフザけた代物。そんなのを着たい女性などいないので不良在庫と化していたが、当時まだ侯爵令嬢だったヘンリエッタ嬢が藁にもすがる思いで借金をして購入した。
今日はヘンリエッタ嬢が借金の一部を返済というか、猶予のお願いにやってきていた。
結局、父親の決めた制限時間内に王都の迷宮30階の踏破は無理だったようだ。
まぁそうだよね。
ヘンリエッタって見るからに貴族令嬢って感じで、そんなに戦闘が強いようにはまったく見えなかったもの。しかも迷宮なんて、聞く限りでは罠もあるし魔物の種類も多い。いくらマスターのビキニアーマーが優れていたって、とても1人で進める場所じゃなさそう。
だからそのまま貴族籍をはく奪されて学校も退学になって、今は冒険者で日銭を稼いでいるみたい。
ビキニアーマーの性能とビキニアーマーを着たヘンリエッタの容姿とで、なんとかそこそこ稼げる下心丸出しパーティーに加えてもらえているらしい。
でもとても金貨数千枚を返せるレベルではないみたいだけど。
マスターを待ちながら、ヘンリエッタとそんな会話を交わしていた。
――じー
「ちょっと!なんで女のあなたがじっと私の胸を見るのよ!」
テーブルの上にたゆんと乗っていたヘンリエッタの立派なお胸をじっと見ていたら、ヘンリエッタは腕を交差して私の視線から純白のビキニトップを隠した。
「いや、本当に透けて見えるのかなって」
「いくら同性だからって止めてよ!しかもあなたは、たとえ見えてもそれが偽物だって知ってるでしょ!?」
――ギィー
「あ、そうだ」
ん?私たちのやりとりを聞きながら、マスターがドアを開けて商談ルームに入ってきた。
「それなんだけど、1%の確率で鑑定偽装が失敗して、本物が見えちゃうんだよね」
えっ、何それ、マジで?
私は思わず振り返って、マスターの方を見た。
「うんうん。言い忘れてたけど、自動的失敗ってやつだね。あはははは」
なんの罪悪感もなさそうな顔でマスターが笑っている。
あはははは、じゃないと思うんだけど。
「えっえっ?
なら私、本物を見られていた可能性もあるってこと?」
それを聞いたヘンリエッタは顔色を真っ青にしていた。が、その直後に沸いてきたのだろう、あまりの羞恥に頭を抱えてテーブルに額を打ち付けたまま固まっている。ちらりと見えるその頬は髪色のように真っ赤だ。
「本物を見られているわけじゃないと思ったから、あんなにいやらしい目で見られても私はかろうじて耐えてこれたのに!
無理、こんなのもう無理よ!」
「まぁそうだけど、別に良くない?
どうせ本物かどうかなんてわからないんだし」
「いいわけないだろがっ!」
――バチコン!
私は反射的にマスターの顔面をハリセンでぶん殴った。このおバカマスターめっ!
くぅぅ、これは同じ女性として、沽券にかかわる問題だ。
いくらなんでもヘンリエッタが不憫過ぎる。
でもまだ私の付与魔術の腕でできることなど何もない。
できたことといえば、ヘンリエッタの金貨3,000枚の借金を2,000枚に減額することをマスターに認めさせることと、今日やってあげたヘンリエッタのビキニアーマーのメンテナンス費用をマスターの財布から奪うことだけだった。
……今日、ヘンリエッタが返済できたのは銀貨5枚だから、焼け石に水の気もするけどね。
がんばれ、ヘンリエッタ。
※銀貨100枚で金貨1枚
ここまで読んでくださってありがとうございます。
フラウとマスターの物語は、この14話をもって第一部完(一旦の区切り)とさせていただきます。
またどこかで彼らのめちゃくちゃな物語をお届けできる日が来たら、その時はよろしくお願いします。
応援ありがとうございました!




