第90話 反抗作戦ー4
それでも誰一人として一歩も退かない。
高難度の戦闘の連続は、パーティ全員の戦闘感覚と結束を確実に磨いていた。
呼吸は荒くなるものの、その視線には確かな手応えが宿っていく。
A級探索者の神崎零華のおかげもあって、このパーティはA級ダンジョンに通用する実力を擁していることを悠人は確信した。
自分たちの限界が、一戦ごとに押し広げられていく確かな感覚。
「よし、だいたいこいつのことはラーニングできた。
生成、超特攻毒ポーション!」
悠人はその中心に立ち、戦場を常に俯瞰しながら、生成物で仲間を支え続けた。
生成したポーションを、襲撃してきた巨大なワーム型のモンスターへ投げつける。
モンスターは悲鳴をあげて、ダンジョンの奥へと逃げていった。
「追撃するべきか!?」
悠人は念の為に確認する。
「えぇ、さっさと追うわよ!
スキルでトラップにだけは注意して!
まぁ、ヤツが道を踏み荒らしながら進んでくれるおかげで、たいていのトラップは無効化されるだろうけど」
零華の判断により、一同はさらに奥へ進むことに決め、足を早めてダンジョンの奥へと疾走していく。
「魔法かけるよ!」
茜は走っている中で体力の消耗を抑えるため、身体強化の魔法を全員へとかけた。
「生成、疲労無効化ポーション!」
悠人自身も疲労を軽減するポーションを用意し、全員へ走りながらかけた。
流石に疲労を完全に無効化できるようなものはまだ生成することがでいなかったようだ。
だが、それでも茜の魔法に加えて、さらなる軽減効果を、制限時間付きで確認することができた。
ダンジョンの奥へと進むにつれ、その様相は刻々と変化していく。
天井は高くなり、巨大な根のような構造物が複雑に絡み合いっていた。
まるで生き物の体内を進んでいるかのような錯覚を覚えさせられる。
足元の地面は不規則を極め、油断すれば一瞬で転倒しかねない。
湿度はじわじわと上がり、壁からは不気味な蛍光を放つ苔が自生していた。
悠人は、ラーニング機能を発動させ、警戒しながら、自身その手に持つ剣を強く握る。
「くそ、どこまで逃げるつもりだ、あのデカ芋虫!
生成、超特攻拳銃!」
仲間の動きを一切阻害せず、敵の挙動を制限するための生成物をその手に握る。
かつて一度折れたからこそ、その物理生成の重みは以前の比ではなかった。
剣を鞘に抑え、走流速度を早めて距離をできる限り詰めていく。
その後、悠人は狙いを定めて逃げるモンスターの巨体へと、発砲した。
『ギニャアアアアアア』
ワーム型のモンスターは体を捩らせ、ついに開けた空間で停止する。
表情はよくわからないが、その巨大な口を、恨めしそうに悠人たちの方へと向けた。
ワームが動きを止めた瞬間、リリスの矢がさらなる追撃を加える。
茜の魔法が加わり、零華の一閃が、ワームの胴体を両断した。
「はは、やったぜ。
しかし、色んな意味で手強かったな。
さすがB級は違うな」
ダンジョンの奥深くで、手に入れたドロップ素材の整理を一度行うことに決める。
強敵を打ち倒した後、静寂の中で残された光る結晶。
それは、このダンジョンを象徴する希少素材たちだった。
リュックに入れたそれらを手に持つと、確かな重みと存在感がじんわりと伝わってくる。
このワーム型のモンスターには、体に数多くの魔力が込められた石のようなものが埋め込まれていた。
「しかし、おえ。
気持ち悪いわね。」
悠人たちが素材を切り取る中、零華はその口元を押さえながら、ただ見ていた。
確かに気持ち悪いと悠人も思ったが、ラーニング機能は、それだけで、危険ではないこともわかっている。
不思議とこのモンスターに対する”未知”が消えた瞬間、悠人は、このモンスターのことを、ただの戦利品の塊としか思えなくなってしまった。
「よし、大体採り終わったぞ!
スキルに反応するものもない」
声には疲労と同時に、確かな達成感が混じっている。
ここまでの戦いが決して無駄ではなかったことを、全員が深く理解していた。
素材を囲みながら、これからの強化案や次の目標について短い会話が交わされる。
その一つ一つが、未来へつながる確かな道筋となっていた。
「この素材を使って、装備を生成してみるか。
せっかくだから、残ったこのモンスターの”肉”も使って!」
悠人は深く息を吸い、周囲を見渡す。
仲間の表情には信頼と期待が浮かんでいた。
「なんか、気持ち悪いわね。
まぁいいわ。
とっとと別の物質に変えてちょうだい」
零華だけは相変わらず引き攣った顔で素材を見つめている。
悠人は静かに意識をその手に集中させ、力の流れを克明に感じ取っていた。
かつて一度は失われ、そして昨夜自らの意志で再定義した「生成」の概念。
それが今、悠人の体内で猛烈な熱を帯び、解放の時をじっと待っている。
指先から漏れ出した魔力が、床に並べられた高密度の素材たちと共鳴し、空間そのものが微かに震え始めた。
このモンスターを撃破して得た純度の高い魔石。
それらを触媒とし、自身の生成スキルで新たな装備を生成する。
単なる装備の新調ではない。
それはこの先の死闘を生き抜くための、”手札”の増加であった。
悠人の脳内では、かつてないほど複雑な設計図が猛スピードで組み上がっていく。
仲間たちのそれぞれの特性、弱点、そして可能性。
それらすべてを包摂した最適解を導き出していく。
悠人はあたりに並べた素材に手をかざし、リアル生成A Iスキルを発動した。




