表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【リアル生成AIスキル】を得たので、あらゆる物を学習&出力しまくる件/ リアル・ジェネレーター  作者: AoisoraKumori
第一章(1/3) 『起動』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/113

第34話 他力生成ー2

「よ、よし──

 やった……」


 データが不足していれば生命であっても生成できるのか。

 あるいは生命は”物”と異なり、定義が曖昧ゆえに否定されず生成できるのか。

 どちらなのかは定かではない。

 だが、とにかく成功した事実は揺るがなかった。


 悠人はさらに深く思考を巡らせる。


(向こうの生成スキルの使い手が、”物”以外を生成できるのだとしたら、そもそも”刺客”そのものを送り込めばいいはずだ。

 能力を付与できるなら、チート能力を備えた完全無敵の刺客でも生成すれば済む話だろう。

 それができないということは、後者の可能性が高い……)


 ”「……あなたのスキルは……」”

 ”「……彼とは、違う……」”


(まさか神崎、お前の言葉は──

 そういう意味だったのか……?)


 ふと、神崎零華の言葉を思い出す。

 その真意を、ようやく理解できた気がした。同時に、猛烈な情けなさに襲われる。

 普通に考えて、身を挺して自分を庇うような人間が、あの土壇場でわざわざ悠人を否定するはずがないのだ。


 ”逃げろ”

 や

 ”大人しく彼らに従え”

 という言葉の代わりに、零華はあの言葉を託した。


(くそ──


 俺だけじゃないか。諦めていたのはっ──!)


 言葉の重みを深く噛み締める。


「俺は──

 俺のスキルは特別だっ───

 信じろ、俺自身の可能性をっ……。

 この力で奴らを倒す。

 行ける。

 俺なら──

 俺ならいけるッ」


 ミミズを地面に置き、パンツもどきをポケットにねじ込んだ。

 そのまま、ゆっくりと立ち上がる。


(……だが、どうする。

 不完全なものと、か弱い生命体。

 これだけで奴らとどう戦うというのだ。

 もう碌にコストは残っていない)


(……いや──)


 悠人の中には、まだ一つだけ切り札が残されていた。

 最後の生成のチャンス。

 自分の生命力を削って生成する、あのゴブリンリーダーを打倒した時と同じ手段だ。

 あれを行えば、あと一度は無理を承知で、高度なものを生成できるに違いない。


(……けど、どうする。

 中途半端な代物では、奴らに無力化されて終わりだ。

 チート能力を付与しようにも、今のコストでは限界がある──)


 何を生成すべきか、名案が浮かんでこない。

 データに頼り切っていたツケが回り、皮肉にも今は不完全なものにしか縋れない状況だ。

 地べたに座り込み、必死に知恵を絞る。もう猶予はなかった。


 時間は刻一刻と過ぎていく。

 そんな中、二つの光景が脳裏に鮮明に浮かび上がった。

 一つは神崎零華の剣。

 もう一つは早乙女茜の治癒魔法。

 これまでの記憶が、激しく悠人の脳内を駆け巡る。


(神崎の剣技は、技術として見れば完璧だった──。

 剣の軌道、踏み込み、体重移動、すべてが理想的で無駄がない。

 だからこそ、俺にも模倣できた。

 それっぽく。

 ……結局、最後まで完璧にはコピーできなかったけれどな)


 悠人は静かに目を閉じる。


 彼女の剣には、明確な重みが乗っていた。

 それは筋力や速度といった数値ではない。言葉にならない覚悟が、一振りごとに宿っていたのだ。


(ほんと、ダメダメだな俺は……)


 浮かんでくるのは、相変わらず情けない自分の姿ばかり。

 零華は剣を振るい、何度も自分を助けてくれた。

 茜は無気力な自分にも常に優しく、見守っていてくれた。

 見捨てることもせずに、だ。

 対する悠人の視界にあるのは、パンツ、パンツ、パンツ。

 自分のことだけを考えた、生成、生成、生成の繰り返し。


 意志や感情というものは、完成していない。

 常に揺れ、変化し、定義しきれない不定形なものだ。


「俺に足りなかったのは、知識じゃない」


 悠人は、自嘲気味に口角を上げた。


「心だ。

 意志だ。

 感情だ」


 これまでは理屈を積み上げることだけに心血を注いできた。

 答えを集めて完成形を作り、それこそが最強だと盲信してきたのだ。

 だが、人間である以上、積み重ねるべき本質はもっと別の場所にある。


 分かったところで、今更どうしようもないのかもしれない。


「俺は……

 俺は、これからも間違い続けるだろう」


 深く呼吸し、冷静さを取り戻す。

 相手は意志だけで凌げるほど甘くない。

 これは、自ら身をもって学習し、導き出した結論だ。

 ゆっくりと立ち上がり、冷徹に決断を下す。

 膝の震えは止まらず、身体の重さも変わらない。

 それでも、瞳に迷いは消えていた。


「俺一人じゃ、足りない。

 ──だからこそ、俺の欠けている部分を補う”助言者”が必要だ」


 自分が不完全な存在であることは理解した。

 情けない人間なのだということも痛感している。


(──自分を諭してくれるような、そんな存在を生成する)


 意志を理解し、感情を解析し、不完全さを力へと変えられる知性。

 これから生成すべきは、物理的な”暴力”ではない。

 知恵を授け、自分を補正してくれる存在だ。

 直接的な戦闘力を持たせないならば、今の枯渇したコストでも、ギリギリ生成できる公算がある。


「俺が生成するのは──」


 悠人は真っ直ぐに虚空を見据えた。

 そこには、確かな未来が見えている。


「最強の”サポーター”だ」



 ◇



 ダンジョンの通路は、唐突に行き止まりを迎えた。


 ボスフロアの入り口に突き当たり、もはや逃げ場はない。

 天野悠人は、荒い息を吐きながらその場に立ち尽くす。

 ここまで刺客を引きつけることには成功したが、それだけだ。


 脚は鉛を詰め込まれたように重く、全てが底をつきかけている。

 この先にあるのは二つに一つ。

 捕らえられるか、あるいは、すべてを賭けた一手が結実するか。


「……ここが、分かれ道か」


 独り言を漏らし、悠人は拳を握り締める。

 辿り着いた結論が、胸の奥で静かに、だが熱く燃えていた。


(──俺に足りないのは、意思と知識を持つ最強のサポーター。

 ……そして何より、それを生成するための”物理コスト”)


 結局、ボスフロアへ至るまで、これといったモンスターに遭遇することはなかった。


 自身の生命力をコストに充てるとしても、それ単体では生成できるものに限界がある。

 ”物理コスト”として、生きた”血と肉”が不可欠だ。

 道中で獲物を得られなかった今、悠人が求めるべき材料は、ボスフロアにしか存在しない。


「……やるしかない」


 扉に手を掛け、悠人は深く息を吸い込んだ。

 残された体力は、もう風前の灯火だ。


(それでもっ──!)


「俺もっ──

 ”本物”になってやるッ!!」


 扉を勢いよく跳ね除け、がむしゃらに駆け出した。


 全身を包み込む熱気と殺意。

 その中央に、このC級ダンジョンの主は鎮座していた。


 赤黒いガマガエルのような異形の姿。

 しかし、体躯ははるかに巨大で、その眼光は飢えた獣のように鋭い。


 それでも、悠人は足を止めなかった。

 むしろ、限界を超えて加速する。


 インストールした零華の動きを、さらに鋭く研ぎ澄ませた形で。

 前のめりに地を蹴り、巨大な標的へと跳んだ。


「っ──

 ぅおおおおおおおおおおおおぉぉっっ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ