プロローグ
俺には友人がいる。
二人いた。
……二人いたんだ。
俺と合わせて三人、昔はよく公園で遊んでいたものだ。
泥だらけになりながら。
その友人のうち一人が、先ほどぐちゃぐちゃになって死んでしまった。
血まみれになっていた。
泥だらけじゃない。
血だ。
(ハァ──ハァ──
くそっ──動けっ……
動けよぉっ……)
目の前には、もう一人の友人がいた。
その友人を襲おうとする複数の怪物たちも。
未知の世界からやってきた、異世界の存在。
もう少しで八つ裂きにされて、その友人も無惨に死ぬだろう。
助けたい。
どうにかしたい。
しかし、脳内に表示されるのは、無数の警告、エラー、失敗のメッセージ。
無気力で怠惰なまま、なんとなく今まで生きてきた。
この時、ようやく俺は理解したんだ。
弱者というのは何なのかを──
・
数年前、世界各地に突如として現れた迷宮――
通称「ダンジョン」。
そこから溢れ出した異形の生命体は、モンスターと呼ばれた。
そんな怪物が蔓延るダンジョンへと足を踏み入れ、未知と対峙する者たちを、人々は次第に「探索者」と呼ぶようになる。
それはやがて単なる呼称を超え、モンスターと戦う全ての人間の総称として定着していった。
時を同じくして、一部の人間が常識では説明のつかない力に目覚め始める。
人智を超えた特殊能力―――
通称、“スキル”。
それは剣技を極限まで高める力であったり、魔法を操る力であったり、あるいは 肉体の修復や強化といった、人類の生存を支える奇跡そのものであった。
この国では、“スキル”を持つ者たちを管理するため、「探索者統制機構」――
通称「機構」と呼ばれる公的機関が設立されている。
探索者資格の発行、能力者の監視、育成、場合によっては”隔離”。
機構は、人知を超えた力を持つ者たちを、徹底的に管理していた。
───いや、正確には管理できていた。
──管理できていたのだ。




