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婚約破棄?それより地盤沈下ですわ 〜「あと3日で沈む」と予言した一級建築士令嬢、重力魔法で王都を丸ごとジャッキアップして救世主になる〜  作者: 星野 藍


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15/15

第15話:王都は沈まず、空に浮く

 朝日が、水平に戻った王都を照らし出していた。

 瓦礫に覆われた昨夜の恐怖は嘘のように、空気は澄み渡り、都市全体が清々しい魔力の残光に包まれている。


 大聖堂の地下から、這うようにして地上へと這い出した私たちの前に広がっていたのは……。

 跪き、祈り、そして歓喜の涙を流す、何万もの民衆の姿だった。


「お、降りてこられたぞ! グラナード家のアリーナ様だ!」

「王都を救った、奇跡の令嬢だ!!」


 割れんばかりの声援。

 泥だらけの私の姿は、もはや蔑みの対象ではなかった。

 

 中央広場へ歩みを進めると、そこには豪華な装束を身に纏いながらも、顔を青ざめさせたアウレリウス王子と、震える国王が立っていた。


「……アリーナ。貴様、一体何をした……。王都の傾斜が止まり、それどころか、地盤の高度が以前より一メートルも上がっているではないか」


 アウレリウス王子が、恐怖と困惑を混ぜたような声で問いかける。

 私は彼を一瞥し、乾いた声で答えた。


「『不同沈下』への対策として、支持層の厚みを増しただけです。……それより、殿下。私が昨夜『パージ』した魔力の圧力、その三割を王宮の維持費に回すように設計図を書き換えておきました。……これからは、手抜き工事一つで、王座が爆発するようになっていますので、ご注意を」


「な……! 貴様、王族を脅すのか!」


「事実を述べているだけです。……構造に嘘はつけませんから」


 その時、国王が。

 震える足取りで私の前に進み出ると、周囲の近衛兵たちの制止を振り切り……その場に、。

 石畳を叩くような勢いで、額を床に擦り付けた。


「……国王陛下!?」


「アリーナ・フォン・グラナード公爵令嬢。……いや、救国の設計主代行。……我々が無能であったがために、この国を、そして優れた叡智を持つ貴女を、断罪という名の愚行に晒してしまった。……許してくれとは言わん。どうか、……どうか、これからもこの国を導いてほしい」


 王の『土下座』。

 それは、この国の歴史上、一度としてなかった光景だった。


 周囲の貴族たちも、そして泥まみれで工事に従事した「元・貴族工兵」たちも、一斉に膝をつく。

 

 私は、その光景を冷めて見つめていた。

 

「……陛下。顔をお上げください。……私は、別に国を導くつもりなどありません。……私はただ、欠陥を直しただけです」


「だが、貴女がいなければ王都は沈んでいた……」


「ええ。……でも、これで終わりではありません。……見てください。地平線の向こうを」


 私は、朝日に輝く遠くの空を指差した。

 そこには、昨夜王都からパージされた魔力の光が、北へと流れていくのが見えた。


「……あちらには、大陸一の穀倉地帯があります。……王都の圧力を抜いた分、今度はあちらの地盤に負荷が溜まるはず。……この世界の設計は、どこまで行っても『不完全』なんです」


 私の言葉に、バレットがニヤリと笑い、ライナスが静かに頷いた。

 

「……アリーナ様。……第2工区の選定ですね」

 ケインが、誇らしげに言った。


「ええ。……次は、あの大陸のひずみを直しにいくわ。……私の図面に、終わりなんてないの」


 私は、ひざまずく王と王太子の横を通り抜け、再びケインと、そして新たな仲間たちと共に歩き出した。

 

 断罪された悪役令嬢。

 世界最高の「リノベーター」としての、彼女の本当の物語は、ここから始まるのだ。


『建築魔法・救世令嬢~断罪の場で「この王都、あと3日で沈みます」と予言した結果~』


 第一部:王都沈没編 【完】

第15話、お読みいただきありがとうございました!

これにて本作の第一部「王都沈没編」、堂々の完結ですわ!


最後までアリーナのリノベーションを見守っていただき、本当に、本当にありがとうございました。王の土下座から始まる、物理的に正しいハッピーエンド、いかがでしたでしょうか。アリーナの旅は、ここからさらに加速し、大陸全体の「欠陥」を修理する旅へと広がっていきますのよ。


第二部でも、皆様を「圧倒的な構造美」と「カタルシス」でおもてなしすることをお約束いたしますわ!


もし「第一部、面白かった! 第二部も待ってる!」と思ってくださった方は、最後に建築確認ブックマークや評価(建設予算の増額)で、工期短縮への協力をお願いいたしますわ。

皆様の熱い支持(魔石)こそが、第二部という名の「巨大建築プロジェクト」を動かす唯一のエネルギーになりますのよ!


また次の現場(お話)で、お会いしましょう。


星野 藍

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