第16話「追え!幻のレア魔獣」 Part6
「……え?」
何があったのか理解できなかった。
正確には目の前で、それも一瞬で魔獣が全て倒されたことを認識している。
ただ、信じられないという気持ちのみが残っている。
「……………………」
目の前にはほんの数秒前までいなかったはずの小柄な少女が、輝く宝石のバスターの少年を颯爽と助けた時とは逆、今はクロウが強大なバスターによって助けられていた。
「んa?」
その人物はたった今クロウに気付き、独特のイントネーションを持った声音で呟いた。
つぶらながらも底の無い洞のような瞳で振り返った少女は魔法使いを思わせる姿だが、サヤやヒャクとも違うフリルやリボンで覆われた可愛らしさ特化の魔法少女。
そして何より、非常に幼い顔付きに見合わない、どちらも本人の頭ほどもありそうな双峰。
トランジスタグラマー、ショートスタック。歪とも蠱惑的とも取れる独特な雰囲気。
「取っちった?アー…↓、すまソ。ンじゃ」
人に言えないような欲望をその身に受けさせられたようなインパクトの強い容姿だが、それが気にならないほどの卓絶した実力と速やかな去り際は、たまに聞いていた“ある話”を思い起こさせる。
が、すぐにそんなことよりという想いが駆け巡った。
「と、取られた……」
懸命なる奮闘の末追い詰めるどころか逃げられてしまった獲物をあっさり仕留められた無常の空気。
この徒労という名の虚無の感覚が気の力を萎えさせ、つい先程まで静かに燃えていた心はすっかり鎮火されてしまう。
そういえばどうしてこんなことをしているんだっけ。ちょっと挑戦してみたかったからか?なんでもいい。ちょっと、疲れた……。
「あー、はぁ、はぁ、やっと追いついたぁ……」
今回の相方がやってくる。
元いた場所から大きく且つ滅茶苦茶な進路で離れたためひどく息を切らしている。
……クロウが後で聞いた話では、彼女はマボーグを所持していなかったという。
「サヤ達……他の3人にも伝えたので、すぐに来るかと思いま」
「いや…取られた。他のバスター」
「そうでしたか」
事も無げなように受け答えはするが、どこかツーンと悄気ている。
それを慰めるヒャクのことが、クロウには天使のように見えたとかそうでもないとか。
「また探しましょ?」
「……うん」
まだ時間はあるにはある。疲労は大きいが、足掻く意志は失われきってはいない。
「うー……」
「テンション低いですね。休んだ方が……」
「もうちょっと、頑張る……」
……作戦三。
とにかく探せ……。
「……えー……」
一堂に会する3チーム全員。その内のクロウの口が重々しく開かれる。
「ボウズです……」
「クロウが?意外ー!」
結局、その後撃破どころか1匹とて見つからぬ残念な結果。
疲れもあってずーんと沈んでしまった。
「まぁウチらも結局見かけることすら無かったし、本当に見つかり辛い魔獣だったんだね」
「私とクロウさんは2回も見つけたけど、異常な速さでダメだったんですよ」
「まぁまぁ、いるとわかっただけ、いいんじゃないの?」
「そういうハナはどうなのさ」
「わ、私!?私かー…」
ナノハはと成果を聞かれ慌てる。どうも芳しくないらしい。
「えー……っとぉ……ハイ、ボウズです」
「手強いねー」
手分けの捜索も、罠の敷設も。全て一切の成果を残せず、幻は幻のままで終わってしまったのだ。
「でも魔獣ってすぐ増えるし、また明日になったらひょっこり出て来るかも?」
「そうだね、じゃあまた頑張ろう!」
「僕は……もういいかな……」
サヤとルインのやる気は萎えない。しかし力んで挑み続けてしまったクロウにとってはもう、こりごりだった。
「……本当に、どこいっちゃったのかなぁ」
夕の翳り焼けた空も落ち着く頃。帰り際に漏れたナノハの呟きに誰も気づかぬまま、一同は解散するのであった。
「おぉ…ヤベぇな……」
「こんなに…どうやって……」
「……?」
帰り道、組合の前を通るクロウは騒がしさが気になり中へと顔を出す。
「何かあった?」
「あ、お前は……見てみろよこれ」
バスターの一人に何事か尋ねれば、まず見よと促される。
「見てみろって……」
それに従い目に入れたものは、ロビーに置かれたテーブルの内の一つにして赤い宝石の山。
欠けているものもあるが、どれも美しく妖しい輝きにて夕陽の続きを演じているようだ。
この広く高い円錐を形作る量その管理のために、職員は多くの木箱を持ち出して焦りながらも丁寧に収め続けている。
「凄い量…… えっ!?」
「気付いたか……気付くよな……」
「ずっと思い浮かべていたモンだ、嫌でも理解しちまうぜ」
間違いない。トパーゾンの持つ宝石だ。ずっとその目に捉えようとし続けた、赤い石。
あれだけ異常な速さを持ち、攻撃も効きづらい難敵を、本当にこれだけの個体数が大陸にいたのかと疑問に思うほどの量、倒してきたのか。
「で、でも、大変革前にものすっごいやりこんでて、それを出したとかそういう……」
「索敵班から連絡です!!トパーゾンの全滅が確認されました!!」
「!!?!??!?!?」
もう疑念すら飛んでいき、何か途轍もないことが起こっているという感覚を肌が捉える。
創作物でなくなった世界で事実こそが奇なりと叩き込まれる時間。
その“奇”とは何かを、尋ねる。
「それが……私も驚いたんですよ。あれは間違いなく『めんたい娘』さんでした」
「“幻のバスター”ですよ!噂の!」
業務の一息ついたクリケと、付近にいた彼女の同僚が答えた。
「突然、『ホイ。依頼ー』ってやってきて」
「うんうん、それであんっ…なにたくさん持って来て」
「小さな子供みたいだったのに、流石トッププレイヤーのPCって思いました」
「リスみたいでかわいかったな~~おっぱいだけかわいくないけど!」
「はしたないですよ、そんなこと言って」
間違いない、さっき現れたバスターだ。
また明日と言わずもう二度と、かの魔獣に遭遇することは無いだろう。
魔獣が1種でもいなくなるのは喜ぶべきことだ。でも、それでもやっぱり……
「はぁぁ」
「あ、クロウさん?クロウさん!?」
「また一人……打ちのめされちゃったね」
バターンとずっこけて、このひと騒動は幕を閉じた。
ミッションリザルト!!
残りHP、いっぱい
残り時間、0
撃破数、0!!
作戦失敗!!
評価、おととい来やがれぃ!!
~第16話「追え!幻のレア魔獣」~
――――――――
クロウエア:「……いない」
クロウは、焦り始めている。
クロウエア:「いないッ!」
クロウエア:「いない」
クロウエア:「ここ…えっ!?」
処理部隊:あ、どうもお世話になってます……
明太子:e?あー……ヒマしょ?
ゆうしゃ:ほーれ、芋焼き上が……わっマズい!!お前ら解散だ!
クロウエア:え、ええ……?
――――――――
クロウは上の下ぐらい
めんたい娘は上の上、最強格
そりゃあどこにだって極めようとするのはいるからね、それで頂点へ達したうちのセレマの1人がトンデモビジュで妄想してるこのお方
しかしサイトの仕様上半角カナ使えないからその異質さを表現しきれない・・・幻の彼女の出番はきっとかなり少ないと思うけど、うーむ。