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第15話「黄金のかたち」 Part1

 作品とは、作者が自分で体験した事でしか作れない……そんな俗説がある。

 ならばこの都はそれこそ、クロスマギア制作スタッフの慣れ親しんだ文化の発露と言えるだろう。


 赤く灯る貼り紙のランプ、白黒のコントラストに瓦屋根の乗った塀で囲まれる立派な屋敷、各店舗に掲げられる漢字や印によって作られた力強い看板。遠くには角ばった構造が幾重にも重なり天へ向かう巨大な“城”まで見える。そして、街を行き交う人々は頭上で一束に纏めた髪型が大半と来た。


 そう。ここは日本の、主に江戸時代を元に造られた都市シパンガ……


「相変わらずここのネオンはどぎつい」

「あ、お昼テンプラにしよっ」

「あそこで何かやってるな…あぁ、ちり紙か」

「すごいシャッターの音するー。上の方だね」


 ただし和風は和風でも“何かが違う”和風である。


 伝統建築は都市庁へ近づくにつれ機械感を増し、ぽつぽつと角柱の構造物が増えていく。

 また至る所には蛍光色の管で書かれた日本語の看板が掲げられ、内容は「スキヤキ」であったり「テンプラ」であったり「スシ」であったり。

 その様は深夜の繁華街を連想させ、異世界ものにおける中世モチーフ都市であったセレマや緑豊かな医療都市フシュケイディアとは全く違う趣向をふんだんに取り入れている。

 人々の服装は元となった時代に準じてか和装が多い。しかし中にはどう見ても背広の営業マンといった風貌の人々が紛れ込んでおり、せかせかと移動しては手を擦り胡麻を()っている。


 作品とは、作者が自分で体験した事でしか作れない……もしクロスマギア制作陣が日本人であるのならば、その俗説はより怪しいものとなるだろう。

 このような“想像力溢れる”世界を体験することなど、多くの場合まず無いのだから。



「ねぇねぇ、この辺りで他の都市にこん……っな大っきな機械を、売りに出してる人っていないかなぁ?例えば…」

「おいおいここはヒガケイ市じゃねぇぜ?そういうの欲しけりゃもっと真ン中行ってな」

「ヒガケイ…都市庁のある所だったね」


 フシュケイディアに続きこのシパンガを訪れたクロウとナノハが今歩いている場所は、地下に築かれている多少荒れた集合。

 地上よりも粗く簡素な屋台が並ぶ、どこか階層社会の下層を彷彿とさせる治安に不安のある薄暗いアーケード。


 現在時刻は午前の10時と言ったところだがこの通りは地下だけあって天井があり、そのため明かりの設置が必須の暗さがある。

 ネオンと提灯、時々豆電球の光が妖しい空気を増長させる中で、二人は手がかりを探していた。


「電気、か……セレマにもあったら便利だろうに」

「魔法っぽいけど、違うんだよね」


 しばしば、彼女らはセレマに無い物品に興味を示す。

 余りに外界と乖離し過ぎたこの都市は、その外界からの客人の脚を(にぶ)らせるに余りある魅力を末端にすら多分と含んでいる。

 特に客人の多くが見慣れないという電気なる存在は、未知なるエポック・エレメントとして異邦人を沸き立たせ、羨望の想いまで抱かせた。


「王様が何とか輸入してくれないかな、暖炉やローソクより絶対いいよ」

「スキルのおかげで家のこと楽にできるって言ってたバスターもいたなぁ」

「あーその手があったか!」

「そういうの止めろって注意されてたけど」

「うわー生真面目ー」


 バスターが戦闘以外でスキルの類を使用することはやめるよう、セレマの組合内ではお触れが出ている。

 こっそりと使う者もいるが、必要な時以外はどんな理由であろうとも自粛するように厳しく伝えられている。

 それぐらいいいじゃないかとよく批判されている問題でもあり、利便性をむしろ下げられていると感じるほどだと言う。


「波風立たないようにしてるんだろうけど、ちょっと…ね」

「ますます王様に頑張って電気持って来てもらわないと!」

「しかし、王様か……」


 天を塞ぐ地により見ることの叶わぬ巨大な城へ、ひとつ呟いた。


(考えたこと、無かったなぁ)



 正確には、フシュケイディアにて非人道の極みを実現していた男のことを知っている。そんな極端な例を除いて真面目に考えた時、政治のことなんて気にしていなかったんだなと自覚をした。


 大変革という一大事を超えた世界は新たな運営体制を布いていかねばならないだろう。ならその男も、確かに人々を新たな世界へ適合させようとした一例だったのかもしれない。


 するとふと想うのが自都市セレマの内部事情である。

 時折ペイガニーが様子を零すが、順調に取り決めが行われていると分かる内容ではあったためそこまで気には留めていなかった。


 人は、特別なことが起こらなければ無関心なものである。

 バスターは異常事態を捌く職業ではあるがだからこそむしろ、特にペイガニーから“有事の際制御の効く強力な駒”であると、かつてそのようなことを告げられたクロウにとっては強く作用しているかもしれない。

 「自分が必要な状況でないのならばいいか」、と。


(帰ったら、電気を導入するよう……誰かに言ってみるかな)


 このまま自分が何も考えていないとまで感じるのも癪なので、少しだけ、動いてみることにした。

ようやくできた……


なおパロディ回みたいなもんの模様

そういや何で皆日本編入れたがるんだろうと思いながら描いたシパンガはカオスじゃ

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