第15話「黄金のかたち」 Part2
「しかし、あの機械がアルキテクじゃなくてシパンガのものだったなんて」
クロウは今回の行動へ至る理由を思い返した。
シパンガをアテも無くぶらぶらしていた二人だが、目的が無いわけではない。
「シパンガは技術だけならアルキテクに匹敵するらしいね」
「他の3都市の立つ瀬が無いなぁ」
間違った日本の認識を題材にしているというシパンガだがその実、うつけた印象のみで固められているわけではない。
その一つが小型・高性能化に長けているというイメージであり、例えば別の場所で入手したアイテムをシパンガの施設やアイテムを利用することで高位の物へ改良できるシステムがあった。
機械技術の発達した都市アルキテクで生産されたものを解析・改良というのは、この大陸においてはシパンガならではの現象なのである。
「その代わりスキルは他の都市の方が使いやすくて真っ当に強いから、そこでバランスね」
「ああ、ピーキーらしいね。バランスなのかはともかく」
ただスキルの類はそうとは言い難く、派手な割に実用性が低かったり奇妙な“印”を結ぶ必要があったりと、これらに関しては他の都市に後れを取っているという。
「それで…行くの?子牛屋」
「コウシロ屋。行くしかないでしょ」
コウシロ屋。フシュケイディアにてアーク・ミンツが使っていた巨大なコンピュータには、微かにシパンガとの繋がりを示す糸が張られていた。
アークの起こした事件の調査を行っていた“組合”を始めとした様々な組織、その一部が操作を試みた中で画面に表示された文字列の一つが、この屋号である。
「あのミンツっていうのの協力者を特定してって、そんなの私達の仕事じゃないよぉ。というかフシュケイディアの人がやればいいのに」
「“繋がってると思われたくないから”かな。今は都市同士仲はいいらしいけど、それでもフシュケイディアは最悪な始まり方をしてしまったから」
「そういうもんなのー?」
「さぁ」
結局のところ大変革を通し改めて結束してはいる5都市だが、違う集まりの人々がそれぞれを統治する以上いつどこから瓦解していくかは分からない。
各都市は表面上こそ融和的には見えると人々は印象を持っている。しかしこの世界には“前段階”がある。
かつての彼らは魔獣の出現のため手を組むことを決定した。それが設定だ。
では、その前はどうであったか。
魔獣の出現が団結の理由ならば「そうでもならなければ手を組まなかった」という心中も見えてくる。
その“設定”のせいで人は外面と内面に分けて捉えようとする。薄氷であると。腹の底に何かがあると。
「フシュケイディアといえばさ」
「んー?」
「……祀り上げられてるらしーじゃん?ク・ロ・ウ・さ・ま」
そしてもう一つ、白羽の矢が立った理由の心当たりを当人らは持っている。
フシュケイディア解放の直接の要因はクロウであり、それを大々的に公表されたこと。
偶像。信頼。責任。何れにせよ、茶化すナノハにクロウは少々ムッとするのであった。
「また置いて行こっかな」
「もー、ハクジョーもーん!」
二人は地下を出て地上へ。夜のように暗かった地下街から真昼の青空へのギャップで目が眩む。
周りはまさしく時代劇の村、古い日本の建築様式が道を作るセレマと全く違った風景。
同じ陸の上にあるはずの他都市と一切の文化的繋がりを感じさせない奇妙な景色は、かつての世界で何度か訪れた経験や記憶があるはずの彼女らを今再び困惑させる。
「さて、どうしようか」
「マップの通りに歩けば着くとは思うよ」
「まぁそうだよね……っと」
さてとと歩み始めた途端、クロウに背広のスーツを着た男がぶつかりかける。
クロウに備わった鋭敏な勘が、衝突事故を回避する。
「……気を付けろっ」
「え、あ…」
男は急いでいる割に、小さな文句を忘れずに吐き捨てた。
「……ナニよ!あっちからぶつかってきたのに!」
「あの人、スーツにコウシロ屋って書いてた」
「え?」
「行こう」
「え?あ、待って!」
先ほど見かけた別人とほとんど同じ姿で、気を抜くと見失いそうなその人物は、件の屋号を背負っていた。
目的の地に関わりのある者とくれば、気にかかるのが当然といえば当然である。
追跡の先に見つけた建物は、看板に大きく“よろずや目耳所”と書かれている。
これまで二人が見たシパンガの施設に比べて非常に立派で、万事屋の自称通りなんでも揃いそうなほどの規模がある。
注目の人物はそんな高い壁へと愚直に歩んでいく。
怪しい雰囲気の彼を、二人は何をするかと目を付け続ける。……が、両人共々対人隠密任務となると途端に素人となるようで、目標以外からは不審者を見る目で見られていた。
分割想定で作ってるわけではないからいい感じの切り方探すとたまに極端になっちゃう




