二十本目:将軍の丸ごと桃のコロコロ作戦
「……きゅ……、きゅう、きゅう!!」
ズルイ! ズルイ! ズルイ! ズルイです、斯季様!
「きゅ――――――――――!!!」
い、今すぐ、その桃をこちらに転がしてくださ―――い!!!
甲高く鳴いて、小さく飛び跳ねてその場でコロコロ転がって主張をしたら、斯季様は今度は広めな布を"ぱぁ!"と広げると、私と対角線上の端に桃を置いた。
な、何? 何で布? そして、桃をそんな位置に置くの?
私が今度は「むーむー」と悩み鳴きし始めると、斯季様は桃をコロリと一回転させた。
自然と桃に意識が引き寄せられる……。……コロリ……。
「……珠々殿、では……桃をそちらに転がすので、どうぞ」
「!!!?」
え!? 通じたの!?
ちょっと驚いていると、斯季様は本当に私に向かって桃を転がしてきた。
―ころころころ……ピタ!
「では、どうぞ」
「きゅう~!」
そして、大分私に近い位置で桃が止まった。
これは齧り付くチャンス!?
も、もも、桃ぉ!!
―くん! ……ころ……
もももももも桃っ!
―くん! ……ころころ……
桃、もも、モモ、蜜桃ッ!!!
―くんくん! ……ころころ……ころ……ころ………………かぷ!!!
「……んきゅぅ!!」
ヤッタ! 桃にかぶりつけた!! このまま、とりこんじゃえっ!!!
「ん、ごきゅ……ンんん!??」
桃に……紐!? ……紐!!?
「んきゃう!!?」
―ぷら~~ん……
「……飲むまで気が付かなかったのか、珠々殿……」
むぅ……。
ぷらぷら……ぷらぷら……。
「きゅあッ!」
「あ!?」
フンだ! 斯季様のイジワル!! 毛玉だって怒りますからね!?
私は叫び声と同時に紐を吐き出してその場に着地した。
そして毛を逆立てて身体の体積を増やして、威嚇の"怒ってる"ポーズ!
「そう怒らない欲しい。ふむ? ……珠々殿はこの距離までなら、大丈夫……なのだな?」
「きゅ……?」
そんな斯季様の声に視線を向ければ、案外近くに来てた……。
「きゅ……ぁあああああああ―――!?」
「わ!?」
そして私はここ一番の声を張り上げて飛び退いた。
しかし、ここで新たな声が……
「ははは……珠々はこんな所に居たのか」
「陛下!」
あ。燕さまの父上様。
「きゅ? きゅ?」
一人で散歩ですか? 良いんですか!?
陛下とはまだ距離があるから、私はまだ平常心でいられる。
私の問い掛けに陛下は……まぁ、当然、答えない。無理だもんね。
その代わりに陛下は私に言葉を掛け始めたの。
「こっそり珠々を探していたのだが……」
「きゅ?」
陛下の言葉に斯季様は下がろうとしたのだけど、陛下が「居ても構わない」と止めた。
でも、私に……何かな?
目上げる形で待っている私に、陛下は一旦瞳を閉じて、開いた時は真剣な目で私を見た。
そして……
「―……ところで珠々、一年後の燕の成人の儀の時に現れる瑞獣は是非、"竜"をお願いしたい」
「きゅ?」
それって、選べるの?
…………ところで、""瑞獣 って…………何?




