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我が家に悪魔がやってきた! いちがっき!  作者: 小麦
アリーとサラ 樹が知る悪魔見習いの真実
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計画実行当日

 そしていよいよ当日がやってきた。

「本当にこれでいいんだろうな?」

 俺、町村樹は不安そうに居候の高梨沙良を見る。

「任せてください。バッチリですよ」

 沙良は自信満々に言う。彼女がここまで言い切るからにはきっと相当な自信があるのだろう。

「お前も分かってると思うが、この計画はそもそもアリーの契約者である吉永麻梨乃に俺が気に入られないといけないんだからな」

「分かってますって。とびっきりのイケメンになってますから。鏡を見てください」

「……これイケメンなのか? どっちかっていうとチャラいって方がしっくりくるんだが」

 俺は沙良から差し出された鏡を見て渋い顔をする。腕にシルバーアクセサリーを身につけ、髪の毛はワックスのようなもので立たせている。髪の色こそ黒のまま変えていないものの、香水のようなものまで身につけていることを考えると、沙良が気合を入れて俺を変身させたことは分かった。だが、彼女の変身能力をフルに使用した俺はどこからどう見てもチャラ男にしか見えない。確かに見方を変えればそこらにいてもおかしくはないイケメンに見えないこともないが、こんなのが本当にアリーの契約者の好みなのだろうか。

「そうですね。でも、よく考えてもみてください。アリーの願いを叶える能力のせいでわがままになってしまったような方ですよ? こういう人に憧れている可能性は十分に考えられると思いますけど」

「……言われてみると否定できる要素がどこにもねーな」

「でしょう。たぶんだからこれでいいと思います」

 沙良はそう自信満々に俺の背中を押す。

「それじゃ、行きましょうか。アリーが待ってます」

「そうだな。行くとするか」

 俺も結局この格好で行くことに決め、家を出ることにした。



一方、都内のマンションの一室では。

「今日私見たいテレビがあるんだけど」

 アリー・サンタモニカの契約者である吉永麻梨乃がそう不満そうな顔をしていた。今はこの近所で連続発生している謎の高校生連続失踪事件についてのニュースが読まれているが、これが終わると彼女が毎週楽しみにしているバラエティ番組が始まるのだ。特に今回はここ1か月で急に若者からの人気を得たアーティストが出るとあって、相当嫌そうな顔をしてた。

「……麻梨乃に会ってほしい人がいる」

「はぁ?」

「名前は町村樹。こないだ潮干狩りの時に私が知り合った」

 アリーはそんなことを言う。実際潮干狩りの時に知り合ったので彼女の言い分はあながち間違いでもない。

「あんたが男と知り合ったの? 私を差し置いて?」

 麻梨乃はアリーを睨む。

「結構かっこいい人だった。でも、私の好みじゃない。だから、麻梨乃のことを紹介した。そしたら興味を持ってくれたみたいで、来週会わないかって」

 アリーはそんな風に取り繕う。本当は可愛いという印象で好みじゃないというのも本音ではないのだが、ここは麻梨乃を抑えるために取り繕うしかなかった。

「ふーん。まあ、こないだ寄ってきた男たちは全員あたしの好みには合わなかったから別にいいけど」

 麻梨乃は録画の準備をしながらそんな返答をする。

「それじゃ、準備するからこっち向いて」

「外に出ても恥ずかしくないようにきちんと着飾りなさいよね」

「分かってる」

 アリーは麻梨乃の頬を撫でる。すると、麻梨乃の恰好は今時の高校生よりも少しだけ大人っぽいコーディネートに変わっていた。

「……まあいいわ。これならそれなりにいろんな男落とせるでしょ」

 麻梨乃は手に持ったハンドバッグを肩にかけ直す。

「じゃ、案内しなさいよ」

「分かった」

 アリーは頷く。

(作戦成功。麻梨乃を外には連れ出せた。あとはあなたにかかってる。頑張って)

 そしてポケットに入れておいたリモコンから樹にこっそりと連絡する。そしてその連絡をした後、彼女はこんなことを考える。

(麻梨乃の方はサラの契約者に任せるとしても、私も二人のことはうまく調べないといけない。もし何も知らないようなら、その時は私の口から……)



「どうやら連れ出すことには成功したみたいだな」

 俺は携帯を見て頷く。アリーからメールが来たのだ。

「では、私は少し遠くから隠れて見てますから。ピンチになったら呼んでくれればある程度の対応はしますので、いつでも呼んでください」

「おう。今回はお前の協力が不可欠だしよろしく頼むぜ」

「任せてください!」

 沙良は胸を張る。この感じだとどうやら大丈夫そうだ。

「それでは」

 彼女は自らの能力で姿を消す。これでもう沙良を頼るには携帯を使う以外に方法がなくなった訳だが……。

(しかし落ち着かねーなこの格好)

 俺は改めて自分の格好を確認する。普段の俺は間違ってもこんな格好をすることはない。私服と言い張るにも少し無理があるし、アクセサリーに至ってはそもそも持ってすらいなかった。このシルバーは沙良に頼んで作り出してもらったものだ。

(この格好で本当にいいんだろうか)

「……町村樹、で合ってる?」

 俺がそんなことを考えていると、後ろから肩を叩かれた。振り向くと、肩を叩いてきた人物である見知ったショートヘアが俺の頬に人差し指を当ててきた。待ち合わせをしていたアリー・サンタモニカだった。

「合ってるけどそのいきなり出てくるのは何とかならないのかよ」

「ごめん。ちょっと一瞬誰かと思って」

「どういう意味だよ」

 とはいえ、アリーの言うことは間違いではない。間違いなく俺は普段とは違う格好をしているのだから。

「で、連れて来た。この子が吉永麻梨乃。あなたの通ってるところとは反対方向にある透翠高校とうすいこうこうに通ってる高校生」

「こ、こんにちは。よ、吉永麻梨乃、です」

「よろしく。町村樹です」

 俺は普段なら絶対しないような笑顔で彼女に微笑む。どうやら相手も緊張しているらしく、体がガチガチに固まっている。見たところセミロングの黒髪に茶色の髪留め、膝下までのロングスカートといった格好で、普通のかわいい女の子に見えた。

「それじゃ、二人で楽しんで。私はその辺りをふらふらと……」

 だが、そう言って消えようとしたアリーの服を掴む手があった。

「……麻梨乃?」

 その手の正体は顔を真っ赤にした吉永麻梨乃だった。

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