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悪魔見習いの秘密

「こんにちはー」

「あ、いらっしゃい樹君。それと沙良さんも」

 こないだの初顔合わせから少し経ったある日、俺は桜に誘われて沙良と共に桜の家に来ていた。

「久しぶりって感じはしないけどな」

「まあ私たちは毎日学校で顔合わせてるからね。とりあえず二階の私の部屋に上がって待ってて。今お茶菓子とか持ってくるから」

「おう、それじゃ、お邪魔しまーす」

 俺は沙良を連れて玄関へ上がる。その直後だった。

「おーサラっち久しぶりだな!」

 ケンが声をかけてくる。

「こら、あんたは中に戻って準備するの」

「ちぇっ、分かったよ。んじゃサラっちまた後でなー」

 桜にそうたしなめられ、ケンはすぐに台所に引っ込んでいった。

「俺たちも行くか」

「そうですね」

 俺と沙良はそのまま二階へと上がることにした。



「それで、今日はいったい何で俺と沙良を?」

 しばらくして桜とケンがお茶菓子を持ってくると、俺はそう聞く。

「えっと、実は魔界のことについて少し聞いておこうかと思って。ほら、こういうことなんて多分もう一生起こらないだろうから」

 どうやら桜は以前から魔界について少し興味があったらしい。ケンと沙良という2人の悪魔と知り合った今、魔界のことを聞くなら絶好の機会だと思ったのだろう。

「そうだな、俺も少し気にはなるな。せっかくだから今日は二人にいろいろ教えてもらうか」

 俺も頷く。確かに彼女たちのことを知っておけばこの先何かの役に立つ可能性はあるだろう。今まで俺は彼女たちを悪魔にしないことばかりに気を取られていて、彼女たちについて何かを知ろうとはしていなかった。今日はそういう意味でもいい機会なのかもしれない。

「なるほど。そういうことなら私に任せてください!」

 沙良は胸を張る。

「俺も協力するぜ!」

 ケンも負けじと反応した。

「で、何から話しましょうか」

「そうだなあ……」

 俺は考える。いざ質問を、と言われると何を質問すればいいのか反応に困ってしまう。

「あの、7つの大罪ってあるでしょ。あれって沙良さんとかケンのところにもあるの?」

 俺とは違い早速質問する桜。どうやら興味があったのは本当らしい。

「ああ、そう言えばその辺のことは樹さんにも説明していませんでしたね。ではそこから説明しますか」

 彼女はシラベールを取り出すと、ある画面を起動した。そこには、『暴食の悪魔見習い サラ・ファルホーク』の文字があった。どうやらこのシラベールは個人情報が元々入力されている支給品のようだ。

「私たちの住んでいる魔界では7つの大罪が悪魔見習い候補をそれぞれの学校に入学させて、そこから未来の大罪候補を選考するんです」

「ちなみに俺はこれ、怠惰の悪魔見習いだぜ」

 ケンもシラベールの同じ画面を起動させる。そこにはやはり『怠惰の悪魔見習い ケン・ゾークラス』の文字があった。

「で、その7つの大罪は数百年に1度、世代交代を行うんです。その世代交代がたまたま今回樹さんや桜さんが生きていた時代だったと、まあこういう訳なんですよ」

「つまり、お前たちは下手したら数百年学校に通い続けることになってたのか?」

 俺は聞く。勉強があまり好きではないなら、それは地獄のような環境だろう。

「いいえ、そういうわけではないです。世代交代が行われないうちに学校を卒業してしまうことになった悪魔見習いは悪魔として普通に働くか、あるいは優秀と認められた場合にそれぞれの大罪の元で仕事をすることになっています。そういう優秀な悪魔は重要な場で大罪が都合のつかない時にその代わりを務めることくらいはあるみたいですね」

「へー……」

 俺はただただ感心する。沙良も優秀な中の一人だとは聞いていたが、いざ自分たちの住む世界をここまで丁寧に解説できるところを見るとやはりそれなりに優秀なのだろう。

「あれ、でも私たちが知ってる大罪って確かルシファーとかそんな名前がついてたような気がするけど、沙良さんとかケンの名前って……」

 桜は不思議そうに2人を見る。

「普通、だよな?」

 俺も交互に2人を見る。

「それは、その名称があくまで概念的なものであるからですかね。今の暴食の悪魔であるベルゼブブ様にもきちんとした名前があったらしいですよ。もっとも私たちにはその名前を知ることなど不可能なんですけど」

「俺たちがもし7つの大罪の名称を継ぐことになった場合、それまで使ってたこの名前からそれぞれの大罪の名前にされるんだ。人間界で言う襲名みたいなもんだな。それで、職務を全うした後に元の名前に戻すらしい。もっとも、その悪魔の名前を知ってるやつならそのまま元の名前で呼び続けるらしいけどな」

 ケンも沙良の後を引き継いで説明する。

「あれ、でもお前らのところからは4人が悪魔見習いとしてこっちに来てるんだったよな? 7つの大罪を引き継ぐならあと3人はどうなってるんだ?」

 俺はそう言う。これでは数が合わないことに気付いたのだ。

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