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桜花舞う(400文字の詩)
その少年は何が嬉しいのか 桜並木を見上げ笑い転げていた
陽に透ける茶を帯びた前髪が うるさそうに瞳にかかるのを厭わないのは
眼鏡が髪先を受け止めるからだろう
制服の真新しさが 新入生だと知らせているのだけれど
あまりにも景色に馴染んでいるものだから 錯覚してしまうのだ
自分は彼をずっと以前から知っていたのではないだろうかと
多数の星が交差する世界で また新星を見つけたような
不思議な高揚感が満ちてくる
去年の自分 一昨年の自分が
少年の洩らす笑い声に重なって 張りつめていた糸がぷつりと切れた
桜が舞う小道は未来へのレール
手にした学生鞄の中は希望と喜びへの期待
今はそれだけで十分じゃないかと納得してしまうのだ
いずれ彼にも苦難は訪れるだろう
その時に――桜が舞う今を思い出し 向き合えればいいなと思う
一度灯った希望の灯は 燻ぶりながら胸のどこかに残るはずなのだから
少年とすれ違った時
一瞬だけ失ったはずの刻を取り戻した気がした
桜花舞う朝の道
少し時期早すぎますが、雪が桜に見えた今朝でした。