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プロローグ

 見あげれば、巨大な浮島や東京スカイツリー並に高い塔が目に付く真っ青な空。

 赤い色調のファンタジックな街並みを行き交う、異種混合な人々。

 見慣れた景色。見慣れた人々。


 でも「現実」には存在しないハズの、場所。



「当たり前だけど、BGMがないな」

「周囲の音声半減しないと、こんなに煩かったんだねぇ」


 現実逃避気味につぶやく二人の少年は、ただ呆然と立ち尽くしていた。


 二人は双子だ。

 姿形はそっくりだが髪の色が黒と茶と違うため、印象がずいぶんと異なる。

 二卵性のためか、似ているようで似ていない、そんな双子だ。


 黒髪で気が強そうな方が弟で、名は「緒方おがた 昭雄あきお

 茶髪でのんびりとした方が兄で、名は「緒方おがた 治雄はるお


 当年とって共に36才、地球上の日本生まれの日本育ちで、海外はおろか本土を出たことすらない。

 自営業を営む立派な成人男子だった二人は今、見慣れた、けれど知らない場所にいた。


 街の中央に位置する、冒険者ギルド前広場。

 そこは『ゲーム』における「魔法王国リンドバウム」スタート地点であり、最初のログイン時の出現ポイント。

 魔法を主体としたプレイヤーにはお馴染みの場所だ。

 本来なら、多くのプレイヤー達が行きかい、新規ユーザーの半透明な姿がひっきりなしに浮かんでいてもおかしくないのだが、今はごく普通の街並みだ。


 と言うより、普通すぎた。


 つまり、派手な装備のプレイヤーの姿は一切なく、頭上にNPCのマーキングがある人物もいない。 

 運営からのお知らせを流す浮遊掲示板も、ギルドの新人勧誘チラシも見当たらない。

 メンテナンス時には見えるはずの可視表示ウィンドウもない。

 リアルとしかおもえない街の風景がそこにあった。


 

「ハル、縮んでるぞ」

「アキもだよ。んー、中学生の時くらい?」


 二人はお互いの変わり様に、ようやく目を向けた。

 36才時には190センチ近くあった身長が、今は30センチ近くも下がっている。見慣れた景色であってもその圧迫感はかなり違う。


「……なるほど、ゲーム開始最低年齢は13だ。かんべんしてくれ……」

「うわぁ、そうきたかぁ。身体的アドバンテージもダメとは、徹底してるね。この調子だとステータス画面すごいことになってるかも」

「見たくねぇ。オール1とか、マジで見たくねぇ」


 ふぅ、と子供らしくない重い溜息をつく二人。



 当然のことながら、二人は来たくて来たワケではなく、望んでもいなかった。

 ちょっとばかり異世界トリップ、というものに憧れていたのは遥か昔のことで。

 まして、二人はこの世界を同じくするとおもわれる『ゲーム』のプレイヤーですらなかった。

 もちろん運営側でもない。



 二人はVRMMORPG『アルタートゥームの幻想竜』の下請けプログラマーだったのだ。




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