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「・・・・・・あれ? ここ、どこ?」


「おや! 目が覚めましたか? 良かったです! どこかお加減が悪いところはありませんか?」


「へぁっ!?・・・・・・あ、えっとその、大丈夫だと思います」


「良かったです!」



ムフーと喜ばしげな顔を近付けてくるいろはに、女子生徒は困惑の表情を必死に抑え込みながら返事をしています。

どう見ても子どもにしか見えないが、感じられる妖気からして恐らく妖怪であることは間違いないだろう、と女子生徒は当たりをつけました。

世の中いい(ヒト)たちばかりではない、というのが女子生徒の持論ですので、たとえ幼子の姿をしていようとどんな手腕を用いてくるか分からない以上は油断できないと結論付けます。



「あっ、申し訳ありません。私、白雪いろはといいます。この白雪邸の管理人を務めていますので、決して怪しいものではございません。ちなみに種族は座敷わらしのチョウピラコです」


「え!? あ、ご丁寧にありがとうございます。私は猫又(ねこまた) (ゆい)っていいます。気持ちいい布団ありがとうございました───って、白雪邸? それって白い雪って書くやつです?」


「はい、それで合ってますよ。えへへ、まさか六花さんが連れてきたのが入居者の唯さんだったなんて、なんだか運命を感じて嫉妬しちゃいますね」



ここで、唯は気付きました。

伊達に恋愛に敏感な思春期を過ごしているわけではありません。

そうでなくとも自分の女としての直感が、「あ、これ踏み込んだらヤバいやつだ」と警鐘を鳴らしているのがはっきりと分かるのです。



「私の種族は猫又の猫魈(ねこしょう)なんです。ほら、ちゃんと尻尾も三本あるんですよ?」



ここで彼女が選んだ選択はスルー!

華麗に話題をすり替えることにより今の話を強制終了させるという実にシンプルかつ浅い考えでした。


とはいえ、それは仕方ないとも言えるでしょう。

まだ中学校に入学間近なくらいにしか生きていないのですから、よほどの修羅場に生きてこない限りいろはの地雷を初見で回避するのはとても不可能です。



「・・・・・・本当ですね! 実は私、猫が好きでして。初対面で恐れ多いのですが、少し触らせてもらってもいいですか?」


「是非! 毛繕いもケアも毎日やってるので自慢の触り心地ですよ!」



少しだけ不穏な気配があったものの、どうやら無事に地雷の処理を終えたようです。

流石は猫又。

やはり猫とは犬にも負けずウサギにも劣らない可愛さで人類をメロメロにする魔性の動物だと証明されました。

これにはかの絶壁スですら逆らえないでしょう。



「オメェまだ懲りてねぇのか。その性根どうなってんだ」



琵琶湖よりも美しく富士山のように雄々しく鎮座する『不動』の称号は、この性根にこそ相応しいとよく言われます。



「イカれてんのか? そういやイカれてたわ。オレ以外に聞こえねぇからって好き放題やりやがってこのバカ殿めが」


「・・・・・・あの、扉の向こうにいる人は誰と話してるんですな?」


「ふふ、あれはですね?『お天道様』とお話しているらしいですよ?」


「はあ? お天道様って、あの? え?」



虚空に向かって一人話し続ける六花を見て、障子越しに変な人だなと感じた唯。

いろはの話を聞いてから再び障子を見やった彼女の視線には、心做しか憐憫の色が浮かんでいるようにも見えます。


悲しいことですが、この声は六花にしか届かない(・・・・・・・・・)ため、傍から見ると一人で話している可哀想な人になってしまいます。

それでも一応、ワイヤレスイヤホンを耳に装着するという小技をすることで電話をしている人にも見えなくはないのですが、それが対面での会話でも外されることがないのですから、結局は変な人になってしまいました。


そんなことは頭の片隅に雑に放置している六花が動じることはなく、いろはに声をかけて入室許可を伺います。

先程までの掛け合いで唯が目覚めたことは既に把握済みですので、その確認のためにやってきました。



「私は大丈夫ですよ。唯さんも大丈夫ですか?」


「は、はい。大丈夫です!」



無事に許可がおりました。

そうして障子が開けられ、陽の光に照らされた六花を見た唯の最初のリアクションといえば、邪眼のメデューサとうっかり目を合わせてしまった者の成れの果てのようにピシリと固まってしまうというものでした。

それは彼女の持つあまりもの美しさによるものか。

あるいは、長身クール系美少女である例に漏れずその凸のない胸部を見てショックを受けてしまったのやもしれません。


一気に罪悪感が込み上げてきた六花は、なんとかあの時のことを弁明しようとシドロモドロになってしまいます。

何しろ睨みつけた対象が別次元にいるため、この次元しか認識できない唯では自分が睨まれたと感じるのも仕方ありません。



「・・・・・・も、もしかして、今言ってた『お天道様』ってヒトですか? 『お天道様』ってアレですよね? いつもどこからでも私たちのことを見ていて、悪いことをすればいつか罰を与えてくるっていうあの」



そう!

我こそは日本、いや世界のすべてを見下し盗み聞きし放題のお天道様なのです!

画面の向こう側の君たちも、悪いことをすればいつでも吾輩が見ているので、一番イヤなタイミングで一番イヤな嫌が───罰を与えてあげると約束しましょう!



六花はまるで反応することなく、唯に向けてお天道様とは何かを簡潔に説明しています。

どうやら六花の中では一般的にいう正義の神様たるお天道様ではなく、タチの悪い邪神だと思っているとか。

正真正銘の神様に向かってなんたる不敬か!と怒る場面かもしれませんが、この程度で青筋を立てるようなヤワな心は持ち合わせていません。

お天道様の心は胎蔵曼荼羅すら凌ぐほど寛容なのです。



「六花さん、いつも苦労してますもんね。クスクス」



笑ういろはもまたいとおかし。


様子を見るため布団の横に腰を下ろした六花ですが、ずっと唯の看病のために正座で座っていたいろはのことを思って、自分の横に座布団を置いてそこに座るように催促しています。

それを見たいろはは、特に考える素振りもなく立ち上がると、一切の迷いなく六花の胡座の上に腰を下ろしました。

丁度、六花の顎下くらいに頭が来るのでスッポリと納まった感じがとても尊い光景を生み出していますが、後ろの椅子が邪魔になってしまっています。

はよ退けなさい。



「それは流石に恥ずかしいんだが?」


「別に私たちは家族なんですから、これくらい普通でしょう?」


「それを言われたら弱いなぁ」


「私は一体なにを見せられているんだ」




個人的には百合ハーレムも好き侍。


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