表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/62

01. 出会い

 覚醒は突然訪れた。

 ずっと使えなかった目と耳に、情報が押し寄せてくる。だが、闇に慣れきった目では、周囲がよく見えない。ここはジャックのアジトではないのだろうか? 俺はまた誰かに攫われたのだろうか。


 俺が一人混乱していると、先んじて回復した耳が、通る声をはっきりと聞き取った。


「騎士団だ! ここで違法なオークションが開催されているという情報を得た。全員、その場から動くな!」


 怒号と悲鳴。忙しない足音、呪文を詠唱する声に何かが爆発する音。

 状況はさっぱりだが、逃げなければならないことは分かる。 


 生存本能に突き動かされた俺は、自分が黄金像であることも忘れ、足を動かそうとした。が、足元にある布……らしき感触に足をとられ、全身をしたたかに打ちつける。


「う…………」

 俺は硬い床に転がって、しばし放心した。打ちつけた箇所の痛みにも、そもそも転んだことにも、本当にびっくりしていた。


 俺、黄金像でなくなっている、のか?


 思い返せば、ジャックの話し相手をさせられる時、黄金化を解かれるのは耳と口だけだった。目が見える時点で気づくべきだったが、じわじわと広がる痛みに、黄金像でなくなった実感がようやく生まれる。


 痛みすらも喜びに変わった。俺は布に絡めとられながら、懸命にもがいた。何故、魔法が解けたのかは分からない。でも、黄金も鍵のかかった部屋ももうまっぴらだ。自由になりたい。普通に生きたい。


 だが、ずっと使っていなかった手足は、なかなか思う通りに反応しない。目もぼんやりとしか見えないままだ。その間にも、怒号や悲鳴は大きくなっていく。


 焦りを募らせていると、いきなり視界が暗転した。肌に触れるざらりとした感触からして、大きな布かなにかを被せられたらしい。

 ダメだったか、と他人事のように思った。心を冷やして、絶望に備える。今度はどこに連れて行かれ———。


「それに隠れてじっとしてて! すぐに助けが来るから!」


 若い男の声と慌ただしく離れていく気配。俺は何もされなかったことに驚いて動けず、結果的に彼の言葉に従っていた。


「ボーイとぶつかった時、このメモを押しつけられて……」

「どれどれ……。『ステージの布の下に隠れている男の子を保護して』? 何で自分でしないんだ?」

「自分に聞かれてましても……。渡してきたボーイには逃げられてしまいましたし」

「とにかく布どけるぞ。お前は構えとけ」


 若い男が立ち去ってからしばらくして、今度は二人分の足音が近づいてきた。鋭く研ぎすまされた、戦闘の心得がある者の気配だ。若い男の言う「助け」か、それとも……。


 誰であっても、生きのびてみせる。


 覚悟を決め、目をいっぱいに見開いた。ばさ、と俺を覆う闇が翻る。


 ようやく回復した視界に初めて映ったのは、炎が人間になったみたいな赤い騎士だった。騎士は俺を見るなり警戒を解いて、手を差し出してくれた。



 俺が最初に助けてくれた彼の正体に気づいたのは、彼を失ってからだった。





次話で完結となります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ