第十九話 ソレアミガルムの変わったレース
突然だが僕はとあるレースに出ることになった。
その名は『グァーグリュレース』。
グァーグリュと呼ばれる鳥に乗ってゴールを目指す。
鳥から落下すれば失格、鳥がレースを放棄すれば失格、鳥や騎手が物理的に動かなくなれば失格。
つまりレース中は何をしても良いという単純明快なルールだ。
基本的に騎手は人や亜人が乗って競い合うお祭りごとだ。
たまたま来た僕たちみたいな冒険者も飛び入り参加が許されている。
お祭りごとらしいと言えばらしい。
しかしこの町『ソレアミガルム』の町人は少し変わった人物しかいなかった。
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「ようやく新しい町に着いたね。」
魔法使いや連れ去りやらですっかりセカナイールのことを忘れていた僕たちはいそいでセカナイールに戻って町を満喫した。
そしてセカナイールから出てすぐによく分からない人に泣きつかれ、騎士とかいうよく分からない集団に会い依頼を解決した。
そのせいで結局目的の町からは遠ざかってしまったが、そのおかげでこの町に着くことが出来た。
町についていきなりのお祭り騒ぎに僕たちは少し困惑しながら門をくぐった。
「おうお前らよく来たな。冒険者だろ?」
「あ、はい。」
突然町の男に話しかけられた。
町に来る者拒まずな今のお祭り状態ならではだろう。
変わった服装をしている。
「ならもちろんレースに出るよな?」
「レース?」
「なっ!?知らねえで来たのかよ。グァーグリュレースだ知らねえか?」
全く聞いたこともない言葉だ。
このオカルト世界全体でも有名なくらいなことなら一応耳に入る可能性もある。
マイナーな何かなのか。
「本当に知らねえ見てえだな。・・・・・ぃよっと、こいつがグァーグリュだ。」
「お、大きいのね。」
男が小屋から連れてきたのは大きな鳥だった。
二本の屈強な足の先に鋭い爪があり、体に見合った大きな翼を持っている。
翼の先は赤く染まっており色合いは少しカラフルな鳥だ。
これがグァーグリュと呼ばれるもの。
「当然だ、俺みたいな大きな人間を支えるならこれぐらいの体がねえとな。」
確かに大の大人でもさらに大きくて屈強な体をしている。
というよりもこの町の人間は普通の人間とは少し違う。
「亜人か・・・。」
「というより鳥人だな。」
「あ、いやすいません。」
「はっはっは、気にすんな!よくあることさ。」
思わず口に出てしまっていた。
亜人を見たことは何度かあったがこうまじまじと近くで見たことは無い。
この人、いやこの町の人は皆鳥人のようだ。
だから一発で僕たちのことを外から来た冒険者だと思ったんだろう。
「それに俺たちはこの姿を結構誇りに思ってるんだぜ?」
「な、なるほどっす。」
確かに鳥の中でも猛禽類系の顔立ちをしている気がする。
しかし近くで見ると中々威圧感のある存在だ。
「そういやグァーグリュレースって言うことはその鳥に乗って競うのか?」
「そうだ。レースは切り開かれた森を抜け大地を駆け巡ってそんでゴールだ。
一応町内でのレースだが当然ハプニングは起こりうるもんだ。グァーグリュの暴走を止められないなら町の外までぶっ飛ぶことになるからな。」
部長たちが何やら三人で話している。
人の話は最後までちゃんと聞こう。
三人寄ればただの脅威、恐ろしいことにならなければいいがと心から思う。
「危険なレースね。こういうことなら。」
「そうだね、こういうことは霊明君の出番だね!!!」
「じゃあ私たちは買い物に行ってくるっす!
ビューンという音が聞こえてくるほどの速さで町の出店の方へ向かっていった。
ちょっと待てと静止する間も与えずに走り去っていった。
モンスター討伐何かよりも遥かに動きが良いことがなお腹が立つ。
しかしこのレースに興味があるのは事実。
追いかけるよりも今はこの人に話を聞こう。
「まあなんだ、大変そうだなアンタも。」
「いつものことだよ。そういえばさっき森や大地を駆け巡ると言っていたけどこの鳥なら空を駆け巡ることになるんじゃないか?」
「いやこのグァーグリュ、こんな立派な翼を持っておきながら全くと言っていいほど飛べねえんだ。」
もったいないことこの上ない。
形だけの立派な翼だとは気づかなかった。
確かに何だか飛べそうに見えなくもない。
「このグァーグリュレースはお祭りでもあるが、始まりはこいつらがまた大きな翼を広げて空を飛んでるのを見てえかららしい。」
「今まで鳥は飛べた?」
「いや全くだな。」
そもそも鳥が飛べなくなったなら其れは退化だ。
一日二日どころか一年十年かけても飛ぶことは無いだろう。
――――――退化は時代を超えて出来る進化の形だ。
「なるほど。」
――――――だがそれは現実世界の話だ。
「だったらさ。」
――――――この世界なら別の話だ。
「僕がこのグァーグリュを飛ばしてみせるっ!」
――――――ここは現実離れしたオカルト世界だからだ。
「大見得切るじゃねえか。いいぜついて来い。」
「あぁ!」
その男の後ろをついていく。
周りを見渡せばその男を、いや男についていく僕を睨め付けている。
おそらくレースに参加する者たちだ。
オカルト世界に降り立って初めて町のお祭りごとに参加することになった。
こういうことはあんまり積極的に動くような人間ではない僕だから、あの三人には少し感謝している。
盛大に勝って見返してやろうか!
お読みいただきありがとうございます。




