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第十六話 もふもふと巨人

 キィィィィィィィイ キィィィ・・・・・


 どうやらモンスターたちは僕達を通りすぎて行ったようだ。


「ありがとうサネテアさん。」

「ん。」


 サネテアが手を出してきた。


 ・・・・・あぁ握手かと手を差し出す。


「どうもありが―――――――――


 バシッ


「違う食料だ。」


 思いっきり手を弾かれた。

 こんな事初めてだ。ちょっとショックな気分になりそうだ。


 そもそも握手の文化があるかどうか知らないが。


「お礼はきっちり貰う。」

「まあそういうもんだよな。でも干し肉ぐらいしかないぞ?」

「構わない。」


 あると非常に役に立つ干し肉の一つをサネテアに渡す。


「ついでだからサネテアさんも一緒にご飯食べようよ。」

「?お礼はこれで十分だけど。」


 意外と律義な奴らしい。

 貰えるもんは全部もらっておく精神で生きている僕からすれば少し羨ましい気がした。


「まあここで会ったのも何かの縁ということよ。食事に付き合いなさい。」

「なんでそんな上から目線なんだアンタ。」


 僕も思った。

 そして初対面の奴相手によくもまあ普通に自分を崩さず話せるな。


「色々と聞きたいこともあるしねぇ。」


 部長はそっちの興味だけで動いているようだ。

 確かに気になることは山ほどある。


 ・・・・・・・一人登場しただけで謎が増えすぎだこの世界は。


「まあとにかく町に戻ろうか。」

「待った。実は面白いところがあるんだが見に来ないか?」


 どう考えても悪魔の誘いだ。

 サネテアの顔も心なしか邪悪な笑顔に見える。


 ―――――――というか実際そうだ。


 そしてこの後の展開も分かりきっている。


「面白いところ!?行くに決まってるよねみんなっ。」


 部長は惹かれるに決まっていた。

 あって数時間だがもう部長を攻略しやがったなこの魔法使い。


 もちろん僕は断らせてもらう。


「じゃあ僕はお留守番つうことで。」

「全員参加で!」


 強引に決められた。


 そもそもこのオカルト研究部のヒエラルキー、おそらく副部長ぐらいの役割を得てるはずの僕は最下層に位置している。


 どうしてこうなった。


「さっさと行くっすよ禍々士。」


 虚子が何故かこっちを睨んでいるように見えたが気のせいか。

 気のせいだと思いたい。




 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆




 ―――――――――本当にどうしてこうなった。


 正直こっそり帰ってもなんだかんだバレないんじゃないかと思ったが、あの部長の笑顔と虚子の表情で後ろを振り向くことすら出来なかった。


 まあそれは良いとしてこの状況だ。


「もふもふだ~。」

「もふもふっすねえ~。」

「ふふっ。」


 この一面に広がる謎もふもふ空間に三人は完全に虜になっていた。

 確かにこのもふもふに触れたらだらしなくなってしまうのも分かる気がする。


「いやぁもふもふすぎて夢みたいだぁ。」


 体の自由が聞かず、ただもふもふという感覚が独り歩きしている状態だ。

 夢心地と言うやつだろう。

 人をダメにする椅子としてこれを現実に持っていけたら最高だ。


 虚子もあぁなってしまうのは意外だったが。

 あまり見たことの無い表情を拝めただけでも今日の僕はとても良い日になった。


「あぁなったらもふもふが縮まるまで動けない。」

「いつ動けるようになるんだ?」

「分からないけど夕方ぐらいかも。」


 ということは一旦ここで休憩ということになる。



 グゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ―――――――――



「お腹空いた。もう我慢できない。」


 サネテアのとても長い腹の虫を聞いたら僕もお腹が空いてきた。


「とりあえず干し肉食べるか。」

「そうさせてもらう。」


 今日初めて会ってそして二人で食事をする。

 現実では考えられないような出来事だが中々貴重な体験だ。


「実はここに来たのには理由がある。着いてきて。」

「え?あ、あぁ。」


 突然話しかけられて驚く。

 このオカルト世界の人間と僕一人で話すことはあんまりない。

 なんだかんだ言って部長に頼っていることが多い。


「早く。」

「あ、ごめん。」


 考え事も程々にして僕はサネテアの理由に着いていった。



 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



「これは・・・・・一体。」


 森の少し空いた所にさっきのモンスターたちが固まっていた。


「さっきの洞穴がモンスターの巣ってわけじゃないのか。」

「アンタの知っていることが全てじゃないってこと。」


 若干棘がある気がするが気にせずにモンスターの方を見る。

 よく見るとモンスターたちの中心に何か動くものが見える。


「あれって。」

「モンスターに捕えられた人間、いや亜人。」


 確かに人間にしては血色が悪く見える気がしないでもない。


「もしかしてこれが理由か?」

「まあ・・・一応。」


 はっきりしない解答に僕は少し苛立ちを覚えた。

 そういう人間を僕は知っているからだ。

 名前は星場七魅――――――そう部長だ。


 兎にも角にもこのモンスターだ。

 中にいる人間を助けるにもこのモンスターをどうにかしないといけない。

 というよりどうにかするからここに連れてこられたわけだ。


「なぁ作戦は――――――――――――」


 ドォォォォン


 サネテアが何も言わず交戦し始めていた。


「早くアンタも戦って。」


 いきなり戦い始めてこの態度だ。

 こうなれば僕もサネテア以上に働いてモンスター討伐する。


「いけっ、チョコレート。」


 チョコレートの剣を作りそれをモンスターの方へ放つ。

 単純だがやはり効果的だ。


「ふうん、なかなかやる・・・。」


 サネテアが僕を見ながらニヤついている。

 こっちも一応戦っているんだからモンスターの方に集中して欲しいが。


「アンタの力、ちょっと似てる。はぁっ!」


 サネテアが手を翳し声を張り上げた瞬間、地面が盛り上がり土が巨大な球体となって浮きはじめた。


「まさかサネテアも。」


 僕のこの言葉にまたサネテアがニヤついた。

 そして球体を作った時に翳した逆の手を球体に向かって翳した。


「そしてここからはあんたには出来ないこと。」


 そういった途端手から燃え盛る山のごとき猛火が球体を包んだ。

 その炎を纏った土の球体は、そのままモンスターの方へ放たれた。


 ドカァァァァァン キィィィィィ・・・・・


 それはぶつかるや否やダイナマイトのように爆発しモンスター共をぶっ壊していく。


「って威力が強すぎんだろ!中の人間にも当たるだろうが!」


 爆発で吹き飛んだモンスターの欠片から中の人間を守るため、地面にチョコを這わせて覆うように守る。


「そんなことも出来るんだ。」


 それがこの能力の使い方だ。

 燃費は悪いが使い勝手はそれなり。


 そういえばこの爆発の感じどこかで見たような気がする。


 そうだ、あれはモンスターを食った獣の時のやつだとすぐに思い出した。

 今思い出すと死ぬほど危険だった。

 少しモンスターに同情してしまいそうになる。


「ボーッとしてないで手伝って。」

「なっ、こちとら割と死にそうだったんからな!」

「何の話か全く分からないけど私のせいじゃない。」


 何の話か分からない癖に言い切ってきた。


 これ以上手柄を取られる訳にも行かないし、それにまたなにか文句を言われるのも癪なのでモンスター討伐に専念する。



 あまり嬉しいような感じではないが、似た能力故かなかなか相性がいいような気がする。

 それなりの数がいたモンスターも今ではほとんどが換金アイテムと化している。


「あと少し、巨人よっ出てきて。」


 ズズズズズズズッ


 また土が盛り上がっていく。

 それは形を作りながら大きな巨人へと変化していく。


 ・・・・・悔しいが少しかっこいい。


「蹂躙して。」


 サネテアの声と同時に巨人がその巨体を力強く振りかざす。

 モンスターたちは無慈悲な力の前になす術もなくなぎ倒されていく。


 自壊しているのか巨人に潰されているのか分からないが、辺りには綺麗な石が散らばっている。

 衝撃が凄まじすぎて中の亜人が心配になるほどだ。


「ちゃんと考えてる。アンタは早く中の人を助けて。」

「あ、あぁ。」


 ボーっとしているわけにもいかないので巨人の衝撃を上手くチョコレートで減らしながら進んでいく。

 上手く巨人の力を制御しているのか中の所までするすると辿り着くことが出来た。


「大丈夫か?」

「~~~~。」


 失念していた。

 今まで当たり前のように自分の世界の言葉を話していたが通じない場合もある。


 この場合どうすればいいか考えても仕方ない。

 とりあえず手を取ってここから逃げることにしよう。


 ビリッ


「ん?」


「・・・・・そこに立たれてると危ないですよ。」

「は?」


 バァアアアアアアアアン


「うわあ!」


 亜人の手から雷のような轟音とともに雷光が放たれた。

 それはそのままサネテアの方に向かっていく。


 ドォォオオオzン・・・


 避けることもなくそのまま雷光をもろに受けた。


 しかし、


「相変わらず無駄に攻撃してくる・・・。」


 煙の中からサネテアとパラパラと崩れていく土の壁が見えてきた。

 どうやら無事のようだ。


「相変わらず何事もなかったかのように対処しますね。」

「そう思うならやめてほしい。」


 僕は完全に蚊帳の外になっている。

 割り込もうにも頭が完全においていかれている。

 こっそり部長の所に戻ってもバレないような気がしてきた。


「そんなだから村から追い出されたんですよ。ってどこに行くんですか。」


 亜人が何かしゃべっているがサネテアが気にせずこっちに向かってくる。


「そういえばアンタの名前聞いてない。」

「そういえばそうだったな。僕名前は霊明禍々士だ。」

「れいめ・・・難しい名前。一つの名前?」


 そういえばこの日本人らしい名前はこの世界では珍しいかもしれない。

 というより苗字と名前の概念自体ないかもしれない。


「いや名前は禍々士だ。」

「そう、禍々士・・・もうちょっと付き合ってもらうから。」

「は?」


 そう言うとサネテアはさらに奥へと向かっていった。


「ちょ、ちょっと待ってください。まだ話が・・・。」

「アンタもついでだから付いてきて。」

「はあ・・・。」


 まだ会って間もない亜人と顔を見合わせながらため息をついてサネテアの後を追っかけることにした。


お読みいただきありがとうございます。

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