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第二十七話 図書館ではサンダルを脱ぎましょう


 夏休みを間近に控えた七月の土曜日。

 日差しがまぶしく、外を歩けば数分で汗が全身から噴き出るほどの空気が充満している。

 天気も良く暇なので、図書館に行って勉強でもしようかなと、僕は外に出てきた。

 図書館は、閑静な住宅街のど真ん中にある。

 隣接する公園は木々が多く、今日もこのクソ暑い中を子供たちが元気に遊んでいる。

 それを横目に館内へ入ると、涼しい空気が僕を包み込む。

 クーラーが効いているおかげで、汗がスーッと引いていくのが分かる。

 本屋とは違う本の匂いが、僕の鼻を心地よくしてくれる。

 そして図書館は、とても静かである。

 人がページをめくる「パラリ」という音がたまにするくらいである。

 さて、勉強しようなどと殊勝な思いで来たものの、特に勉強道具等は持ってきていない。

 何か面白い本でもあれば、良い暇つぶしになるだろう・・・と思って本棚を眺めながら歩いていると、一人の少女が本棚の上の方の本を取ろうとして背伸びをしている。

 爪先立って一所懸命に手を伸ばしているところが、健気でかわいい。

 見ると、少女はサンダルではないか。

 その素足はとても綺麗で、どこか見覚えがある。そう、つい最近見たような・・・。


「あっ、菜帆ちゃん?」


 「ん?」と振り返ったその黒髪の子は、まぎれもなく菜帆ちゃんだった。


「あ、まどかちゃんのお兄さん、こんにちわ♪」


 両足をきちんと揃えてペコリと頭を下げる菜帆ちゃん。

 菜帆ちゃんは、いつも僕のことを「まどかちゃんのお兄さん」と呼んでくれる。

 度々僕の名前はまどむだよって教えているのだが、一向に「まどむさん」と呼んでくれない。なぜなのか。

 まあそれはいい。

 その上の本を取りたいんだね?


「はい、ちょっと手が届かなくて・・・」


 再び手を伸ばして、ピョンピョンと跳ねる菜帆ちゃん。

 その横には、高いところの本を取るための「踏み台」がある。

 そこの踏み台を使えば、届くんじゃない?


「あ、これ使っていいんですか?」


 うん、もちろん使っていいんだよ。ただし、ちゃんとサンダルは脱いで乗るんだよ。


「はーい」


 菜帆ちゃんは踏み台を自分の足元に置くと、サンダルを脱ぐ。

 実は、この踏み台を使うときに靴を脱ぐ必要は、ない。

 ちょっとした悪戯心で脱ぐように言ったのだ。おりこうさんな菜帆ちゃんは、僕のいいつけを守って裸足で踏み台に乗る。

 その状態でちょっと手を伸ばして・・・ほら、本が取れた。


「取れました♪ ありがとうございます!」


 取った本を胸の前に持ってペコリ。可愛い。

 ここでさらに僕の心の意地悪な部分が動き出してしまった。

 幸い、今日の図書館はさほど混んでいない。多少の無茶なプレイも出来てしまうことだろう。


「菜帆ちゃん、今日は図書館の中では裸足のまま過ごしてみない?」

「裸足・・・ですか?」


 今にもサンダルを履きそうな菜帆ちゃんを制止する。


「どうしてですか?」


 至極もっともな質問。

 僕は隠さずに言った。


「裸足の菜帆ちゃんが可愛いからさ」

「まあっ、そうなんですか!」


 少し顔を赤らめる菜帆ちゃん。

 お。なかなかの好感触ではないかな?


「じゃあ、裸足でいますけど・・・どうして裸足だと可愛いんですか?」

「そ、それは・・・」


 裸足フェチだから・・・と言っても、通じないんだろうな、菜帆ちゃんには。

 ならば、正攻法で攻めよう。


「女性の体の中で、足・・・裸足の足がもっとも高貴な部位だと僕は、思うんだ」

「へええ・・・そうなんですね・・・」


 クリっとした目と、クッキリとした眉で僕の目を見てくる菜帆ちゃん。

 こんな素直で純真な子に、僕は何を説いているのだろう・・・ちょっと申し訳なくなってきた。


「高貴な部位だから、足の裏にお灸を据えたりしたいんですか?」


 突然、以前の動画撮影のネタのことを訊かれて面食らう。

 あ、あのときは熱いことしてゴメンね・・・!

 シドロモドロとは、まさに今の僕の状態のことだろう。


「ふふっ、いいんですよ。まどかちゃんのお兄さんに喜んでいただけたなら、私も嬉しいですから♪」


 どうやら菜帆ちゃんの僕を見る目に問題は無いようで、胸を撫で下ろす。

 菜帆ちゃんはクルリと後ろを向いて、右足の裏を僕に見せる。


「そんなに裸足っていいですか?」


 うん、その仕草自体がもう、最高だよね!

 図書館内を無邪気に裸足で歩く女子中学生に、僕は夢中になる。

 菜帆ちゃんのサンダルは、僕が持ってあげている。


「まどかちゃんのお兄さんは、今日は何の本を読むんですか?」


 そうだ、僕はまだ今日読む本を決めていなかった。


「では、私は先に座って読み始めていますね」


 菜帆ちゃんは何の躊躇もなく裸足のまま、閲覧コーナーの机の方へ向かう。

 あんまり、恥ずかしさは感じていないようだ。

 まあ、恥ずかしがって裸足になってくれない、よりは今の方がいいけど。

 適当な本を取った僕は、菜帆ちゃんの横の席に落ち着いた。

 この図書館の閲覧コーナーは、長テーブルにイスというオーソドックスな構成で用意されている。

 テーブルに本を置いて椅子に座ると、隣の菜帆ちゃんの裸足が見えなくなってしまった。

 菜帆ちゃんの正面の席に移動してみたが、テーブルの天板はガラスではないので、やはり菜帆ちゃんの裸足が見えない。

 せっかく菜帆ちゃんに裸足になってもらったのに、満足にそれを見れないので不満が募る一方である。

 これは近いうちに菜帆ちゃんにうちに遊びに来てもらい、撮影会と称して何かプレイを強要するしかないな・・・。

 などと思いをアレコレ巡らせていると、いつの間にか夕方近くになってきた。


「じゃあ、私そろそろ帰りますね。今日は一緒にいてくれて、ありがとうございます♪」


 いやいや、僕の方こそ楽しかったですよ。僕ももう帰るから、一緒に途中まで帰ろうか。

 菜帆ちゃんと一緒に図書館の入り口まできた。

 そろそろ菜帆ちゃんにサンダルを返そうと思ったが、なんと菜帆ちゃんは裸足のまま図書館の外に出てしまった。


「途中まで、一緒の方角ですよね」


 そ、そうなんだけど・・・10メートルほど歩いても、菜帆ちゃんが何も言ってこずに裸足のまま歩いている。

 さすがに足の裏をケガさせてはまずいと思い、言うことにした。


「菜帆ちゃん、サンダル返すよ」

「え? あ、私裸足のままでした!」


 き、気付いてなかったのか・・・?

 菜帆ちゃんのお茶目(?)な一面を見ることができた日だった(幸せ)。



つづく



2017/10/27 体裁を整えました。

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