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頭ぱぁんっ、てなるわ!

身嗜みを整えた私は、メハとポポクレス神様とヤンソン村の簡素な城門の前に出てきていました。

田舎で、半端な時間ではありますが人の出入りが多少はあるので私達は街道の端に寄って地図を拡げています。

皆で顔を寄せると、ポポクレス神様はさっきまでキャラメルポップコーンを食べてらっしゃったので香ばしいキャラメルの匂いが結構来ます。


「最短で行くのじゃ! (はや)マッスルっ」


「ん~。ルートによるが、ギルドの支部のある『マバオの町』まで野営地を2つ経由、ってとこだな。今日、1つ目で泊まって、明日2つ目で軽く休憩して日が暮れるくらいに町到着。ってのが無難だろ?」


「・・・」


私は慎重に地図と、この辺りの『野営地ガイド』を見比べています。メハやポポクレス神様は野営地の仕様等まるで感心ありませんし私も1人か、ほぼ幼児のポポクレス神様だけならそこまで問題視しないのですが、フェーズが変わっているのです!


「では、ここから走って(・・・)今日中に2つ目の野営地を目指しましょう」


「いやいやっ、なんで? 馬、借りてないぜ?」


「でぃあーーっ!!」


私は爆走しだし、ポポクレス神様も飛んで続きますっ。メハは慌てて追い掛けてきました。


「レルク! ポポクレス神様っ。マジかっ??」


「メハよっ、これも修行じゃ! 重い装備を収納ポーチにしまうのも無しじゃかんのっ」


「え~っ?! ほら、鎧とか兜の継ぎ目とか鎧下とかさっ、擦れて傷むだろ? 俺はさ、ギルドの教練所の頃から走り込みってどうなの? って思ってた方だからよっ」


口が回りがちなメハは走りながらブーブー文句を言ってきます。ま、それはそれとして。私は走りながら切り出しました。


「ポポクレス神様。まだ天界には帰りませんよね?」


「お? そうじゃった。『激励』したらすぐ帰るつもりじゃったのに、それじゃ」


「待て~い!」


私は何やら光を放ってたぶん空間転移(テレポート)しようとしたポポクレス神様を片手で掴んで引き留めましたっ。

めちゃ体温高いっ、栗鼠とか掴んだみたいです。


「ぎゃあっ? 何するんじゃ! 中身出るわっ。不敬ぞっ?! 不敬マッスル!」


「大変失礼していますが、いくつか質問させて頂きます」


「なんじゃ、もう~っ。走りながら忙しないヤツじゃのう」


「まず、お礼にせよ! なんで私にこんな神力を与え、さらに鍛えようとするのですっ。20日の期限の意味も教えて下さいっ!」


「1つの質問であれこれ聞くヤツじゃ。えーと・・最初に力を与えたのはタダの気まぐれじゃ。まぁ20年地上を彷徨ってお主程、我のマッスルと波長の合う者はいなかったから、ちょっとサービスしちゃったがのっ」


「気まぐれ、ですか・・」


これに関してはこの方ならまぁそんな感じかな、と。


「20日の期限は20日後に『正義マッスル神サミット』が開催されることになったからじゃ」


ここでメハが並んできました。


「サミットって、『マッスルの神』って他にもいるのかよ?」


「もちろんじゃ! 水の神が、海から雨から水溜まりまでっ、色々いるように。マッスルの神も大勢いるのじゃ」


「マジか」


水はわかりますが、大勢のマッスル??


「ポポクレス神様は具体的にはどのような『マッスル』の神なのですか?」


「我は『もう一息』のマッスル神じゃ!」


「もう一息?」

「もう一息・・」


メハと被ってしまいました。え~と、


「もう一息頑張ろう的な概念の神様、ということですか?」


「うむっ!」


これまでの人生で、辛いけど、もう一頑張りしよう! と思っていた概念を司っていた神様がこの方だったとはっっ。


「実家にお金無くて大変だった時っ、神学校で特待生基金欲しくて勉強や実習大変だった時っ! 頑張る私をいつも見守って下さっていたのですね・・ポポクレス神様」


「ああん? この星と時空にどんだけ知的生命体がいると思っておるんじゃ? 個別にいちいち認識しておったら頭ぱぁんっ、てなるわ! 誰と会う時も我は初めましてじゃっ!」


「・・あー、はい。失礼しました」


無数のモブの1人で失礼しましたよっ。


「そんなことより! 今回のサミットではどんな協議、決定が行われるか? さっぱりわからん。じゃが最低限度、使徒を1名は『使える程度に』鍛えておくよう、お知らせが来たのじゃ」


「それが竜と巨人云々?」


「そうじゃ。とにかく! ひょおっ」


「あ」


ポポクレス神様は一瞬、戯画のようになって身体を細くして私の手の中からすり抜けてしまいましたっ。


「あと19日、万全を期しておくんじゃぞ? では、我はデートやら大掃除やら色々あるから、一旦帰るのじゃあ! マッスルマッスルっ!」


ポポクレス神様は光と共にテレポートしていってしまいました。


「行っちまったか。正直、レベルの高いピクシーの亜種かなんかじゃねぇか? とか思ったりもしてたけど、どうもモノホンっぽいな」


「そのようですね」


「・・・」


「・・・」


並走し妙な間が空いてしまいました。

メハ個人というより、神学校が初等高学年から男女別だったので、やや対処に困惑する所はないではないのですっ。


「・・自分で言ってしまいますが『実質モンク』と『ファイター』だけ、というのもバランスが悪いですね」


気まずいですからね! ここから『よし、女子メンバーをもう1人くらい増やそっかぁ』という所まで話を持っていきますよぉっ。


「まぁなぁ、活動の主旨にもよると思うが。『なんとかサミット』っで何か探してこい、みたいな探索系クエストが課せられる感じなら基本、2人であとはその都度必要なメンバーと短期で組むくらいの方がフットワーク軽いかもしれねぇが、討伐系クエストなら2人じゃちょっとな」


「ですね! ですね! では、間を取って『もう1人』旅の仲間を増やしましょうっ」


「おお、いいとは思うぜ? そうだな・・魔法使い職か、盗賊職辺りがバランスいいかもな」


よし! 流れが来たっ。性別への言及はありませんが、こっちのもんですっ!


「ではそのように。まずは移動ですよっ、メハ!」


「いやっ、だからマジでずっと走んのかぁ~? せめて剣と盾、ポーチにしまわせてくれっ」


私達はマバオの町近い、2つ目の野営地へ向け、勢いを増して爆走してゆきました。



日が暮れる頃には件の2つ目の野営地に到着しました。

メハは鎧兜を脱いで剣と盾を放り出し、鎧下と兜用の頭巾だけの格好で私達がスペースを確保した東屋の床でダウンしています。

さっきヒールの魔法は掛けてあげましたが、取り敢えず置いておきます。


「さて、結構人がいますね」


そうここの野営地は比較的大きなマバオの町に近いので規模が大きく、簡単な魔除けの城壁があり、東屋が7ヵ所もあり、他にも利用者が3組程いました。

東屋には着替え等に使える小部屋が付いていて、トイレも離れた位置に配置。殆んどの場合常時、利用者がいる。ということで、是が非でも! 私は今日中にこの野営地にたどり着こうとしていたのですっ。


「メハがしゃんとするまで、この辺りの噂話でも聞き込みしてみましょうかね?」


私はなんちゃって冒険者気分で、取り敢えずカンテラと、手土産にヤンソン村で買った燕麦の利いた『ヤンソン・ショートブレッド』を手に、他のパーティーに話を聞いて回ることにしました。

何か面白い話聞けるかな~?

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