どうやら私らしいぞ?
翌朝、私とメハは野営地近くの森に来ていました。
この森に『かなり風変わり』だが腕利きの魔法使いのエルフが住んでいる、という話を昨夜聞いたのです。スカウトに来てみました。
「噂が本当でも隠居してんだろ? もう爺さん婆さんじゃないかなぁ」
ここに来るまでボヤきまくりなメハです。
「とにかく行ってみましょう。ポポクレス神様は『面白さ』の要素を強く評価されているようです。変わり者の方が普通にギルドで募集するよりも採用率が高い気がします」
「・・俺、そんな基準でスカウトされたの??」
メハが困惑していましたが、私達は脱臭剤を使いブレッシングの魔法を掛けてから、目印だという苔むした梟の置物を根拠に魔除けの利いた林道から外れ、森の奥へと続く獣道に入ってゆきました。
しばらく進むとやはり苔むした梟のイラスト付きの立て看板がありました。
『ここより先、魔法使いベルミッヒ・テンプルシードの占有地。用のある者はマバオ冒険者ギルド支部魔法使い会に取り次ぐべし。この先、許可無く進むのは危険っ!』
と癖の強い字で書かれています。
「梟は好きらしいが、支部で話を通してもらった方が無難じゃねぇか?」
「いえ、私には時間が18日しかなちのです。このまま行っちまいましょう」
私は構わず進みます。
「レルク、大丈夫なのかよ?」
「屁の突っ張りは結構です!」
「なんだか知らないが凄い自信だなっ」
私達は道無き道をズンズン進んでゆきました。
そうして進んだ先は、どうも妙な具合になっていたのですっ。
「これは・・」
森の先が陽炎のように歪んでいます!
「迷いの術じゃねーか? よっぽどアポ取ってない相手に来てほしくないんだな」
「・・私が使える魔法でゴリ押ししてみましょう! ブレイクカース!!」
呪いを解く魔法ですが、呪い以外の術も解けないではないです。
パシュウウゥンンッッッ!!!!
破裂音と共に一瞬可視化した魔法式の破片が見え、歪んだ森が正常な状態に戻りました。
「無理矢理気味に解いたので長く持ちませんっ、とっとと突っ切りましょう!」
「ヤバそうだな!」
「気合いですっ、しゃーっ! んちゃーーっ!!」
「俺もっ、うぉおおーーーっ!!」
私達は若干ヤケクソ気味に、また少し揺らめきだした森の奥へと駆け込んでゆきました。
・・後半、幻惑の森に捕まりそうになりましたが、
「ブレイクカースっ!!」
もう一度唱えて絡み付く根や枝や蔓で閉ざされた進路を突き破り、私達は転げるように目的地へと到達しました。
「はぁはぁっ、ここが、お家ですか」
「ふぅぅっ・・エルフ族の魔法使い職、ベルミッヒ、なんとかさん、だっけな?」
それは苔を被った茅葺きの、2階のあるらしい古風な家でした。小さな畜舎と菜園もあり、菜園に関しては農具が独りでにに畑の世話をしていました。
童話のような様子に私達は少し呆然としていたのですが、唐突に2階の窓がバァンっと開き、梟型のカラクリ仕掛けの傀儡『マシンゴーレム』が飛び出してきました!
「ピョエーーっ! 御主人様ガ警告シタノニ入ッテ来ヤガッタナッ。許サン!」
梟のマシンゴーレムの両目が怪しく輝くと、地面に魔方陣が発生し、そこから頭が割れた大きな『人型マシンゴーレム』が出現!
さらにその割れた頭部に梟マシンゴーレムがカポっと収まり割れた頭が閉じると、人型マシンゴーレムは魔力を高め、スチームを吹き出しながら起動しましたっ!
「ヤバいぞっ」
「嘘ぉっ??」
「ピョエーーっっ!!!」
梟マシンゴーレムの声で人型マシンゴーレムが襲い掛かってきますっ。速いっ、パワーもある! 目から熱線撃ってくるっ!
「だぁっ! メチャクチャしてくるぞっ」
「もうっ、最悪です! プロテクト! レジスト! メハは少しだけ時間を作って下さいっ。私は神力を溜めますっっ」
「了解だ! 行くぜ鳥ちゃんよぉっ!」
「来イヤァっ、ピョエーーっっっ!!!」
私が守備魔法を2種掛けたメハは盾を構えて梟入り人型マシンゴーレムに突進してゆきました。
私はその隙に両手を交差して神力を高めますっ。
「っ?! ピョエ??」
圧倒的パワーの出現にギョッする梟入りマシンゴーレムっ。もう遅いです!
「ダッキング、加速、ゴッド・クロスチョップ・・」
カッと目を見開き、突入コースを看破っ!
「でぃあーーっっ!!!!」
姿勢を低く高速ダッシュで熱線と大きな拳の打ち下ろし回避し、懐に入りっ、フルパワーのクロスチョップで人型マシンゴーレムの胴体を斬り裂いて粉砕しましたっ!!
「ピョエ~~っっ、御主人様ァ~っ!!」
人型マシンゴーレムの頭部が割れ、家の方に振っ飛んでゆく梟マシンゴーレム。
それを、何者かが杖を介した念力で受け止め、自分の胸元まで引き寄せて抱えました。
「なんの騒ぎだ?」
そこには、分厚い眼鏡を掛けた、人間なら二十歳前後くらいの姿の耳の長いエルフ族の女性がいました。
古風な杖を持ち、古風なローブを着込み、そして・・
「髪長っ、天パっ!」
口に出さずにいられないメハっ。
確かに、巻き毛の髪をふくらはぎの辺りまで伸ばしてらっしゃるのですが、巻き毛な上に全く纏めていないので『大量の巻き毛の中から眼鏡のエルフ魔法使いが生えている状態』に見えなくもない感じす!
「何っ? 私の髪が長いと言うのか? 確かに、2年くらい前から首や肩が凄く凝る気がしていたが・・ふむ、なるほど」
考え込んでしまう、たぶんベルミッヒさん。
「あの、ベルミッヒ・テンプルシードさんですよね?」
「ああ・・」
今、目が覚めたような顔でこちらを見るたぶんベルミッヒさん。
「その女ならよく知っている」
あれ? 違った??
「どうやら私らしいぞ? アハハハハハハハッッッ!!!!」
「ピョピョピョピョエエエッッッ!!!」
抱えた梟マシンゴーレムと一緒に笑うベルミッヒさんっ。
「・・・っっ」
「・・・っっ」
私とメハは顔を見合せ、一旦集合して顔を寄せ、小声で会議を始めました。
「すいません、私、冒険し過ぎました」
「そうだな。時に勇気ある撤退を選択をすることも人生には必要なもんさ」
会議終了!!
「じゃ、私達はこれでっ」
「散髪、お勧めしとくぜ? ハハ」
私達は引きつった笑顔で立ち去ろうとしたのですが、
(採用ぉーーーーっっっ!!!!)
ポポクレス神様のテレパシーが響き渡りましたっ。
(ポポクレス神様?! ちょっとっ、どうでしょうか? 御隠居されてらっしゃるようですしっ)
(そうそうっ、人それぞれライフスタイルってもんがあるからさっ)
(面白いし、実力もあり、邪気も無しっ! 採用じゃっ!!!)
邪気ありませんでした?!
「おい、このテレパシーはなんだ? 採用とは??」
「ピョエ?」
ベルミッヒさんと梟マシンゴーレムは怪訝な顔をしてらっしゃるのでした。
約半日後、私、メハ、またまた天界からいらっしゃったポポクレス神様、さらに! ベルミッヒさんと梟のマシンゴーレム『3号』さんはマバオの町のとある宿屋の部屋にいました。
椅子に座り、撥水布を首から巻いて眼鏡も外したベルミッヒさん(美人っ!)の『溢れるヘア』を私服のメハが、器用に散髪道具を使い分けてカットしてゆきます。
「いや~、メハが『床屋スキル』を持ってらっしゃるとは」
「実家が床屋だったんだよ。どうだいベルミッヒさん?」
ふんわりしたボブカットに仕上がりつつある様子を鏡で見せるメハだったが、ベルミッヒさんは眉を寄せるばかり。
「3号、眼鏡を」
「ピョエ!」
テーブルに置かれた眼鏡のフレームを咥え、口と脚で器用にベルミッヒさんに掛けて上げる3号さん。
「ふん、短くなっている。頭部が軽量化されたっ。くふふふふふふっっ」
「ピョピョピョピョっっ!」
「はい、2人とも笑い方怖いからっ。危ないから大人しくしてくれよな?」
扱いに慣れつつあるメハは眼鏡を取り直し、粛々と最後の髪を調整に入りました。
「ベルミッヒよ、レルクの旅の仲間になるのはよいんじゃな?」
「ふむ・・構わん。最近、魔法とゴーレムの研究をし過ぎて、本とゴーレムと自分の区別がつかなくなってきていたからな。しばらくリハビリするのも悪くない」
リハビリなんですね・・
「よし! 使徒レルクよ、新たな仲間っ、ベルミッヒ・テンプルシードが加わったのじゃっ!! マッスルマッスルっ」
「ピョエーーーっっ!!!」
「・・・」
大丈夫かな? 最終的に私達は、チンドン屋さんみたいになってしまうのでは・・
等と不安を感じつつ、この後、私達はマバオの冒険者ギルドに向かったのでした。




