悪行マッスル神ヨルン・デェ神 1
私達が久し振りにマバオの町に戻って懐かしの定宿に戻って2階の共有バルコニーでほっこりしていると、
「ん?」
「なんだ?」
「空のエレメントが・・」
「闇属性ヲ探知デ~スっ!」
空が闇属性の赤い曇に覆われだしました!
「攻撃っ? 広範囲過ぎるぞ?? マナサーチっ!」
ベルミッヒさんが探知魔法を赤い曇に掛けるとほぼ同時に『赤い雨』が降り出しましたっ。
「レジスト! これは浴びない方がいいっ、中にっ!」
「わかりましたっ。闇の神力? を少し感じます。ブレッシング! 皆さんもっ」
補助魔法を掛けつつ、他にも数名いた私達以外の宿泊客も中へと促したのですがっ、
「オオォォ・・・マッスルマッスルっ!!」
「『ヨルン・デェ神』様に捧げよぉーーっっ!!!」
赤い雨を吸った地面から赤い土でできたレスラー兵達が次々と出現しっ! 暴れだしましたっ。マバオの町は騒然となりますっ。
「嘘ぉっ? ベルミッヒさんっ、この雨の性質は詳しく!」
「かなり特殊な闇属性だが肉体や精神にも悪影響があるが、補助効果があれば鍛えていれば耐えられはするっ。しかし傀儡をこれ程大量に造るとはっ」
「どう見ても『マッスル業界』案件だぞ、こりゃっ。語尾、マッスルだしっ」
(ポポクレス神様っ! 何かわかりますかっ?)
返事が・・・ありませんっ。
「ダメ! 繋がらないですっ。取り敢えず装備を整えましょう!」
「ギルドと水晶通信は必要だな。3号は雨の当たらない所で外を観測し、待機っ!」
「了解デス!」
「ヤベェなっ」
私達は急いで支度を整えましたっ。
外へ出ると酷い有り様ですっ。赤土のレスラー兵達によって町は破壊され! 次々とレスラー技を掛けられてゆく一般の人々っ。
町の石畳が血に染まっています!
「許せませんっ!」
「雨足が弱まったからか? 兵の増殖は鈍化してるっぽいが」
「まず数を減らすべきだ。ギルドと教会で雲の対策を始めている。3号、人を襲っている個体を優先っ!」
「びゃーっ!」
狙撃型のゴーレムスーツに入った3号さんは両腕の銃で赤土のレスラー達を狙撃してゆきますっ。
私達も続きます! 助かりそうな人は回復もしないとっ。
「プロテクト! クィックムーヴ!」
「でぃあーっ!! からのヒール!」
「素人に技掛けんなっ!!」
私達は、他の冒険者や衛兵、腕っぷしのある一般人の方々と共に赤土のレスラー兵達の暴走に対処してゆきました。
赤土レスラー兵達は『レスラー技を使う』ことを除けば標準的な武装のオーク族の兵士くらいの戦闘力ですね。
そうこうしている内に、聖教会とギルドの魔法使い系職の方々の乗った飛行絨毯や飛行獣の類いが赤い曇に向かって上昇し、少しずつ雲払い始めました。解除自体は可能なようです。
交戦は10分程は続いたでしょうか?
「しゃーっ! んちゃーーっ!!」
私は右手1本の神力手刀の連打で目につく最後の赤土のレスラー兵達を仕止めました!
「終わった、でしょうか?」
赤い雲は晴らされていました。
すぐに生存者の手当てや救助に回ろうとすると、
「っ!」
私達の近くに、光と共にっ、杖を持ったいつかのオーク・マックスの方とその手下達が現れました! ちょっと小綺麗な格好はしていますがっ。
「出所っ? 脱獄っ?? やる気ですかっ?!」
私達は身構えました。もう簡単には半殺しにされませんよっ?!
「待て待て待てっ!『現れ方』がオカシイだろっ? 敵じゃねーよっ?! くそモンク女っ!」
「僧侶ですっっ」
「手短に話せ」
「来イヤァーっ!」
「出てきた時、神力っぽくなかったか?」
オーク・マックスの方はうんざり顔でしたが、手下のオーク達を促して手にした回復特性のワンドや念力特性のワンドで応急手当てや救助を始めさせました! ええー?
「俺達ゃあの後なんだかんだで、マッスル神どもに引き渡されてよ。『向こう200年』天界で下働きさせられるハメになった。まぁ、お前ぇらに殺られた仲間も蘇生してもらったし、どうせ地上にいても俺様は死刑で手下の大半はクソ労役をうん十年だ。マシな方だ」
「そうでしたか・・」
「お前達のような連中がよく大人しく従っているな」
「疑ワシイデスっ!」
「逆らったら『身体が爆発する縛り』を掛けられてんだよっ、くそマッスル神どもにっ!」
「映えそうだな。へへっ」
「うるせぇっ、くそホスト戦士っ!」
「酷ぇ言われようっ、へへへっ」
メハ、ヘラヘラし過ぎですっ。というかこの方、くそくそと言い過ぎですっ。語彙力っっ。
「貴方の事情はわかりました。今回の事態は一体? マッスル絡みですよねっ」
「そうだ。まぁ、直接聞いたらいい。俺は『蘇生の杖』を預かってるから、クソ忙しい。『鮮度次第』で蘇生率変わるらしいからよっ」
そう言えば杖を持っていたオーク・マックスの方は、私に金の宝玉を投げ渡してきました。
「それで地上に降りて来てる『神の船』まで飛べる。行ってこいっ。他のクソ使徒どもも集まってるはずだ」
「わかりました。じゃあ、準備はいいですねっ?」
「よくはないぞ? ふんっ」
「装備不十分デスっ」
「現地調達でいいって。とっとと行こうぜ?」
「では!」
私は金の宝玉に魔力を込めて発動させましたっ。私達は光に包まれてゆきます。
「俺様達は『クソ討伐』までは付き合わねーからなっ! やってられっかっ」
ありがたい神力の杖を振り上げながら、オーク・マックスの方は最後まで口が悪かったです・・まぁ、蘇生できるようですし、マバオの町は彼らに任せましょう。
転送された先は! 神力に満ちた飛行する大きなガレー船の甲板の上でしたっ。
甲板には逞しい使徒らしい神力を持つ方々が19名っ! さらに大半の方がそのお仲間らしい方々を数名ずつ連れていらっしゃいました。
「レルク!」
「レルクちゃんっ」
ノライオさんとモカミンさんもいました。私達は駆け寄ります。
「わぁっ、ついこの間なのに、お久し振りな感じです!」
「ふぇっふぇっふぇっ」
この笑い方っ。
「勢揃いだよっ。今回は大事ね。リタイア組も大体復帰が間に合ってるからそこは安心だけど・・」
「一体何が」
私が聞こうとしたその時っ! 眩しい光と共に神の船の甲板の中空にっ、白い貫頭衣に月桂樹の冠を被ったっ、神族らしき人々が現れました!
見た目は種族がバラバラな感じですが、地上の種族とは少しずつ特徴が違いますね。シレっとポポクレス神様も『神様っぽい』格好をして混ざってますっ。
「マッスルマッスル! おおっ、マッスルマッスル!!」
声を揃えてポポクレス神様がよくする謎のポーズまで揃えるたぶんマッスル神な神々っ。
「超ブレッシングなマッスル神のテーマぁっ、斉唱っ!!」
真ん中にいるレスラーマスクを被った神様(マスクド・ヒロシ神様?)が号令を掛けるとっ、やっぱりマッスル神だった神々は歌い出しました! 歌うんだっ。
『マッスル神のテーマ』
行け! 行け! マッスルっ!!
ダンジョンに 神力響き 善の力 照らしまくりっ
炸裂! マッスルブリッジっ! 完勝確定~
おお~ 運営費が無ければ~
我らの使徒の~ 後援は無理っさ~
マッスル神~ 超 尊し~っっ☆☆
「おお・・これは」
歌い切りやがりましたねっ!




