↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界一のリゾートオーナー、VTuberになる  作者: カルロス
VTuber始動

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/2

第2話 応募書類完成!

読んでいただきありがとうございます!


高評価、低評価、感想、酷評まで何でも歓迎しております(笑)


読者の皆さまの反応が作者の活力になります。


少しでも面白いと思っていただけたら、お気軽に感想など残していただけると嬉しいです!

「……できた」


 エデン・パレス、オーナー専用ラウンジ。


 エリオス・パンクラトルは、ノートパソコンの画面を見つめながら呟いた。


「……できたぞ、レイナ」


「はい」


「ついに……!」


「はい」


「完成したぞおおおお!!」


「おめでとうございます!」


 パチパチパチ。


 レイナ・ホイットモアが楽しそうに拍手を送った。


「いやぁ、長かった!」


「ええ。まさか自己PRにこれほど苦戦するとは」


「400字って難しいんだな!」


「世界規模の事業計画を立てる方が、400字の文章に敗北しかけるとは思いませんでした」


「言うな!」


 レイナが笑う。


 目の前には、ステラリンクの新人VTuberオーディションに提出する応募書類。


 そして、自己PR動画。


 数日前、エリオスの思いつきで始まった挑戦は、ようやく応募できる段階まで進んでいた。


「しかし、よくまとまったなぁ」


「何度も書き直しましたからね」


「最初の文章、ひどかったもんな!」


「ええ。『世界最大級のリゾート都市を経営しています』から始まる自己PRでした」


「事実なんだけどな!」


「事実だから困るんですよ」


 二人は笑った。


 結局、経歴は嘘をつかず、事業名や所在地は伏せることにした。


 経営経験は強みとして伝える。


 ただし、それ以上に、エリオス自身の人柄や、VTuberとして何をしたいのかを前面に出す。


「……まあ、これなら俺っぽいだろ!」


「ええ。少なくとも、退屈が嫌いな方だということは十分伝わると思います」


「それ、褒めてる?」


「もちろんです」


 レイナはにっこり笑った。


「では、動画も最終確認しましょうか」


「おう!」


 再生ボタンを押す。


 画面に映し出されたのは、カメラに向かって笑顔を浮かべるエリオスだった。


『どうもー! 初めまして!』


『33歳! 職業はリゾート経営者! 趣味はスナック菓子を食べながらVTuberを見ること!』


『そして現在、人生最大の問題に直面しています!』


『……自己PRって何を喋ればいいんですかね!?』


「ぶはははっ!」


 エリオスが吹き出した。


「我ながらひどい入り方だな!」


「ふふっ。でも、最初の十秒で印象には残りますね」


『ちなみに、これまで事業計画書や契約書は山ほど作ってきました!』


『でも、自分を売り込む書類って、こんなに難しいんですね!』


『というわけで!』


 画面の中のエリオスが、勢いよく指を三本立てる。


『俺の強みを三つにまとめてきました!』


『一つ! 面白そうなことが大好き!』


『二つ! 思いついたら行動する!』


『三つ! 失敗しても、それを面白くする!』


『ちなみに、三つ目については現在進行形で実践中です!』


『この動画が滑ったら、ぜひ笑ってください!』


『……いや、できれば合格させてください!!』


「ふふふっ!」


 今度はレイナが笑った。


「やっぱり、最後のところが好きです」


「だろ!?」


「ええ。ですが、これだけでは終わらないんですよね」


「おう!」


 動画はその後、エリオスが考えた企画や、同期と挑戦したいこと、VTuberを目指した理由へと続いていく。


 話し方は決して完璧ではない。


 だが、表情は豊かで、話題が次々と飛び出す。


 何より、本人が心から楽しそうだった。


 そして最後。


『俺は、見てる人だけじゃなく、一緒に活動する仲間も楽しめるVTuberになりたいと思っています!』


『経験はありません! でも、面白いことを考えて、それを実現するのは得意です!』


『よろしくお願いします!』


 動画が終了した。


「…………」


「…………」


「……どうよ?」


 エリオスが少しだけ得意げに尋ねる。


 レイナは頷いた。


「いいと思います」


「おっ!」


「最初の撮影で、背景にエデン島の空港を使おうとしたことを除けば」


「まだ言う!?」


「二回目はヘリポートでしたね」


「景色いいじゃん!」


「三回目は専用プール」


「映えるだろ!」


「四回目は島内列車を貸し切ろうとしていました」


「……それも駄目?」


「所在地を隠す気がありますか?」


「あります!」


「ふふっ。では、今の動画で決定ですね」


「おう!」


 エリオスは応募フォームを開いた。


 必要事項を確認する。


 書類を添付する。


 動画の提出先を指定する。


 そして、最後のボタンにカーソルを合わせた。


【応募する】


「……よし」


「はい」


「いくぞ!」


「どうぞ」


 カチッ。


 画面が切り替わった。


【ご応募ありがとうございました】


「…………」


「…………」


「……送っちまった」


「送ってしまいましたね」


「…………」


「…………」


「うおおおおおお!!」


 エリオスが立ち上がった。


「応募したぞおおおお!!」


「ふふふっ! おめでとうございます!」


「いやぁ! なんかテンション上がるな!」


「まだ応募しただけですよ?」


「分かってるって!」


 エリオスはソファに座り直した。


 そして、パソコンを眺める。


「……なあ」


「はい?」


「結果って、いつ来るんだ?」


「選考には時間がかかるでしょうね」


「……そうか」


「はい」


「…………」


「…………」


「……まだ?」


「まだです」


「メール来てない?」


「送信してから二十秒ですよ?」


「もう来てもよくね?」


「よくありません」


「くっそぉ!」


 レイナは声を上げて笑った。


 ---


 翌日。


 エデン・パレス、オーナー執務室。


「……よし!」


 エリオスは勢いよく立ち上がった。


「仕事するぞ!」


「おや」


 デスクで資料を確認していたレイナが顔を上げる。


「ずいぶん気合いが入っていますね」


「そりゃそうだろ!」


「何かありました?」


「オーディションだよ!」


「……ああ」


 レイナが頷く。


「日本への渡航に備えて、仕事を前倒しするんですね」


「そういうこと!」


「まだ書類審査の結果も出ていませんよ?」


「受かったときに慌てたくないじゃん!」


「ふふっ。準備がよろしいことで」


「だろ?」


 エリオスは腕を組んだ。


「それに、もし面接とか実技審査とかで日本に行くことになったら、しばらく島を空けるかもしれないしな!」


「ええ。日常業務はこちらで対応できますが、オーナーご本人の判断が必要な案件は先に進めておきたいですね」


「おう! 何でも持ってこい!」


「……何でも?」


「おう!」


「本当に?」


「もちろん!」


 レイナは一瞬だけ考えた。


 そして、にっこり笑った。


「では、ちょうどよかったです」


「ん?」


「確認していただきたい書類がありまして」


「おっ、いいねぇ!」


「少々量がありますが」


「任せろ!」


「では、運びましょう」


 レイナが連絡を入れる。


 数分後。


 コンコン。


「失礼いたします」


 スタッフが入ってきた。


 台車を押して。


「…………」


 エリオスは台車を見た。


 その上には、分厚いファイルが積み上がっていた。


「…………」


「…………」


「……ほう」


 エリオスは頷いた。


「結構あるな」


「ええ」


「まあ、これくらいなら――」


 コンコン。


「失礼いたします」


 二台目。


「…………」


「…………」


「……お?」


 さらに。


 コンコン。


「失礼いたします」


 三台目。


「…………」


「…………」


 エリオスはゆっくりとレイナを見た。


「……なあ」


「はい?」


「何これ?」


「道路工事関連の書類です」


「……道路?」


「ええ。島内の道路整備に関するものですね」


「……なるほど」


 エリオスは再び書類の山を見る。


「……で?」


「はい?」


「……何枚?」


 レイナはタブレットを確認した。


「約三千枚です」


「…………」


「…………」


「……さんぜん?」


「はい」


「……三千枚?」


「はい」


「…………」


「…………」


「……レイナ」


「はい?」


「俺、さっき何でも持ってこいって言ったよな?」


「おっしゃいましたね」


「……取り消せる?」


「ふふっ。もう運んでしまいました」


「くっそぉぉぉ!!」


 スタッフが思わず肩を震わせた。


 レイナは口元を押さえている。


「……お前、絶対楽しんでるだろ!」


「少しだけ」


「少し!?」


「ふふふっ!」


 エリオスは深いため息をついた。


「……まあ、いいか」


「おや?」


「どうせやらなきゃいけない仕事だしな!」


「ええ」


「よっしゃ! やるぞ!」


 エリオスは袖をまくった。


「三千枚だろ!? かかってこい!」


「頼もしいですね」


「任せろ!」


 レイナは最初のファイルを差し出した。


「では、こちらから」


「おう!」


 エリオスはファイルを開いた。


【道路改良工事 施工計画書】


「……ふむ」


 ページをめくる。


【工事概要】


「……なるほど」


【施工方法】


「……うん」


【工程表】


「……ふむふむ」


【安全管理計画】


「……うんうん」


【品質管理計画】


「…………」


【環境保全対策】


「…………」


【交通規制計画】


「…………」


 エリオスは顔を上げた。


「……レイナ」


「はい?」


「これ、一冊目?」


「はい」


「……あと何冊?」


「まだたくさんありますよ」


「…………」


「…………」


「……よし!」


 エリオスは再び書類に向き直った。


「集中だ!」


 ---


 一時間後。


「……次!」


 二時間後。


「……この変更理由、説明が足りなくね?」


「確認します」


 レイナが関連資料を開く。


「……確かに。こちらは担当部署に差し戻しましょう」


「頼む!」


 三時間後。


「……ここの数値、前の図面と違うぞ」


「どちらでしょう?」


「ここと、こっち」


「……あ、本当ですね」


「施工条件の変更か?」


「確認してみます」


「おう!」


 仕事が始まれば、エリオスは有能だった。


 ただ書類をめくり、機械的に印鑑を押しているわけではない。


 重要な数字を確認し、契約条件を照合し、必要があれば担当者に問い合わせる。


 疑問が残る書類は保留。


 問題のない書類には、所定の箇所へ押印する。


 判断は速く、的確だった。


 レイナも隣で資料を整理し、確認が必要な項目を補足していく。


 二人の連携は、長年積み重ねてきたものだ。


 ……ただし。


「……なあ」


「はい?」


「今、何枚目?」


「確認済みは八百四十二枚ですね」


「…………」


「…………」


「……まだ三分の一も終わってねえ!」


「ふふっ。順調ですよ」


「順調なのか、これ!?」


「ええ。かなり速い方です」


「マジ?」


「はい」


「……ならいいか!」


 エリオスは次のファイルを開いた。


 ペラッ。


 ペラッ。


 確認。


 押印。


 ペラッ。


 確認。


 押印。


「…………」


 ペラッ。


「…………」


 ポン。


 ペラッ。


「…………」


 ポン。


 やがて。


「……なあ、レイナ」


「はい?」


「昨日さ」


「はい」


「俺の応募書類、採用担当者が困るだろうなって話したじゃん」


「ええ」


「……今なら、ちょっと気持ち分かるわ」


 レイナが顔を上げた。


「……と、いいますと?」


「いやさ……」


 エリオスは目の前の書類を見つめた。


「大量の書類を確認してると、たまに変なのが混ざってくるんだよな」


「ええ」


「数字が違ったり、説明が足りなかったり、そもそも何言ってるのか分かんなかったり」


「そうですね」


「で、そういうのがあると、そこで手が止まるんだよ」


「……なるほど」


 エリオスは深く頷いた。


「……採用担当者も大変だな」


「ふふっ」


「何百人、何千人って応募者がいたら、全部見るんだろ?」


「そうでしょうね」


「そこに、海外で巨大リゾート経営してますとか書いた33歳の男が来るわけだ」


「……ええ」


「しかも配信経験ゼロ!」


「……ふふっ」


「そりゃ手止まるわ!」


 レイナが吹き出した。


「ふふふっ! そうですね!」


「絶対『何だこいつ!?』ってなるだろ!」


「なるでしょうね!」


「俺だったら二度見するわ!」


「私もです!」


 二人は声を上げて笑った。


 エリオスは、しばらく笑ったあと、再び書類を見つめた。


「……よし」


「はい?」


「せめて、俺の応募書類は読みやすくてよかったな」


「ええ。そこは頑張りましたからね」


「だよな!」


 そして、次の書類を手に取る。


【道路改良工事 変更契約関係書類】


「…………」


「…………」


「……レイナ」


「はい?」


「これ、さっき見たやつじゃね?」


「別工区です」


「…………」


「…………」


「……マジかぁ」


 レイナは小さく笑った。


「エリオス」


「ん?」


「あと二千枚ほどです」


「言うなあああああ!!」


 その叫び声は、エデン・パレスの執務室に響き渡った。


 世界最大級のリゾートを経営する男。


 その日の彼は、世界のどんな経営者よりも切実に願っていた。


 ――どうか、俺の応募書類だけは、担当者に優しく読んでもらえますように。


 もっとも、その願いが届くかどうかは、まだ誰にも分からない。


 ステラリンクの採用担当者が、彼の応募書類を開く日まで。


 もう少しだけ、時間が必要だった。

面白い、続きが気になると思っていただけたら、

評価・ブックマーク・いいねなど頂けると嬉しいです!


あなたのワンクリックが作者のモチベーションにつながります。


評価はこの下の星マークをクリック(タップ)するだけ!

星一つからでも大歓迎です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。