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流され系魔女の無人島ライフ  作者: 白月らび
本編
18/373

お魚を切ったら中から元気な女の子が!

2人でのんびり寛ぐ前からムニエルは出かけていた。


そしてお魚が暴れて、やっつけたらその上になぜか誇らしげに乗っている。


………まさか………。


私はムニエルの横にフワリと着地した。


「おつかれ、ムニエル。このお魚どこで見つけたの?」


ムニエルは南の方の沖を目で指した。


「あっちの方にいたんだー。もしかしてずっと追いかけ回してなかった?追い込み漁ってやつかな」


ムニエルはコクリと頷いた。


ほっほーう………。


こんな身近にいたんだ、アザレアを泣かした真犯人。


「そういえばさっき、遠くでものすっごく大きなお魚が暴れて、その影響で島を飲み込むくらいの津波が起こって、アザレアが怖がって泣いちゃったんだけど……何か心当たりあるかなぁ……ムニエルさん?」


一応他にも心当たりがないか、笑顔で問いかけてみた。


最後の方はなんか声が低くなっていった気がする。


ムニエルは少し考えて……ビクッっと何かに気づいた様子。


「あらぁ、やっぱり知ってるんだぁ………一体どういう事かなぁ…?」


こっちを向いて、ガタガタ震えるムニエル。


やがてペコリと頭を下げ、踵を返して逃げ───


 がしっ


ムニエルの尾をがっしり掴んだ。


「どこに行くのかなぁ?」


に が さ な い


「島を壊滅させかけたのは、私がなんとかしたから大目に見てあげる。でもアザレアを本気で怖がらせたのは………ねぇ?」


ムニエルの震えが段々と大きくなっていく。


「だいじょーぶよぉ、家族であるアナタを食べようとはしないから。だから………」


私は魔法で自分の身体を強化、足を軸に回転して、ムニエルをぐるぐる振り回し────


「せめてアザレアへのお詫びにあの子が喜ぶものでも何か手に入れてこい!このバカヘビいいいぃぃぃぃぃぃ!!」


叫びと共にムニエルを思いっきり遠くに放り投げたのだった。


「まったくもう!」




「さーて、これだけ大きいと、いくつかに分けて冷凍保存がいいかな」


早く終わらせてアザレアを慰めてあげなきゃだし、ちゃっちゃと始めちゃいますか。


「むー、魚をさばく方法は自分で考えながらやるしかないか、どうせ頭押さえるとか無理だし」


まずは全体を砂利浜まで持ってきて、風の刃で頭を切り落とす。


頭って食べれるとこそんなに無いけど、一応保存しとこうかな。


「よいしょ、こおりつけー」


強化魔法と重力魔法を駆使して頭を持ち上げ、そのまま氷魔法で急速冷凍保存。


「置いておく場所は……あそこでいいか」


平地の近くには砂利浜や岩場があるのでそこに冷凍して置いていくことにしよう。


「なんだか今日は魔法使いまくりで疲れそうだなぁ……。食料確保だと思って我慢しよう」


ボヤきながら頭を置き、固定するのと溶けにくくするために、しっかりと氷漬けにしておいた。


次はワタを取ろうかな……と考えながら戻ると……。


「えっ……?」


頭を無くしたお魚の断面の前に、女の子が2人転がっていた。


「うぅ………酷い目にあったのです………」


「一体何が起こったんですの?……あたた、まだ頭がガンガンしますわ……」


出てきた2人の体は淡く光っている。


薄く魔力障壁を纏っている様子。


っていうか……。

マーメイドとサキュバスが一緒にお魚から出てくるってなかなか無いよね?


「あの~……」


なんだかよくわからないコンビに、私はおずおずと声をかけてみた。


「えっ? あ、はい、こんにちはです」


私に気づいたマーメイドさんが挨拶してくれた。


マーメイドさんは黒いロングヘアーに青い瞳。


上半身は大きな胸を包むように人間製のビキニを着けている。


結構前から水棲族の間では人間の衣服がオシャレなファッションらしい。


水の中で暮らすので、水着が特に好まれるのだとか。


下半身は水色のお魚で、ヒラヒラした美しい尾ひれを持っている。


そしてもう1人のサキュバスさんは、私の方を見てなんだか固まっている。


肩まであるウエーブがかった金色の髪と金色の瞳。


頭には2本の曲がった角。


背中には悪魔の羽があるはずだけど今は不要なので体の中にしまってある様子。


挑発的な胸元が開いた黒いハイレグワンピースを着てニーハイソックスにブーツと、男を誘う気満々の格好をしている。


もちろん、ないすばでぃ。


まぁそういう種族だしなー、見た目に関してはちょっと羨ましい。


でも、あれ?この人……。


「えーっと、こんにちは。つかぬ事をお聞きしますけど、貴女方はどうして───」


「ドッドドドドロシー様!ドロシー様じゃありませんこと!?」


私の質問を遮って、サキュバスさんが驚きの声をあげた。


あーやっぱり。


「アタシ達を助けてくれたのはドロシー様だったのですね! こんな風に会えるだなんて思ってもみませんでしたわ!」


「まぁまぁ落ち着いて」


興奮するサキュバスさんをなだめていると。


「お二人はお知り合いなのです?」


「まぁ以前に少々」


「お知り合いだなんて! アタシは前にもド───」


「はい一旦ストップ」


私は喋ろうとするサキュバスさんを止めた。


話が進まないし、私は先にやるべき事がある。


まぁその前に少しだけ確認。


「手短に聞きますけど、お魚から出てきたってことは、もしかして2人は食べられたんですか?」


「はい、お恥ずかしながら泳いでいたら後ろからパクっとされたのです……」


「アタシは海の上で力尽きてしまい、落下中にお口でキャッチされましたの」


おおう、丸呑みとな。


「じゃあおふたりも初対面だったってことですか?」


「その通りですわ。アタシの方が先でしたので、水中呼吸と魔力障壁で溶けないように体力の回復を図っていたらこの方が入ってこられたので、とっさに守って対策を練っていたんですの」


「その節は感謝なのです。そしてそのまま機を伺おうとした矢先に、魚が大暴れを始めまして……」


「大きな衝撃で気を失い、今しがた気がついた訳ですの」


うーん、だいたい把握。


「まー無事でよかった、事情はわかったから2人はそのへんで休んでてくれます?私は先にお魚の解体したいので」


「は、はい。わかり………え?お魚の──」


「解体……?」


私が見てる先……2人は後ろを振り向いて、横たわったそれを見上げた。


『えええええええええええええ!?』


島に私とアザレア以外の声が響くって、なんだか新鮮だなぁ。




お魚のお腹を開いてワタを取り除き、魔法で細かくしてから海に還す。


これは近海のお魚の撒き餌。どうせ自分たちでは食べられないしね。


お腹の中を海水で流して、次は大きくて邪魔なだけのヒレや尾を切り落とす。


「うーん、三枚おろしにしようと思ってたけど、これは輪切りにする方が現実的かなぁ」


ちなみに先程お魚から出てきた2人は、少し離れた所で口を半開きにして私の作業を見ている。


ちなみにマーメイドさんは陸では上手く動けなかったので、私の水と重力の魔法で作った水球に浸かって浮いてもらっている。


ここまで大きい魚は珍しいとはいえ、見られすぎるとなんだかやりにくい…。


「輪切りにしても相当でっかいから、凍ったものをそのまま切って少しずつ使っていく感じでいいよね」


だいたい方針が決まった所で、巨大な風の刃を使い切っていく。


断面を見ると、かなりプリプリしてて美味しそう。


ごはんが楽しみである。


あとはそれぞれ瞬間冷凍&氷漬けで頭のそばに置いておく。


ついでに数日分の切り身を冷凍状態で切り取っておいた。


「はぁ~終わった終わった~つかれたー!」


あんまり時間は経ってないと思うけど、あんな巨大なお魚を切り分けるのは一苦労。


はやく切り身もっていって休みた~い。


ま、その前に。


「お疲れ様ですわ」


「おっお疲れ様なのです」


横で見ていた2人が声をかけてきた。


この2人も連れて行こう。


「お待たせしました。じゃあ小さいけど私の住処に行きましょうか」


「はい、お願いしますです」


「すみません、お邪魔致しますわ」


住処はすぐそこ、少しの木を挟んでるだけで目視できる場所にある。


凍った切り身を生け簀の横に置き、直ぐに融けないように簡単な結界で覆っておく。


これでよしっと。


「あ、そこで待っててくださいね、その木に座って楽にしていてくれて結構ですよ」


「ありがとうございます。休ませていただきますわ」


「マーメイドさんも降ろしましょうか?」


「あ、はい、お手数おかけしましたのです」


マーメイドさんを木の上に降ろし、私は部屋の中へ向かった。

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