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最終話【吸血鬼のその後】

朝日さんが亡くなってから、二年の月日が経った。

  

あの日には謎が多く、朝日さんが死んだ日に何故かマスターも消息不明になっていた。朝日さんに託された意志を無駄にしないように、私達は新たにギルドマスターを決め、真吸血鬼と戦い続けている。

 元々無表情だった私はあの日以降、尚更無表情になった気がする。


「もうこんな時間...早くギルドに行かなきゃ」


 ベッドの脇に置かれた、鮭をくわえてる熊のぬいぐるみの頭を軽くポンポンと叩き、急いで外に駆け出した。

今日はギルドに重要な用事があるわけではないが、それでも遅刻するのは何だか気持ち悪くなる。

 そもそも時間に厳しい私が、遅刻ギリギリまで遅れたのにはちゃんと理由がある。

忙しくて朝日さんの墓参りに行けていなかったのだけど、今日は時間に余裕があるので墓参りに行こうと考えているのだ。

 それで着ていく服を選んでいたら、この時間になってしまったというわけだ。


「あれっ、珍しく遅いね! ミツキ」


 ギルドに到着すると、楓さんがいつもどおりの明るい笑顔で迎え入れてくれた。

今私達のギルドのマスターは楓さんだ。何故楓さんがギルドマスターになったかというと、私が楓さんをギルドマスターに推薦したからだ。

 ギルドの雰囲気が明るくなればいいなという軽い気持ちで推薦したんだけど、思いの(ほか)ギルドメンバーから賛同を得ることができたので、楓さんがギルドマスターに就任した次第だ。


「はい、遅れてすみません」


「いや、怒ってるわけじゃないから気にしなくていいよっ」


 私は楓さんに軽く一礼をして、書類室の方へ向かった。

今日の仕事は、真吸血鬼の出現した地域を書き込むだけなので、五分もしないで終わる軽い任務。五分後、一通り書き終えたので朝日さんの墓参りへと向かう事にする。

 外に出るとジャックさんが依頼に向かう途中だったみたいで、普段あまり見ない様な真剣な表情で歩いていた。

 集中してる所を邪魔するのは申し訳ないので、バレないように通り過ぎようと思ったのだけど、たまたまこちらを見たジャックさんと目が合ってしまう。


「今日は朝日の墓参りに行くんだっけか? 俺の分もよろしく頼むぜ」


「はい。了解しました」




 身寄りの人が居ない朝日さんのお墓は、ギルドの私有地に立てられている。

ギルドから歩いて三時間と遠いが、この地区付近ではギルドメンバーが目を光らせているので、真吸血鬼に荒らされる心配が無く安心できる場所だ。


 三時間歩き続け、ようやく朝日さんのお墓までたどり着いた。

ここ最近に誰かが来ていたらしく、朝日さんのお墓は凄く綺麗になっている。

 私は目を(つぶ)って、墓石の前に膝をつけてしゃがみ込む。

そしてこの二年間で伝えたかった事を口に出して呟いた。


「朝日さん、貴方が居なくなって二年が経ちました。私は朝日さんの意志を継いで、真吸血鬼を倒す為に毎日を過ごしています。今はまだ真吸血鬼を絶滅させる事は出来てませんが、必ず吸血鬼世界を平和にしてみせます。なので心配しないで下さい、安らかに眠っていて大丈夫です」


 朝日さんのお墓は、私の話を優しく聞いてくれてる気がした。

石だからそんなわけないのに...でも、もしかしたら朝日さんが聞いてくれてるのかもと思ってしまう自分が居る。

 甘えたら駄目だ。真吸血鬼を滅ぼすまでは立ち止まるわけにはいかない。

その場を立ち上がり、墓石に背中を向けて歩きだす。


「朝日さん、真吸血鬼を倒したらまた来ます。待っていて下さい」


「ミツキ、もっと笑えよ」


「え?」


 声が聞こえたので、墓石の方へ振り返るが誰も居ない。

朝日さんの声が聞こえた気がしたんだけど...


「もっと笑えか...。そうですね、少しは笑った方がいいですよね...ふふっ」


 


 そのまま私は笑顔で歩きだした。

もう振り返る事は無い、朝日さんの意志を継ぐ為に前を向いて歩き出す。



「来てくれてありがとうな...ミツキ」



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