EP 9
空断の輝き! 聖獣剣ゴッドブレード!
『死ねェェェッ!! 辺境のゴミ共ォォォ!! 大陸破壊砲「マハ・キャノン」、発射ァァァッ!!!』
要塞バベルの底面から、世界を終わらせる光が放たれた。
暗緑色の瘴気を纏った極太のレーザーが、大気をプラズマ化させながら、真っ直ぐにガオガオンと……その後方にあるポポロ村へと迫り来る。
直撃すれば、大陸の地図が確実に書き換わるほどの絶対的な熱量。
「……来やがったな、規格外のクソバグが。だが、俺たちのシステムは絶対に落ちない!」
俺はメインコンソールに両手を叩きつけ、ガオガオンの全魔力リソースを下半身へ一極集中させた。
「ルナ! 青龍の魔力バイパスを玄武ユニットに直結させろ!」
「はいですわ! わたくしの魔力、全部持っていってくださいな!!」
「リーザ、シールドの耐久値を限界まで引き上げろ!」
「任せてくださいぅ! 喉が枯れるまで歌いますぅ!! ♪絶対無敵の〜五円のバリア〜!!」
「玄武シールド、最大展開!!」
ガオガオンの前面に、ルナの無限魔力とリーザのバフによって幾重にも分厚く圧縮された、緑色に輝く超巨大な亀甲型のエネルギー防壁が展開される。
ズゴォォォォォォォォォォォンッッ!!!
マハ・キャノンの光芒が、玄武シールドに激突した。
その瞬間、世界から一切の音が消え、視界が純白に染まった。
コックピット内に、かつてないほどの激しい振動と、アラートの嵐が吹き荒れる。
『警告(WARNING)! シールド表面温度、計測不能! 装甲に亀裂が発生!』
『グォォォォッ!! マスター! 凄まじい圧力だ! 我が脚部が……押し戻される!!』
空中で踏ん張るガオガオンの巨体が、レーザーの圧倒的な推力によって後方へとジリジリと押し込まれていく。
このままでは、シールドごと押し潰されてポポロ村に直撃する。
「させねえよ……! お前らの理不尽な暴力で、俺たちの日常を奪わせるか!!」
俺の脳細胞がフル回転し、マハ・キャノンのエネルギー流動をミリ単位で解析する。
敵は全力でビームを照射し続けている。つまり、要塞バベルのメインシステムは現在、「砲撃」に全リソースを割いており、「防御」が完全に疎かになっている状態だ。
「見えたぞ、致命的なセキュリティホールが……! 今だガオン!!」
俺が叫ぶと同時。
ガオガオンの胸部コア——巨大な黄金の獅子の顔が、マハ・キャノンの光の奔流の中で、大きく顎を開いた。
「『獣王大咆哮』!!」
ガァァァァァァァァッッ!!!
マハ・キャノンの光を切り裂き、指向性を持たせた極大の『魔力電磁パルス(EMP)』が、レーザーを逆流するように要塞バベルへと直撃した。
『な、なんだと!?』
要塞の司令室で、商人が叫ぶ。
直後、バベルの内部回路に致命的なショートが発生した。
ビリビリィィッ! と巨大要塞の表面にスパークが走り、無敵を誇っていたマハ・キャノンの光が、嘘のようにフッと途絶えた。
さらに、要塞を覆っていた分厚い魔力障壁すらも、完全に消失する。
「フリーズしたな。……さあ、反撃の時間だ!!」
俺はコンソールの最深部に格納されていた『最終武装』のロックを解除した。
ガオガオンの右腕(白虎)と左腕(青龍)の間に、四神の力を束ねた超高密度のエネルギーが収束していく。
虚空から引きずり出されたのは、全高25メートルの機神の身の丈をも超える、圧倒的な光を放つ巨大な大剣。
「キャルル! モーション・トレース、限界突破だ! お前の月影流で、あのクソ要塞を叩き斬れ!!」
「待ってたわよォォッ!! ドリンクバーの恨み、その身に刻み込みなさい!!」
キャルルが白虎シートで、架空の大剣を上段に構え、渾身の力を込めて振り下ろす体勢に入る。
「ルナ! 剣身に全魔力をエンチャントしろ!!」
「ええっ! 邪魔な障害物は、綺麗にお掃除して差し上げますわ!!」
「リーザ! 最後だ、全ステータスを剣の切先に集中させろ!!」
「はいですぅ!! これが私の、最高のアンコールですぅぅ!!」
3人のヒロインの思い(食い意地と怒りとアイドル魂)が、特A級エンジニアのアルゴリズムによって完璧な一本の『刃』へと最適化される。
『フハハハッ!! 思い知れ、過去の遺物よ!! これが我ら、ポポロ村の真の力だァァァッ!!』
「最終コード実行!! 『聖獣剣 ゴッドブレード』!!!」
ガオガオンが銀色の翼をはためかせ、急加速。
光の巨大剣を大上段に構え、機能停止して無防備となった浮遊要塞バベルの真正面へと肉薄する。
「一刀両断だァァァァッ!!!」
音速を超えた太刀筋が、夕暮れの空に巨大な光の十字を刻み込んだ。
何百メートルもある分厚い岩盤と古代オリハルコンの装甲を、ゴッドブレードが一切の抵抗なく、豆腐のようにスッ……と通り抜ける。
数秒の、完全な静寂。
ズレ……ズレズレズレェェェ……ッ。
空に浮かぶ巨大な要塞バベルが、斜めに真っ二つにズレていく。
『あ、あ、あああぁぁぁ……バカな、私の、私の要塞がぁぁぁっ!!』
商人の絶望の叫びをかき消すように、中心の魔力炉心から膨大なエネルギーが溢れ出し——。
ピカァァァァァァッッ!!!
ドゴォォォォォォォォォォォォォンッッ!!!
空中で、二つ目の太陽が生まれたかのような超巨大な爆発が弾けた。
衝撃波が雲を散らし、夕焼け空に一輪の巨大な花火が咲き誇る。
その爆炎を背にして。
銀翼を輝かせ、巨大な光の剣を振り抜いた姿勢のまま空中に佇む【聖獣機神ガオガオン】の姿は、神話の一片のように美しく、そして絶対的だった。
『——システム通知。対象の完全沈黙を確認。空域の敵性反応、ゼロ。……オールクリア』
ARグラスに表示された緑色の文字を見て、俺は深く、深く息を吐き出した。
「……ミッション・コンプリートだ」
コックピット内に、一瞬の静寂が降りた後。
「「「やったぁぁぁぁぁっ!!!」」」
キャルル、ルナ、リーザの3人がシートから飛び出し、抱き合って歓喜の声を上げた。
俺はそんな彼女たちを振り返り、ヘトヘトになりながらも、口角を上げて笑った。
「お前ら、よくやった。……さあ、帰るぞ。ルナキンのドリンクバーが俺たちを待ってる」
大空の決戦は、ポポロ村の完全勝利で幕を閉じた。
残すは、地上で待つ極上の祝勝会だけだ。




