第30話 完全決着
人は超能力を宿したとしても独善的な事にばかり使ってしまう、人というのは不完全で悪意に満ちた存在。超能力はその象徴。だが誰かの事を想う力はそれを上回る、誰かを信じ、その誰かのために尽くし、その誰かも自分を思ってくれる。それこそが超能力よりもはるかに素晴らしい力だろう。その心こそが超能力に対抗できる真の力、私はそれを相想力と名付けた。
消えかかっていた足利の姿は一瞬にして元に戻った。
「ん?死ぬ直前に自我が一時的に復活したのか?」
足利は黙って立ち上がった。
「え?」
足利は品野に歩み寄る。
「気持ち悪い…!!」
品野は超高温度熱線を放射した。
しかし足利には効かなかった。
品野はようやく気がついた、足利なら意識が戻った瞬間から足利の容姿に変化があった事に。足利の片目は赤く発光し、髪の色が半分白くなっていた。足利が変身したのか、姫の花の特殊な光源がそう見せているのかはわからない。しかし、足利は銀河形態へと覚醒した事だけは確かだ。
品野は火の玉を連続で発射する、ありとあらゆる能力で攻撃するがどの能力も通じない。
「どういう事…?」
「よう、驚いたか?」
「喋った…?まさか自我が復活したっていうの?はぁーーー???あり得ないでしょ、他人の記憶を植え付けられて自我を保つなんて。」
「あのさぁ、お前。俺の力が本当に不死身の能力だと思ってたわけ?」
「え?」
「俺の肉体は俺の意志に関係なく回復する、だけど一度意識が切れるような致命傷を負えば死ぬって事くらいはわかるよな?」
「そういえばあんた。頭部にダメージを喰らうと意識の復活に時間がかかってたね、まさか…!?」
「そうだよ、俺は致命傷を負うたびに死んでいたんだ。何回死んだかわからねーよ。何度も死から復活している俺の自我が他人の記憶を埋め込まれたくらいで消えるわけねえだろ!!!」
「うっ…!!!」
足利は走り込む。
「くっそ、こうなったら未来視だ!!」
しかし目には何も映らない。
「何も見えない、てゆーか私が植え込んだ私の記憶もあいつの頭から無くなってる!?私の能力全部無効化してるわけ!?どうなってんの!?」
再び足利に目をやると、足利の横にうっすらと宇月の姿が見えた。本来なら肉体を離れた意識を視認する事は不可能だが、既に人知を超えた品野にはそれが見えた。
「神戸宇月…!?」
「え?」
「足利くん、あの子には私が見えてるみたい。」
「マジかよ。」
「会話してる…!?」
「そうだよ、私と足利くんは」
「互いに心が通じ合ったんだ。」
「そうか、神戸宇月の解放された意識がなんらかの理由で消滅せずに漂い、足利の意識と肉体の存在が不安定化した時に意識が融合しやがったのか。」
品野は先程の1000倍の威力の超高温度熱線を放つ。
「うわ!!マジかよ!!まだこんな事できるの!?」
「大丈夫足利くん、私も一緒に受け止めるから。」
「おう。」
足利は熱線を分解した。
「はああ!?もうめちゃくちゃじゃんこいつ!?」
足利は再び歩み寄る。
「こ、来ないでよ!!」
「お前が人間の領域をとうに超えている事はよくわかった、それもこれも全部、意志のある宇宙のせいなんだろ?」
「違う、これは私の意志だ!全部私が望んだ事だ!!」
「…お前も大変だったんだな、お前の記憶を読んでよくわかったよ。あんな目に遭えば全人類を殺したくなるよな。」
「は…?」
「お前がどうしてこれだけの事をしたのか、大量の人間が死に、苦しむような世界にしたかったのか、理解できたよ。」
「ほ、ほんと…?」
「ああ…。」
「うっ、気持ち悪、何お前…。」
「人間にはうざい奴がたくさんいる、そしてそいつらの存在はどうにもできない。人生の障壁となる。だけどな、本当に殺すのはダメだ。お前の気持ちは理解できたし、過去には同情はする、だがお前の行動に共感はしない。ぶっちゃけやりすぎ。」
「散々人を殴ってきたてめーに言われたくねえよ!!!」
「…もう休め、俺が倒したいのはお前じゃない。」
「あっ……」
品野は意識を失い、足の力が抜ける。足利は倒れる品野の頭の少し上あたりの空間に掴みかかり、透明な何かを引き抜く。
その透明な何かは人の声なのかただの雑音なのかもわからないような音を放っていた、うめき声なのだろう。
「お前が意志のある宇宙とかいうのだな?えぇ!?」
足利は実態の無い意志のある宇宙を固体化させ掴みかかり品野から引き剥がしたのだ。足利の言葉を聞き実体化した意志は小さく頷いた。
「全部お前がそそのかした事もわかってんだよ、人様の星で随分好き勝手やってくれてじゃねえか。いいか?もう2度と地球に干渉するんじゃねえぞ、またお前が地球に来たらまた俺が倒しに来るからな。俺の寿命を待てばいいと思ったな?俺が死んだとしてもお前が地球に来れば俺はお前を倒しにきてやる、何度でも痛めつけてやるよ。」
意志は何も言わない、追い詰められて弱り切っているのだ。
足利はそれに構わず意志に思い切りパンチをした。
そのパンチは銀河を切り裂くほどのエネルギーだった。
「……うわっ!!」
「ど、どうしたのおせちちゃん…!?」
「使える…能力が…」
「よ、よし…じゃあ今すぐ姫の花を閉じるんだ…!!」
「足利さんがまだ…」
「こうしてる間にも被害者は出てるんだ、流星くんが戻ってくる保証もない、今すぐやるんだ!」
「長島さんはどうしてそんな…、あっ…。」
おせちは長島の表情を見て叱咤するのをやめた。
「わかった…足利さんの言う通りにする…。」
おせちは涙を堪えてバリアを張った。
姫の花の開けた穴は閉じられ、意志のある宇宙と地球の接続は完全に断ち切られた。
姫の花から脱出する方法はなかったが、空間が閉じられた事を足利は悟った。
「ちゃんという通りにしたんだな、偉いぞおせち…。」
空間に白い光が入り込み、足利と共に空間そのものが消えかかる。
「宇月…。」
「やったね、足利くん!」
「あぁ、やっと全部終わったんだ…。」
「ねえ足利くん、超能力が無くなったら世界は平和になるのかな?」
「超能力がある世界より遥かにマシさ。」
「そうだね。」
足利と宇月の姿は白い光に完全に包まれ、消滅した。
「おせちちゃんは悪くない、君は流星くんと世界を救ったんだから…。」
「でも…でも…!!!」
おせちと長島も白い光に包まれ、消滅した。
姫の花があった場所から光は広がり、やがて地球上のもの全てが光に飲み込まれた。




