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ストーリーテラー5

「田中さん!何やってるんですか」

 俺の目に池にしりもちをついている田中 栄太が目に飛び込んできた。髪からぽたぽたと雫が足れている様子から勢いよく池に突っ込んだのであろうことが想像できる。

 ふふふっと背後で笑い声がした。俺が振り向くと詩島 透子がなにやら小型のノートに書き付けているのが見えた。

「いつか、使えるかもしれない」詩島 透子は呟いた。ノートと田中 栄太を視線が忙しなく往復する。小説のネタとして書き留めているのだろうか。目の前で人が池に落ちているのに真っ先に取る行動がそれとは、まるで書くことだけをインプットされたロボットのようだ。


「あんたには、人の心ってものがないのか!」

 俺が詩島 透子に感じていた気持ちが耳に飛び込んできて再び振り向いた。田中 栄太が、自分を見下ろす佐藤 梅子を睨みつけるようにして叫んでいた。感情のままに水面をたたき付け、バシャンと撥ねた水が田中 栄太を更に濡らす。

「電話中に殴りかかって来るのは人なんでしょうかねぇ?」

 冷ややな笑顔をその顔に張り付けて、佐藤 梅子が言った。


「ふざけるな!あんたが今、その電話の相手に言った言葉を取り消せ。それで筆を折ったらどうするんだ」

 すっかり頭に血が上っている様子の田中 栄太。

「この程度の事で筆を折るなら所詮その程度の気持ちでしょう。筆を握りつづけることが幸せとは限りませんから」

 佐藤 梅子は静かに言うときびすを返した。ゆったりとした歩みで俺の目の前に来ると懐から茶封筒を取りだし、差し出す。

「今日はこれでお願いしたいことはおしまいです」

 俺が封筒を受けとると、佐藤 梅子は視線をスッと田中 栄太に向ける。さっさと連れて帰れと、その表情が物語っていた。

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