カレンダー
なんとなくカレンダーを見ると、今日の日付が赤い丸で囲まれていた。
全く覚えがない。
大抵の予定は携帯電話や手帳に書き入れてしまうので、カレンダーに丸なんて付けるはずがない。
記念日でも休日でもない今日にどんな理由があるのだろう。
一人暮らしだから、私以外にこんなことをするのはナナシかおばけくらいだろうか。
念のために二人にも聞いてみるがどちらも自分はやっていないと首を振る。
それじゃあ仕方がない。気にはなるがどうしようもないので忘れたふりをしてやり過ごすことにしたが、逆に意識して妙にそわそわとしてしまい何も手につかない。
そうだ、もしかしたら過去の私なら知っているかもしれない。
急いで半年前の私に電話を掛ける。
もしもし、と尋ねると全く同じ声でもしもしと返ってきた。自分と繋がっていることを愉快に思いながらも、早速カレンダーの件を尋ねる。
「さあ、何の日だろうね。何も覚えてないや」
少しだけがっかりしたが、これでこの半年以内に丸が付けられたことが証明された。
「待ってて、覚えていられるようにメモしておくから」
電話越しにがさごそと私が動く気配がし、しゅっと紙の上を何かが滑る音がした。
私はこの音を知っている。学校の先生が、答案用紙に赤ペンで丸を付ける音だ。
電話が切れた後、すっきりともやもやの間でカレンダーの丸を花丸へとランクアップさせた。