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10.素晴らしい日々は力あふれ……

一人暮らしを始めて半年、晩秋から冬をまたいで春にかけての半年間については、私と『篤史くん』にとっての人生最高の思い出の一つとなった。


とにかく楽しくて、とにかく幸せだった!


家を出る前後に合わせて、仕事を8時間勤務のフルタイムにしてもらったけれど、何の苦労もなかった。

だって家事がほとんどないんだから!


ワンルームの狭いアパートでしなきゃいけない事なんて全部合わせても30分で終わる。掃除も洗濯も料理も圧倒的に簡単で、今までの苦労は何だったんだろうとむしろがっくりするくらいだよ。


最初の一か月だけは支出が大きくてひやひやしたけれど、そこさえ過ぎれば余裕の毎日だった。


『篤史くん』はIHコンロにもめげずに次々と美味しい料理、新しい調理方法、素敵なご飯を開拓していき、それらを口にできる私は幸せを大いに享受した。


私は一人暮らしを助けるライフハックを色々伝授した。

例えば一人暮らしのご飯はいっぺんに2食分、3食分をまとめて作ってしまえばよい。

冬の間は冷蔵庫がなくても、置く場所さえ気を付ければ1日、2日くらい悠々で持つ。

タオルなどの生活衣類は必ず3セットで回すようにする。洗う分、干す分、使う分の3つをぐるぐる回せば切れ目なく清潔なものを使える。

たまにやってくる勧誘などは徹底的に無視する。どうしても運悪く捕まってしまったら「要らない、不要だ、使わない」などといって絶対相手の話に乗らない。あまりしつこいようなら警察を呼ぶふりをすればそれで追い返せる。

まあ無精者の手抜きワザ、セコワザのオンパレードだったが、『篤史くん』は面白がって付き合ってくれたので楽しかった。


対する『篤史くん』は保存食にこだわり出した。私達は冷蔵庫を買うのに時間がかかってしまったから、『篤史くん』は食べ物が常温でも痛まないようにする工夫をあれこれ考え始めたのだ。

『篤史くん』が真っ先に始めたのはぬか漬け。野菜を毎日食べるのに良い方法はないかと私が少しばかり悩んでいると、『篤史くん』がテキパキと準備を進め始めてしまったのだ。

ぬか漬けはもともとお父さんが生きていたころは毎日作っていたが、義母と義姉が嫌がったためにやらなくなってしまったのだそうだ。

『篤史くん』のぬか漬けはこんなにおいしいのに、何故あの二人が嫌がったのか全く謎である。何でも見た目がどことなく貧乏くさいという理由だそうなのだが、全く理解が出来ません。

さらには燻製。『篤史くん』はIHコンロでも出来る燻製の仕方を調べてきて、安い鶏むね肉などを次々と燻製にしてくれた。

正直、冷蔵庫がないためそんなに日持ちはしなかったが、それでも数日は持つので休みの日にまとめて作り置きする流れがすっかり当たり前となった。


二人であれこれ相談しながら、ちょっとづつ豊かになっていく生活は本当に楽しくて笑いが止まらない。


そんな私と『篤史くん』だったが、実はかなりの数の喧嘩をした。

最初の喧嘩は暖房だった。

ロフト付きのワンルームは部屋の構造上、無駄に縦に長い造りとなっているので室内の温度が下がりやすい。だから私はなるべく暖房をつけっぱなしにしようとしたところ、『篤史くん』が猛反対してきたのだ。

そして、エアコンをつけたまま夜寝ようとすると、勝手に身体を操って暖房を切ってしまう。

それで朝になって凍えるような寒さに目が覚め、けれども布団から出るのも億劫になって危うくアルバイトに遅刻しかける事が何度か起きた。

私は夜寝る前に必ず暖房を入れて寝床につくのだが、気が付くといつの間にかOFFになっているのだ。どうも『篤史くん』が勝手に切っているらしい。


私達は大喧嘩になった。

私が「朝起きれないのは問題だ!」と主張すれば「電気代がもったいない!」と『篤史くん』が反論してくる。「多少電気代がかかっても、風邪をひかないことの方が大切だ!」と私が言えば「暖房によって余計に乾燥した空気の方がよっぽど身体に悪い!」と『篤史くん』。「だったら加湿器も買えばいい!」と私が言うも、「そんなお金はない!」と『篤史くん』がぷりぷりと怒り出す。

私としては朝起きたときに寒くて体が動かないのがとにかく嫌なのだが、対する『篤史くん』はエアコンの暖房を入れっぱなしにして空気が悪くなるのがとても嫌なのだそうだ。


この喧嘩は本当に長く続いて、朝だけはお互い口もきかない日が何日も続いたのだが、ある日たまたま寄った家電量販店で敷くタイプの電気毛布が大安売りされており、我々の不毛な争いは一挙に解決した。


私達はお互いに「ごめん」と頭を下げあいお互いに仲直りしたのだが、その数日後には安い日高昆布を買うか高い利尻昆布を買うかで大喧嘩をした。

昆布なんてどれも同じ味だと主張する私に『篤史くん』は激昂し、さんざんなじられた。どうしても納得がいかない私は両方を買って同じ条件で出汁を取ってもらい、『篤史くん』に土下座して謝った。

なお余った日高昆布は『篤史くん』が責任をもって佃煮にしてくれたので無駄にはしていないのでご安心を。


ホントにもう、3日にいっぺんはなにがしかの争点で喧嘩をして、騒がしい毎日であった。

けれどもこれは大切な事だと私は考えている。


実家にいた頃はこんなふうに喧嘩になることはなかった。

理由は二つあって、一つは義母や義姉が共通の敵としており、私達は協調してこの敵と戦うしかなかったからお互いに争っている余裕がなかったのだ。

もう一つは『篤史くん』は常にどこか緊張しており、何かに対して腹を立てるような心のゆとりそのものがなかったのだ。

それが今『篤史くん』は敵がいなくなり、緊張を強いられる環境から脱せるようになったため、ようやっと精神的な余裕が出てきたのだ。

だから『篤史くん』は腹を立てる事が出来るようになったのだ。


これは本当に喜ばしい事だ。

何故なら人間は本当に追い詰められてしまうと、腹を立てる事すら出来なくなっていくのだ。怒りという感情はそれなりにエネルギーを使うので、心に余裕のない人間はそんな事すら出来なくなるのである。

世の中には不平不満をあちこちにぶつけて余裕がない様子を演じる恥ずかしい大人がいっぱいいるが、あいつらは全員なんだかんだで余裕があるから腹を立てられるのだ。

本当に辛い立場に追い込まれると、少し前の『篤史くん』みたいにへばりついたみたいな笑顔しか浮かべられなくなってしまうのだ。


『篤史くん』の心は今回復しようとしている。だから『篤史くん』はようやっと怒りの感情を前に出すことが出来るようになった。

こんなに喜ばしい事はない。


そして何より、『篤史くん』は私に対して腹を立ててくれているのだ!

『篤史くん』は警戒すべき相手には緊張が先に立ってしまい、感情を表に表すことが出来ない。だから『篤史くん』は義母や義姉、高校時代に苛めてきた奴らなどに対して、腹を立てるという事は出来ない。恐らく今でも難しいだろうと思う。

けれども私に対してはいっさいの緊張がないらしく、普段から気軽に本音で語り掛けてくれる。

そんな『篤史くん』が私に対して怒りをぶつけられるというのは、それだけ彼が私に心を開いてくれているという証左なのだ。

『篤史くん』は私を信用してくれているのだ。私の前では緊張を解き、自然体でいてくれているのだ。だから時に腹が立つこともあるのだ。

こんなに嬉しい事はない!


だから私は少しばかりわざと『篤史くん』を怒らせて、不毛な喧嘩を楽しんでいるところがある。

そんな私の心は『篤史くん』に伝わってしまっており、『篤史くん』にはちょっと嫌がられているところもある。

けれども四六時中二人一組で生きているのだから、どうしてもお互いに主張がぶつかることは出てしまう。

そうしたら私達は喧嘩するしかないのだし、そうやって少しづつお互いにとっての適正な距離を学び合わなければならない。

雨降って地固まるではないけれど、私達は健全にいがみ合わなければならないのだ。

ヘンに遠慮したり我慢したりしてはこの先長くは続かなくなってしまう。


だから喧嘩こそが私が『篤史くん』に伝えられる一番のライフハックなのだ。


そんな私の想いが通じたのか、最近では『篤史くん』は私に対してだけは無遠慮に喧嘩を吹っ掛けてくれるようになった。

思い通りに事が運んでいるので本来喜ばしい話なのだが、可愛い『篤史くん』にマジ切れされると、正直ヘコむ。

もしかして今さらながらの反抗期なのだろうか。よりによって私が『篤史くん』の親代わりとして彼の反抗を受け止めねばならなくなってしまったのだろうか。

自ら進んで望んだ関係ではあったが、少しばかり納得がいかない気分にさせられる。けれどもまあこれは私が始めた事なのだし、逃げずに最後まで『篤史くん』と向き合っていくつもりではある。


おかげでこの半年の間、私と『篤史くん』の心の距離はうんと縮まり、私達は気の置けない間柄になったという自負はある。

いまや私達はもっとも信頼のできる人生のパートナーなのだ。



そんな私と『篤史くん』との関係だが、一つだけどうにも難しい問題が出来てしまった。


それはバイト先で仲良くなった杏奈ちゃんとのことだ。


杏奈ちゃんは『篤史くん』より一学年上の17歳で、本来高校2年から3年に上がるお年頃の可愛らしい女の子なのだが、色々事情があって学校を辞めフリーターとして『篤史くん』と同じ食品工場でアルバイトをしている。

シフトの時間もかぶることが多いので自然と仲良くなってゆき、仕事が終わった後に二人だけで途中まで帰るようなことも何度もあった。


杏奈ちゃんもまた、家族とうまくいっていないようであった。両親の関係は冷え切っており、母親は父親と離婚したいようなのだが、年若い杏奈ちゃんが独り立ちするまではと、いままでずっと我慢していたそうなのだ。

ところがここにきて杏奈ちゃんが学校を辞めてしまったものだから一挙に話がおかしくなり、母親との仲がこじれてしまったのだそうだ。

「あなたがちゃんとしないから予定がめちゃくちゃになった!」と、彼女の母親は杏奈ちゃんに怒鳴り散らしたそうだ。


けれどもこれは八つ当たりだろう。

本来この母親が向き合うべきは自分の夫であるべきが、それが出来ないからって目の前にある当たりやすい杏奈ちゃんに怒りをぶつけているだけなのだ。


それに杏奈ちゃんが学校を辞めざるを得なかった事情については、彼女の名誉のために詳細は省くが、仕方がないものだったと私は思う。むしろあんな辛い思いをしたまま、よく二年間も続いたなあと、話を聞いた私は感心してしまったほどだ。

そんな杏奈ちゃんの事情を正しく把握しようともせず、自分の感情だけをぶつける母親の態度はとても褒められたものではないと私は思う。

『篤史くん』もおおむね同意見で、私達はだから杏奈ちゃんを励ましたり応援したりと手を尽くした。


そんな『篤史くん』に対して、杏奈ちゃんが特別な感情を抱くようになったのは、とても自然な成り行きだったと私は思う。


杏奈ちゃんから見ての『篤史くん』は、自分より一つ年下なのに将来の事もきちんと考えて生活している、しっかり者の男の子に見えていると思う。

杏奈ちゃんと同じように親とうまくいっておらず苦労している様子も伝わっているはずだ。

そんな中、杏奈ちゃんの事を茶化さず親身になって相談に乗ってくれる。杏奈ちゃんが学校を中退した件についても、誰かに話したりせず秘密にしてくれている。

ぱっと見女の子みたいな可愛らしい容姿なのに、すごくちゃんとしている男の子。

しかも『篤史くん』は親と距離を置くためにわざわざ一人暮らしを始めたのだ。

自分の将来を考えるうえで、色々相談したい特別な相手。

今の杏奈ちゃんの立場や状況を鑑みれば、こんなに気になる相手もいないだろう。


それである日杏奈ちゃんは、『篤史くん』の家に遊びに来たいと言ってきた。

どんなふうに生活しているのか気になって様子を見てみたいというのだ。


さて、『篤史くん』はキョトンとした様子であまりよく分かっていないようだけれど、これは一大事態だよ!


なにせ年頃の女の子が一人暮らしをしている男の子の家に遊びに来るのだ。

それも一人で!

当然彼女はその意味について考えたうえでやってくるのだろうし、それなりの覚悟があるはずだ。


むろん世の中には、そういう男女の機微に疎い女の子もいる。天然でヘンなところのある無遠慮な女の子。友達感覚の軽い気持ちで一人暮らしの男性の家へ遊びに来たいなどと言い出して、それがとっても危険な事だなんて思いもしない。

そんな女の子も世の中にはごまんといる。


けれども杏奈ちゃんは違う。

彼女は最初、冗談みたいな感じで軽い雰囲気で「『篤史君』の家を見てみたい」と言ってきたけれど、私がじっと彼女を見つめ返すと顔を真っ赤にしながらも「なんでもない」とか「やっぱり嘘」とか否定しだしたのだ。

なんだか初々しいなぁと、見ているこっちが恥ずかしくなってきてしまった。


けれどもどうしたものか、私は迷ってしまう。

だってこれは『篤史くん』の問題だ。


私としては彼女を家に呼ぶことに何の問題もなかったけれど、肝心なのは『篤史くん』が杏奈ちゃんの事をどう思っているかなのだ。

だから私は『篤史くん』にはっきりと分かるように聞いた。「『篤史くん』は杏奈ちゃんの事を女の子として好きか?」ってね。


その直後、動揺して顔を真っ赤にする『篤史くん』のテンパり具合は、そりゃあもう酷いものだった。

『篤史くん』はパニックになってアワアワとなってしまい、しばらくまともな思考が返ってこなくなってしまった。


私は『篤史くん』と心を共有しているから、『篤史くん』がぼんやりとながら杏奈ちゃんに好感情を持っていることは事前に分かっている。

けれどもそれ以上の強い感情に発展する様子がなかったから、もしかしたらと密かに疑っていたのだが、悪い予感が当たってしまった。


『篤史くん』は男女の方面では恐ろしく遅れており、いままで女の子に対して一度もそういった感情を覚えたことがなかったのだ。

義母や義姉が無駄に高スペックな美しい女性達だったことも災いしていたかもしれない。

あの二人と比べると、そこらの女性や女の子はどうしても劣ってしまうからね。あくまで見た目だけの話だけれど。

杏奈ちゃんは可愛い系の女の子として義姉と対抗出来るほどの容姿ではあるが、義姉のせいで美人慣れしてしまっている『篤史くん』は同レベルの杏奈ちゃんを見ても、これまではさしてそういう気持ちにはならなかった。


それが今、私に指摘されて始めて杏奈ちゃんの事を意識した『篤史くん』は、女の子を好きになる感情に混乱してどうしていいか分からなくなってしまったのだ。


それですっかり困り果てた『篤史くん』は、杏奈ちゃんの件はすべて私に丸投げしてきた。


おいおい!

これは君がどうするか考えるべきことだぞ!


けれども『篤史くん』が杏奈ちゃんに特別な感情を覚えたからこその事情は私にもよく分かったから、ここは特別に私が骨を折って、杏奈ちゃんの相手をしばらく買って出ることにした。

後になって思えばこれがそもそもの間違いだったのかもしれない。



ともかく私は杏奈ちゃんを快く自慢の自宅にお呼びすることにした。

最初は仕事帰りにちょっと軽くお茶でもどうぞってつもりだったけど、なんとなく話が大きくなって、わざわざ休みの日を選んで昼間から遊びに来てくれることになった。

駅前で待ち合わせして、やってきた杏奈ちゃんはちゃんとお化粧もして、普段の数倍可愛らしかった!


私は『篤史くん』をせっついて彼の言葉で褒めるように催促したのだが、テンパった『篤史くん』はまごつくばかりでとてもまともに言葉を返せそうになかったので、しょうがないので代わりに私が対応する。

「今日の杏奈ちゃんはすごく可愛い!」とかなんとか、そんな感じでテキトーに。

杏奈ちゃんはそんな私の誉め言葉にすっかり恐縮し、よく見ればその耳が真っ赤になっていた。うんこの子、確実に『篤史くん』に気があるね。


それから二人してスーパーに行って夜ご飯の材料などを買いこみ、そのまま自宅にご招待する。


今日はこのまま『篤史くん』の一人暮らしの様子を見せつつも、杏奈ちゃんが家を出る場合についての相談などをしたり、一緒に夕飯を作ったりする予定なのだ。


『篤史くん』が毎日お弁当を自作してくる様子を見た杏奈ちゃんは、最近自分でも料理に挑戦するようになっていた。今後杏奈ちゃん自身も家を出るつもりがあるなら、自炊が出来た方がいいと考えついたようであった。

ただどうにもうまくいかず困ってしまったようである。


母親との関係が悪化する中で、家を出ることを目標とした杏奈ちゃんは立派な女の子だと思う。その中で出来るところから覚えようという事で料理を始めたのも良い事だと思う。

ただ、料理というものは誰かからコツを教わらないとなかなかすぐには上手くならない。篤史くんだってお父さんに色々と基礎を教わったら今のセミプロ級の腕前があるのだ。


別に料理を作るだけならネットのレシピ通りにすればよい。

けれどもそれぞれの品をどの順番で作っていったらいいかとか、どのタイミングで洗い物を処理したらいいかとか、ゴミはどうやって処分したらいいかとか、レシピにはない細かなコツというのは一杯あるのだ。

そしてこのあたりは、知ってる人から教わらないとなかなか身につかないものだ。

ただ美味しいご飯が作れる事と、ちゃんと炊事が出来る事とには大きな隔たりがある。

ちゃんと最後に食器を洗ってゴミを全て片付けて、そこまで出来て初めて料理が出来るようになったと言えるのだ。


杏奈ちゃんは母親から教われなくなってしまったから、そのあたりのコツや工夫を『篤史くん』から学ぼうというのであった。


さて、その後は順当にものごとが進み、二人で楽しくお料理を作った。

杏奈ちゃんの腕前は、なるほど包丁の扱いこそ慣れておらず危なっかしいところはあったものの、もともとの真面目な性格や味に対するセンスの良さからあっという間に『篤史くん』の教えるコツを掴んでいったようだ。


食材を切る順番はすごく大事。間違っても魚やお肉を先に切ってはいけない。ニンニクなどの香味の強い食材も後回し。味移り、匂い移りのしない根菜などから切ってゆく。

そして、その日作る献立に合わせて、食材はなるべくまとめて全部先に切った方がいい。

包丁やまな板を複数用意できるのであればある程度順番は前後できるが、手で触って香りや味、油などが移るリスクがあるのでどのみちある程度順番は決まってしまう。

このあたりはちょっとしたパズルゲームなので、食材の特性を覚えて順番を考えられるようにしよう。


時間が空いたからといって、煮物などを作っている脇で洗い物をするのは危ない。流しで水洗いしていると思わぬところまで跳ねることがあるから、万に一つでも洗剤の泡などが鍋に入ると一気に味が悪くなる。

洗い場と調理場がよっぽど離れていない限り、洗い物の時間と料理の時間は横着せずにきちんと分けた方がいい。


煮物、焼き物、炒め物、揚げ物、炊飯、汁ものはそれぞれ、完成時間から逆算して作っていくのが本来のセオリーだが、初めのうちはまごつくので無理にこだわらなくてもいい。

冷めてしまったら電子レンジや火にかけ直して温め直せるものを先に作ればいい。

温め直しが難しいのは例えば炒め物。炒め物は、冷めた後レンジで温め直すと塩が回った野菜から水分が大量に出てきてしまうので一気に雰囲気が変わってしまう。まあ、それはそれで炒め煮みたいになって美味しかったりするので、気にならないならありかもしれない。

他には一部の煮魚。煮魚は冷めてから温め直すと一気に生臭くなるものがあるから、こういったものは温かいまま出せるようにしなければならない。

土鍋で炊いたご飯も難しいそうで、土鍋ご飯は時間をかけてゆっくりと冷めながらも蒸らしが進行するので、きちっと完成時間を逆算して考えた方がいい。


他にも色々あって、料理のあまり得意でない私にはよく分からない部分も多かったのだが、杏奈ちゃんは感心するように話を聞いていたのでちゃんと意味は伝わっているようだった。

料理好きの人達はそういうところを考えながらご飯を作っているんだね。私は全然知りませんでした。


さてそんなこんなであっという間にテキパキと料理が出来上がり、すっかりあたりも暗くなったところで二人向かい合っての実食タイム。

いつものより品数が多いので、私としては嬉しい限り。おいしい『篤史くん』のご飯がいつもの倍の品数で楽しめるなんて!

ただ、そんな私以上に感激しているのが杏奈ちゃんだった。

杏奈ちゃんはただもうひたすらに「おいしい!」「おいしい!」を連発してぱくぱくとご飯を食べ、「食べ過ぎたぁ」などと声を上げながらも残念そうに空になった食器達を見つめていた。

あーこれ完全に胃袋を掴んでしまった。杏奈ちゃんの好感度が振りきれた瞬間をリアルタイムで目撃してしまった。


そして食後のコーヒーを片手にしてのまったりとした時間が始まると、キラキラと瞳を輝かせながらこちらを見つめてくる杏奈ちゃん。心なしか、少しづつ距離を詰めこちらに近づいてきている気がする。なんとも初々しい様子である。

杏奈ちゃんは中高と女子高に通っていたと聞いているから、恐らく男性との付き合いはほとんどないものと見受けられる。だから彼女としても今どうすればいいか分からずに、なけなしの勇気を振り絞って『篤史くん』の隣に座っているはずだ。


だが、そんな杏奈ちゃんの想いに応えるべきなのは『篤史くん』だ。私はあくまで『篤史くん』脱出計画のアドバイザーなのだから、その先の未来に関わる問題は『篤史くん』本人が選び取らなければならない。


だから私は『篤史くん』に全てをゆだねた。


この先は君が考えるんだ。杏奈ちゃんにどうしたいか、杏奈ちゃんとどうなりたいか。

たとえ失敗してもいい。どんな決断に至ってもいい。私は君のどんな選択・行動に対しても応援するから、君が自分で考えて彼女と向き合うんだ。


『篤史くん』がゴクリと唾を飲み込む音が聞こえる気がした。


そうして、『篤史くん』は自分の言葉で彼女に声を掛ける。


「あのっ……。」

「……!」無言のままびくりと肩を震わせえる杏奈ちゃん。


「あの……。今日のあんなちゃん。なんかちょっと、ヘンです。」


え? 私は思わず固まった。


「……え?」杏奈ちゃんも同じく固まってしまった。


何を言い出すの? 『篤史くん』? どうしちゃったの?


「あんなちゃん。なんか今日、ヘンです。いつもとなんだか違います。」


えええええっ!? 『篤史くん』が何を考えているのか、さっぱり分からないよ!?


「うそ。どこかヘンだった?」杏奈ちゃんが震える声でそう返事をしてくる。


いや、どこもヘンじゃないよ杏奈ちゃん! むしろすごく可愛くて素敵だよ! 

むしろ『篤史くん』のほうがヘンだよ!


「今日のあんなちゃん、なんだか妙に近くて、なんかヘンに甘ったるくて、なんかおかしいです。正直ちょっと気持ち悪いです。大丈夫ですか?」


私は自分の血の気が引いていく音をはっきりと聞いた。


何を言い出すのだ『篤史くん』! 君の言っていることは滅茶苦茶だぞ! どうして気持ち悪いだなんていったんだ! どうしてそんな事思ったんだ! 可愛らしい女の子の反応じゃないか! 君に好意を持っている女の子の当たり前の反応じゃないか!


けれども『篤史くん』には本当にさっぱり分からないようだった。

もともと性に対して非常に遅れている『篤史くん』。特に小学校4年にお父さんが亡くなってからは、家の事があまりに大変すぎてとても女の子の事なんかを考える余裕もなかった。

『篤史くん』の恋愛感情などは小学校4年で止まっているのだ。


そんな『篤史くん』はどうやら本気で杏奈ちゃんの事を「気持ち悪い」と考えており、むしろ杏奈ちゃんの事を心底心配して声を掛けているようなのだ。


どういう事なんだ!?


それでふと私は思い出してしまった。

あれは去年の夏の終わりごろだったか、私達がまだ実家を出る前、義母が異様に甘ったるい雰囲気で『篤史くん』にしなだれかかってきたことがあった。

義姉が家を出て行ってしまい、あの人が精神的に参っていた時の話だ。


あの時私は、「気持ち悪い」とはっきり思った。妙に近づいてきて、ヘンに甘ったるくなって、『篤史くん』が共にいる状況ではっきりと「気持ち悪い」と考えてしまった。


私にとってはいつも通りの何気ない一コマであったが、『篤史くん』にとっては初めての体験だった。

それでどうやら篤史くんは、女性が醸し出す甘い雰囲気を「気持ちが悪いもの」として学習してしまったようなのだ。

だから今、杏奈ちゃんがそういう雰囲気になるのを見て、あの時の義母と同じ「気持ちが悪いもの」だと判断してしまったのだ。

そんな『篤史くん』の心情が、どうしようもなくはっきりと私に伝わってきた。


なんというブーメラン! 悪いのは私じゃないか!


私は『篤史くん』を叱りつけることも出来ずにまごついてしまい、『篤史くん』は状況が把握できずに混乱してしまい、そんな中杏奈ちゃんは涙目になりつつもテキパキと帰り支度を始め、「ごめんね」とか「私帰るね」とかあれこれ言いつつも、そのまま家を出て行ってしまった。

本来なら今はもう夜も遅い時間なんだから、『篤史くん』は途中まででも送っていくべきはずなのに、そんな事にまで気が回らないうちに杏奈ちゃんは一人で帰ってしまった。


大失態だ!


私は『篤史くん』から身体の主導権を奪い返し、とにかくLINEで「さっきはゴメン」とか「ぼくの方こそヘンだった」とか言い訳がましいメッセージをいくつも送ったのだが、それらは既読にはなるものの、杏奈ちゃんの返事は一向に返ってこなかった。


私は絶望的な気分になりながらも、ともかく他に打つ手がないと諦めて寝ることにした。

私は杏奈ちゃんがどこに住んでいるか知らない。だからスマホで連絡がつかなくなったら、彼女とは仕事先でしか会う機会がない。事ここに至っては私に出来ることはもう何もなかった。

『篤史くん』はまるで事の重大さに気付いておらず、のほほんとのんきにニコニコしている気配が伝わってくる。

私はイラッとなったが我慢する。

今回の件では私は最初、「どんな結果になろうとも応援する」などと調子のいい事を『篤史くん』に言ってしまっていたのだ。

今さら二言はあるまい。

私はやり場のない怒りを腹の奥へと押し込めつつ布団の中にもぐりこんだ。



次の日の朝、『篤史くん』は夢精した。

朝起きたら股間がべっとりとなって、何のことだか分からずに混乱する『篤史くん』。ただ、ぼんやりと自覚症状はあるようで、顔を赤くしたり青くしたりしている。

途方に暮れる『篤史くん』に代わって私が汚れたパンツをお湯で簡単に洗い流してから、そのままシャワーを浴びる。

『篤史くん』はどうやら今日が初めての精通だったようだ。

なんとなく伝わってくる『篤史くん』の心象から、夢の中でのお相手は杏奈ちゃんだったようだ。分かりやすい話だ。

今まさに『篤史くん』の心と身体は急速に男の子へとつくりかえられようとしているように私には思えた。


そんな『篤史くん』に対し私はちょっとばかり嫌味っぽく、「本当なら『篤史くん』と杏奈ちゃんは昨日のうちに特別な関係になって、もっといやらしくて気持ちいい事がいっぱい出来たかもしれないのにねぇ。」って言ってやったら、『篤史くん』はフリーズしてしまった。


そして『篤史くん』はようやっと今になって、昨日の杏奈ちゃんがどうしてあんな様子だったのか、対する『篤史くん』がどんな間違いを犯したのかを理解して、パニック状態になってしまった。


「あ、あ、あ、あ、あ……。」声にならない声を上げて立ち尽くす『篤史くん』。


あれ? これ、どこかで見たことあるぞ。

なんか魂の叫びとかそんな感じのやつだ。

確か実家の物置にしまってあったはずのお父さんの遺品のキャンプ道具を義姉に売り飛ばされたと気付いた時の『篤史くん』だ。


『篤史くん』にとって昨日の失態は同じくらいショックな事だったんだね。

けれども『篤史くん』。このまま何もせずにいたら物事は悪くなる一方だよ?


あの時は南京錠を買ってきて物置のドアに取り付けたから、それ以上の略奪を阻止することが出来た。

今回もきちんと対策を考えないと、ずるずると話が酷いことになっていってしまうよ?


けれども『篤史くん』はどうすればいいかも分からないらしく、ただただみっともないうめき声を上げるばかりであった。


こんな時、お金を稼がないと生きていけない立場というものが妙にありがたかったりする。

我々は仕事をしないと明日の命をも危うい状況なので、まごつく篤史くんの尻を叩くようにして、私は仕事へと向かう。



今日も出勤だったはずの杏奈ちゃんは職場には来ていなかった。どうやら急な体調不良でお休みを取ったとの話であった。

彼女にとっても色々ショッキングな事だったんだね。

さもありなん。


あからさまにほっとした様子の『篤史くん』を叱り飛ばしたい気持ちになったが我慢する。

今回の一件については私にも大いに反省すべきところがありまた、今後の事を考えると色々と考えなければならないことがたくさん出来た。


まず何より、『篤史くん』が杏奈ちゃんとこの先どうなっていきたいかは、『篤史くん』が決めるべきことだ。

真剣に考えて、自分一人で答えを出さなければならない。


しかしこれは『篤史くん』だけの問題ではないのだ。

今の私達は一心同体なので、私自身も決断しなければならない。

杏奈ちゃんと仲良くなりたいのか。彼女とどんな関係になりたいのか。


私は個人的には杏奈ちゃんのことはすごく可愛らしい素敵な女の子だと思っているし、ぜひとも『篤史くん』とは特別な関係になってほしいと願うものだが、自分自身がどう思っているのかは正直よく分からない。


私は彼女とどうなりたいんだろう?


いきなりそんな事を言われてもさっぱり分からない。

どうしよう!?


さらにはもう一つ悩ましい問題がある。

仮に『篤史くん』と杏奈ちゃんが恋人同士になったとして、男女の行為に至った暁には私はどうすればいいのだろう?

この身体の自由は『篤史くん』に全て明け渡すとして、セックスの最中に私は見て見ぬ振りが出来るのだろうか?

私と『篤史くん』はあまりにこの身体を共有しすぎているため、行為中の『篤史くん』の全てが全部私に筒抜けになってしまう。

それってはっきり言って、『篤史くん』としてはたまらなく嫌な事ではないだろうか?


それとも私も一緒になって参加しなければいけないのだろうか?

私達は二人で楽しむ方法を考えなければならないのだろうか?


さっぱり分からないぞ!

どうしたらいいんだ!?


この先『篤史くん』が一人の男の子として杏奈ちゃんと向き合うことになったら、私自身が自分の身の振り方を考えなければならない。

その上で『篤史くん』とどうするかを事前によく話し合わなければならない。


いままでそんなことが必要だとは思いもしなかった!

私自身についてはまったく考えていなかった!


今回の杏奈ちゃんの一件は、私にとってもとても良い教訓となった。


仮に昨日の『篤史くん』が杏奈ちゃんと上手くやって、そのまま良い雰囲気で男女の仲が進展したとして、私という存在が『篤史くん』の心の足かせとなり、どのみち大混乱する事態になっていたであろうことは想像に難くない。


だから私も色々と考えておかなければならなかったのだ。

私達はちょっと特殊な存在だから、『篤史くん』が女の子と付き合う為には色々と心の準備が必要だったのだ。


それが分かっただけでも良しとしよう。



さて、私は日中いっぱい仕事をしつつもあれこれ考えているうちに、杏奈ちゃんからLINEの返事が来ていた。

「返事が遅くなってごめんなさい」とか「昨日はなんかごめんなさい」とかそんな感じ。


よし! 私は心の中でガッツポーズをする。

まだ杏奈ちゃんとの縁は切れていない。


『篤史くん』は自分が嫌われて顔も見たくないと思われていると考えこもうとしているが、そんなことは全くない。

私の見立てでは、杏奈ちゃんはまだちゃんと『篤史くん』に好意を持ってくれているし、『篤史くん』がちゃんとすれば今からでも挽回できる。

むしろお互いにはっきりと相手の事を意識した今こそ、望むがままの新しい人間関係を作れる最高のチャンスなのだともいえる。


あとは『篤史くん』。まずは君がどうしたいかだ。このまま杏奈ちゃんとはフェードアウトしていくのか、一歩踏み込んで特別な仲を目指すのか。


『篤史くん』は少し考える時間が欲しいなんて言ってきたけれど、申し訳ないけれどこの件については待つことは出来ない。

彼女と特別な関係になりたければ今頑張るしかないし、それが出来ないならこのまま疎遠になっていく未来しかない。

人生というものはいつだってままならないもので、何の心の準備もないままで、すぐさまその場で決断しなければならないことだって一杯あるんだ。

今がまさにその瞬間だ。



せっつく私に対し、『篤史くん』は……。




『篤史くん』は杏奈ちゃんと仲良くなりたいと言ってきた。彼女と特別になりたいけれど、どうしていいか分からないと。失敗するのが怖くて仕方がないと。


大丈夫だよ! 『篤史くん』! 何のために私がいると思っているんだ! こんな時こそ私に任せてもらいたいものだ!


そりゃあ人生に絶対はないから、私が力を貸しても失敗する可能性はある。だから私は成功を約束することは出来ない。

けれども私と『篤史くん』は文字通りの一心同体じゃないか!


二人で悩んで、二人で考えて、二人で行動したらいいじゃないか! それで杏奈ちゃんに振られたら、二人で落ち込めばいいじゃないか!


だからそう、二人で頑張ろうじゃないか!


『篤史くん』がこくりと頷く雰囲気が伝わってきた。

よし、ここは私が『篤史くん』のためにもうひと頑張りして見せよう!


私は杏奈ちゃんに対しLINEで自分の現状を伝えた。


・自分は義母との間でうまくいっておらず、最近になってようやっと逃げ出したばかりであること。

・今は生きることに精一杯で、女の子のことなどを考える余裕などとてもないこと。

・自分はすこし特殊な環境で育ったため、女の子とどう接していいかもよく分かっていないこと。

・昨日はそれでどうしていいか分からずに酷いことを杏奈ちゃんに言ってしまったが、後になってとても後悔したこと。

・杏奈ちゃんとはこれからも仲良くしていきたいと思っているので、どうか弁明する機会を与えてほしいこと。


程なくして、杏奈ちゃんから返事がくる。

「わたしの方こそごめんなさい」とか、「わたしも話したいことがある」とかなんとか。

よし! 好感触!


さらに重ねて「明日は仕事に来る?」と聞いてみたところ、「うん」という返事が来た。

「明日直接あって話したいことがある」と送れば、やっぱり「うん」と返ってきた。


さあ『篤史くん』!

お膳立てはすべてやってあげたぞ!

明日が勝負だ!


緊張のあまり歯がカチカチとなる。

『篤史くん』の緊張や恐怖が私に伝わってくる。

対する私も不安と期待がないまぜになって、先ほどからドキドキが止まらない。

けれどもいくら緊張しようが不安になろうが、どうなるかは明日になってみないと分からない。


なんてこった!

女の子と仲良くなるのは毒親から逃げ出すよりよっぽど大変だ!


その晩、私達はなかなか寝付けなかった。二人して眠い目をこすりながら、夜空が白んでいくのをまんじりともせず見守るうちに朝となった。



けれどもあくる日、『篤史くん』が杏奈ちゃんと特別な関係を築く機会は永遠に失われてしまった。


6月のある晴れた日の朝、いつもより少し早めに準備をして仕事に向かうために家の外へと飛び出すと、そこには仁王立ちになった義母が怒りの形相で廊下をふさいでいた。


おりしもその日は、私が初めて『篤史くん』に憑依したまさに1年後の同じ日だった。



杏奈ちゃんとの件はもう少し失敗のない感じも考えていたのですが、篤史くんの性格や人間性を考えると、どうしても他に思いつかずあんな風になってしまいました。

家を出て精神的に余裕のできた篤史くんが、なんかカッコいい感じでさっそうと女の子のハートを奪っていくみたいな話のほうが読者受けしそうではあるんですが、「そんなの私の篤史くんじゃない!」ってな感じです。


こういう頭の悪い感じ、もどかしい感じは嫌いって読者も大勢いるであろうことは重々承知しておりますが、作者としては作中登場人物に対して嘘をつくことで人物の整合性が取れずにキャラクターが死ぬ事をこそ一番に恐れていますので、敢えて自分が思ったとおりに書かせていただきました。


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― 新着の感想 ―
[一言] この篤史くんは解釈一致 ひぎゃあああきたあああ!まぁ来るよね もっと遠くへ高飛びする金があればなー
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