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『スキル【空間魔法】で転移ライフを謳歌する』  作者: 愛月量


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第29話 厄介な奴に捕まった

――あの深淵の中で、俺は何を掴んだのだろうか。

目の前に広がる、黒く淀んだ世界。その奥底で、確かに俺は"何か"を求めていた。


力でも、名声でも、復讐でもない。

――他者から、自分という人間を認められること。

それが、俺が最も渇望していたもの。


けれど、それを自覚することはなかった。気付くには、あまりにも遅すぎた。

静寂の後、空間が音を立てて軋み、崩壊を始めた。


「......?結界が......壊れていく?」


視界が揺らぎ、暗黒の波が霧散する。

地面に膝をつき、呼吸を整えながら周囲を見渡した。

深淵(アビス)】――死縁団の絶技。その中に閉じ込められていたはずの俺が、再びこの世界に戻ってきた。


「......まさか、俺が......突破したのか?」


だが答えは違った。

結界を魔力で感じる。

そこに残っていたのは、微かに残留した死縁団の魔力――そして、途切れた生命反応。


「......なるほどな。持続する結界だったのか。発動者の魔力が途絶えれば、維持は不可能」

つまり、結界が壊れたのは俺の力ではなく――死縁団が"死んだから"だ。


俺は唇を噛む。

深淵の中で得たものなど、何一つない。ただ欲望に呑まれ、愚かにも満たされぬ願望にしがみついただけ。

だが、それでも......脳裏をよぎったのは、あの二人の顔だった。


アリスとカムイ。

俺を信じ、傍にいてくれる仲間。

――認めてくれる者は、もう傍にいるじゃないか。


静かに立ち上がり、目の前の亡骸へと歩み寄る。

そこに横たわるのは、黒衣を纏った死縁団。


「......お前も、認められたかったんだろうな」


低く呟きながら、右手を掲げる。

亜空間の扉が静かに開き、死縁団の死体を収納する。

【昇華】――あの禁域で見た、未知なる力。

あれを再び目にした以上、調べずにはいられない。いつか、この手で掴むために。


――――――――――


闇ギルドの通路に戻ると、既に血と煙の匂いが充満していた。

黒煙暗殺計画――それは完全に失敗した。

だが裏社会の空気は、予想外の方向へと転がっていた。


黒煙は無傷。

死縁団は壊滅。

結果として、黒煙は無敗。恐怖と羨望が入り混じった噂が駆け抜けていく。


嫉妬の声が飛び交う中、俺は渦中の男と話をした。

そこにいたのは、闇ギルド協会 会長――白髪を滑らかに撫でつけた、異様なまでに整った男だった。


『いやはや......君が噂の黒煙かな?』


まるで芝居でもしているかのような笑み。

俺は軽く鼻を鳴らし、睨みつける。


《知らないフリか?》


『はっはっは!疑り深いなぁ。だがいい、そういうのは嫌いじゃない。さて――本題に入ろうか』


会長は指を鳴らす。

背後で数人の構成員が動き出し、混乱の後始末を始めた。


『この挑戦はね、私の挑発でもある。しかし、誤解しないでほしい。君を蹴落とすつもりはないよ』


《......なら、何のために?》


『君のような"素性を隠す者"が好きなんだ。見えないものほど、暴きたくなる性分でね』


その目は、底の見えない深淵のようだった。

俺はわずかに眉を動かし、問い返す。


《なぜこのような真似を》


『私は買っただけさ。彼らの野心をね。黒煙くん、これは"イベント"なのだよ』


《イベント......?》


『裏仕事なんて陰気で退屈だろう?だからこうして、ちょっとした"舞台"を用意した。

君のような異端がどこまで登るのか、見てみたかったのさ』


その言葉に、嫌な寒気が走る。

――この男は、全てを"遊び"として見ている。命も、誇りも、野心さえも。


《何が言いたい?》


『単純なことさ。私はね、黒煙くん――君を暴きたいんだ。この手でね』


『私が君を暴けるその時まで、私が君のギルド孤影の騎士団(ナイト・オブ・ナイツ)をバックアップしようじゃないか』


会長の目が細く光る。

『だからね、黒煙くん。君は、私に何をくれるのかな?』


......とんでもないやつに捕まってしまった。


だが同時に、胸の奥で熱が灯る。

面倒ごとほど、面白い。

試されているのなら、応えてやるだけのことだ。


《いいだろう。お前が俺を暴きたいなら――せいぜい、後悔するなよ》

後々本作のスキル集など作りたいと思ってます!

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