第七章:島に咲く花
登場人物
•片山 蓮:13歳。
•藤原 千歳:70代。
⸻
【シーン1】山道の途中で見つけた花
描写
蓮と千歳は朝の散歩に出かけ、島の小高い丘を歩いている。途中、蓮がひとつの白い花に目を留める。
蓮:「……これ、なんて花ですか?」
千歳(しゃがんで見て):「浜昼顔じゃ。海辺に咲く、強い花じゃよ。」
蓮:「……強いんですか?」
千歳:「そう。風が吹いても、潮がかかっても、根っこでしっかり踏ん張って、毎年咲く。」
蓮(じっと見つめてから):「ぼくも……そうなれたらいいな。」
⸻
【シーン2】かつての教室
描写
千歳と蓮は、旧・大島小学校の校舎跡へ。窓ガラスは割れ、床には落ち葉が積もっているが、黒板はそのまま残っている。
千歳(黒板にチョークで書く):「『今日も元気に あいさつを』。昔、毎朝書きよった言葉じゃ。」
蓮:「……ここで、教えてたんですね。」
千歳(懐かしむように):「あの頃は、あの子らが島の希望じゃった。」
蓮:「ぼくは……家でも、学校でも、誰の希望にもなれなかった。」
千歳:「そんなこと、誰が決めたん?」
蓮:「……みんな。」
千歳:「“みんな”は時に、いちばん嘘をつく。自分を信じるんが、いちばん難しいけど、いちばん強い力じゃよ。」
⸻
【シーン3】蓮の決意
描写
夜、蓮は一人、砂浜に立っている。ポケットの中の巻貝を握りしめながら、月に向かって小さく呟く。
蓮(小さな声で):「逃げてきたぼくを……この島は、受け入れてくれた。」
(手を開くと、巻貝が月明かりに照らされる)
蓮:「ありがとう。だけど、もう少しだけ……ちゃんと、自分の場所を探してみたい。」
⸻
蓮
「花は、根を張る場所を選べない。けれど、咲くことは選べる。ぼくも、咲いてみたい――この世界のどこかで。」




