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詰んでレラ。  作者: 来栖もよもよ


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6/6

そにょ6

「……フレディさん?」


 王子を殴り飛ばしたのは茶飲み友だちのフレディさんだった。


「なぜここに?」


「城に入ってきたレラを見かけたんだ。なんでだろうと思ったらジェフリーの部屋に連れてかれるわ叫び声は聞こえるわで慌てて護衛ぶん殴って飛び込んだらこの状況……良かった間に合って……」


 フレディさんは私をぎゅうっと抱き締めた。少し震えているのが分かった。


「……義兄上、人の部屋に勝手に入るのはちょっと失礼なのでは?」


 殴られた頬を押さえながらジェフリー王子は立ち上がった。


「義兄上……?」


 私はぼんやりしてしまった。

 このクサレ外道王子の兄弟?てことは王子なの?え?


「国民を有無も言わさず乱暴しようとする奴が義弟かと思うと情けない。

 父上からジェフリーが舞踏会でプラチナブロンドの女性ばかり声をかけて部屋に連れ込んでるらしいと聞いて、まさかと思ったが、……ジェシカ嬢のせいか?」


「……!!義兄上には関係ないでしょう」


「ジェフリーに無理矢理手込めにされたと二人の娘が泣きながら訴えに来たのはやはり事実か」


「……あれは目がジェシカと違ったんですよ。エメラルドグリーンの瞳が綺麗な……ジェシカじゃない……」


 ジェフリー王子は溢れる涙を拭おうともせず、立ち尽くしていた。


「気持ちは解るが、今回の件と乱暴された娘たちの事を考えると同情は出来ないな。おい」


 フレディさんが声をかけると、騎士団の人が3人入ってきた。


「父上に処分は委ねる。ひとまず牢屋に入って猛省するんだな。連れて行け」


 手向かいもせず、引きずられるようにジェフリー王子が連れ出されていく。


「レラ、ひとまず話をするにもここでは不快だろう。いつもの裏庭へ行こう」


 私は茫然自失のまま手を引かれて連れて行かれた。



「まずは身分を隠していたこと、許して欲しい」


 裏庭のベンチに座った途端、フレディさんが謝罪した。

 フレディさんはフレデリックといって最初の正妃の子で、ジェフリー王子と下にいる二人の義弟は今の正妃の子とのこと。


「前の王妃の子ということで、かなり疎んじられてたから、舞踏会も特に参加する話もなくて、まあ踊るのも苦手だし、話したように女性に気の利いた話が出来る訳でもないし」


 で、ごろごろしてたときにレラと出会ったらしい。


「こんなオッサンでも一応王子だから、バレたら畏まって話されるんだろうなと思うと言えなくてね」


「はあ……」


 まあがさつな私でも王子様にオッサン呼ばわりはしませんけど。


 ジェシカさんと言うのはジェフリー王子の恋人だった人で、さあ婚約をといった時期に肺炎にかかって亡くなったそうだ。


「元から精神的に彼女に依存してた部分があってね。彼女と似た人を側に置きたいと思ったんじゃないかと思う。どれだけ似てても本人じゃないのにね。心が不安定になってしまって私も心配はしていたのだけどね……」


「そうなんですか……」


 やったことは許されないが、心情としては解らなくもない。それだけジェフリー王子にとって特別な人だったのだろう。


「……あの、でね、レラ……」


 フレデリック……フレディ王子がなんか言いづらそうに私を見る。


「はいなんでございますか?」


「義弟にひどいことされて本当に申し訳ない。でも、その詫びとは別にして、僕と結婚してくれないか?」


「……え?いやーでも……フレディさ……フレデリック王子様はこの国を先々背負う訳ですよね?私では教養もないですし、お店を出す夢も捨てきれないので無理です」


「そこを何とか。君と結婚出来なければもう僕は一生独り者だよ。というか、君ほど一緒にいたい人に逢えないと思う。

 ……でも、やはり年上過ぎたかな」


「いやそこは全く問題ないしむしろいいんですが、問題はそこではなくてですね」


「もちろん、結婚はまだ先として、先ずは恋人としてでもいい。何年でも待つから。君が嫌がることは絶対にしないと誓うよ」


「どこの世界にパン屋の娘と恋愛する王子がいるんですか」


「ここに!」


 挙手をするフレディさんを可愛く思ってしまったのは内緒だ。


「というか……好きになった女性はレラが初めてなんだけど……気持ち悪いよね、いいトシして恋愛経験もなくて」


 しょぼん、といった風情でフレディさんが俯く。

 かーーーっダメだ、これが不憫可愛いの魔法か。


「フレデリック王子……いえフレディさん」


「……ん?」


 顔を上げたフレディさんの両頬を押さえ込み、私は思わず唇を奪ってしまった。

 いかん、ファーストキスを自分からしにいくとは。


「……ッッ!」


 フレディさんが耳まで赤くしてぱくぱく口を開けていた。

 なにこの人三十路前のくせにクソ可愛い。間違いなく女子力はフレディさんの方が高いわ。

 やばい、考えてみたらフレディさんもファーストキスなのか?


「私もフレディさんが好きです。でも自分の夢も諦めたくないんです。

 だから結婚はまず棚上げしてこっ、恋人としてお付き合いをさせて頂くというので良いでふか?」


 噛んだ。大事なとこで噛んだ。


 フレディさんがコクコクコクコク人形のように頷いた。


「もっ、勿論それで構わない!」


「それではこれから宜しくお願いします、と言うことで私は帰りますね」


 私はこれ以上不憫可愛い生き物の傍にいるとなにやらヤバい衝動に襲われそうになったので立ち上がった。


「え?もう帰っちゃうの?だけどレラっあのっ、えーと、さっきの……その……」


 フレディさんが咄嗟に私の手をつかんで来る。だから女子力たけーんだよフレディさん。


「いいですか、フレディさん」


 だからうるうるとした目で見詰めるのはやめて。


「私も今日色んな事がありすぎてアタマが混乱してまして、冷静な判断力がないのです。だから家に戻って落ち着きたいんですよ、エエほんとに」


「そ、そうだよね。ごめんねレラ、無理強いするようなこと言って……でも……あの……」


「はい?」


「帰る前に、も、もう一度キスしてもいいですか?」


 いや最初したのは私だけどな。

 このあざとさ、天然か?天然なのか?


「はい喜んで」


 言うなり私はフレディさんを抱き締めて、先程よりかなりディープなキスをプレゼントした。

 くっそーこのオッサン私の萌えをごり押ししてくる。私はこれでも彼氏いない歴=年の乙女だってのに。これじゃただの手負いの猪じゃない。


「そ、それじゃ、またねフレディさん」


 魂が抜け落ちたようなフレディさんを放置して、私はそそくさと逃げ出すのであった。





 あれから2年。


「フレディ、ちょっとアップルパイ揚げてくれる?足りなくなりそう」


「分かった」


 週に3日も4日も家までお忍びでやって来るようになったフレディさんは、店の手伝いまで進んでやってくれるようになった。既に家族ともかなり馴染んでしまっている。最初父さんもカタリナかあさんも王子だと分かって腰を抜かしたが。


 ジェフリー王子は廃嫡となり、静養と言うことでかなり遠方の別邸にいる。多分心の病が治るまではずっとそこだろうとのこと。

 被害にあった女性には国王陛下からの直々の謝罪と、かなりの額の和解金が支払われたらしい。女性側もあわよくば結婚までと狙ってたところもあるので、それで手打ちということらしい。


「出来たよー」


 いそいそと揚がったミニアップルパイを持ってくるフレディを見ながら、いい加減私も覚悟を決めないとダメだわね、と腹をくくった。


「ねえフレディ」


 手招きをして耳元を借りる。


「なになに?」


「愛してるわ。私で良かったら結婚しましょう?」


 そう言って耳元に軽くキスをした。


 フレディは持っていたアップルパイを乗せたトレイをがしゃーん、と落とした。


「あっ!ごっごっ、ごめん!」


「うんごめん、私もいきなりだった。でも思い立ったが吉日と言うし。考えといてくれると嬉しいな」


 なんとなく気恥ずかしくなってアップルパイを拾う。


 一緒にアップルパイを拾いながら、フレディが呟いた。


「あと5年はかかると思ってた」


「んー、私もその位かかるかと思ったんだけどね。フレディ、子供好きでしょう?自分の子ならさぞかし嬉しいんだろうなって思ったら、早めの方がいいかなーと。ちょ、ちょっと泣いてるの?」


「……今もレラに逢えて幸せだけど、更に結婚して子供の事まで考えてくれてたなんて思っても見なかったから」


 いいトシしてえうえう泣くなみっともない。でもそこがまた私のツボだ。天然あざといわフレディめ。


「じゃ、これからもっと幸せにしてあげるから嫁にしなさい」


「勿論!レラ、僕と結婚しておくれ」


「はい。末永くよろしくお願いいたします」





 童話のシンデレラのように、ガラスの靴もないし、キラキラ眩しい王子様でもなかったけれど、二人は結婚し、3人の子供にも恵まれ、ずっとラブラブで末永く幸せに暮らしましたとさ。






 

お読み頂きありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 第一王子は王太子だったのか、レラはお店を持ったのか、誰が王様になったのか。パン屋の片手間で王太子も王様もできないだろうし。お伽噺なんだけど、すごく気になった。
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