一章劣情に似た衝動《インテンス》 其は憤怒《インペイラー》也 第三話
連載版はじめました。
『小さな幸せの全てをアナタに塗りつぶされたワタシによる復讐劇の始まりだ。
存分に踊ってくれたまえ。なァに、お代は結構―――』
駆けている。しかし宙を浮く吸血鬼は、涼しげな顔で俺の後を飛来。
彼が戯れに腕を揮わば、夜闇より尚深き昏い闇の刃が現出する。
其の数、およそ百と十二……
「ははッ! お上手お上手! 騎士などやめて軽業師にでもなったらどうかね?」
「全くだ、これを生き延びたら考えよう、かッ!」
「嗚呼、それは残念―――キミは今日ここで死ぬのだ」
どこまでも冷徹な言葉と共に飛んでくるは刃、刃、刃。
刃刃刃刃刃刃刃刃刃刃刃刃
刃 刃
刃刃刃刃刃 刃刃刃刃 刃
刃刃刃刃刃 刃刃刃刃 刃
刃刃 刃刃 刃刃刃 刃刃
刃刃刃 刃刃刃刃 刃刃
刃刃刃刃 刃刃刃刃 刃刃
刃刃刃 刃 刃刃刃 刃刃
刃刃 刃刃刃刃刃刃 刃刃
刃 刃刃刃刃 刃 刃刃刃
刃刃刃刃刃刃刃 刃刃刃刃
刃刃刃刃刃刃刃刃刃刃刃刃
空間を埋め尽くし、斬り裂き飛び来る闇の刃に避ける余裕など絶無。
「だからこそ面白い―――!」
右手に掴む聖剣に体内魔力を流し込む。
闇を討ち消滅すは極光の剣。
「光聖極五十四式《<いざ、罪に抗すべし>》」
カキキキキシュシュシュリイィィィィイイィイインンンンヌヌ………激しい音を立てて。
光が、闇を祓う。
「ほう……流石は聖騎士、忌々しい【神】の御業を振るうか」
苦々しい顔を見せる吸血鬼の表情は、まさに苦虫を噛み潰したような顔だった。
その額に一筋の傷が疾走。
「なるほど、階梯A+の光聖極を、無詠唱で行使う、か……」
不味い。直感的に後ろに飛び退ると、一瞬後には、俺の立っていた床が
ガオダゴゴワ!!!
一瞬で歪み、捻じ狂う。
「余程、【神】に愛されているようだ」
「キャアア騎士ルインズ! これは一体……? ハッ、我が教会に土足で忍び込んだ吸血鬼の背後に闇の後光が!? 何をしたのですか、騎士ルインズ!」
「シスターミサイル! ここは危ない、逃げるんだ!」
ミサイルはオロオロと狼狽えながらこちらへ近寄ってこようとしている。拙い。
吸血鬼にシスターだなんて、態々餌を与えてやるようなものだ―――!
案の定ミサイルの方へと向かった吸血鬼はミサイルを捕まえようとする。
「させるか!」
俺は聖剣を起動。無数の斬線を空間に【召喚】する。
ミサイルは吸血鬼に捕まらないよう、胸元のロザリオを掲げ、結界を張ってみせる。
しかしなんやかんやでミサイルは吸血鬼の手に落ちてしまった・・・
宙に浮いていた吸血鬼はトッ……ンンヌ……っと着地すると、微笑を向けてみせた。
「さて、私がここにやってきたのはね、騎士ルインズ君」
吸血鬼は勝者の笑みでこちらを見下ろす。右手には軽々とミサイルを持ち上げて。
「復讐のため、なのだよ」
「復讐だと」
「そう、復讐さ。私の小さな庭園を踏みにじってくれた、【神】へのね」
だから―――
酷薄な笑みを浮かべて、吸血鬼は嗤う。
「神の信徒たる君達を虐殺するのに、なんの躊躇いもない」
「そうか何言ってんだお前!!!!!!」
ミサイルを強く握りしめる吸血鬼。
ミサイルの顔が赤黒く染まる。拙い。やめろ、俺は。
また救えないのか。
「やメローーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
ボン、と軽い音を立てて。
ボンヌ、と軽すぎる音を立てて。
ミサイルが、爆発した。
その身体が力なく、地面に伏すのを見て。
俺は。
「ンンン、堪らない悲鳴だ」
「ああああ嗚呼アアアアあア嗚ああァああ呼アア!!!!聖剣、過剰輝動!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
もはや天の川の如き光の濁流を携え、吸血鬼に飛びかかった―――




