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善良という名の悪意は世の花形
転がり落ちた首に歓声が沸く。その中には自分も混じっている。これは庶民の遊興だ。お偉い貴族様の処刑は自分達の鬱憤を晴らしてくれる。人が死んでいるという事実を前に歓声を上げる自分達は愚かなのだろうか。しかし、そのお偉い貴族様達もこれで民衆の関心を他所に向けているのだ。処刑は一種の娯楽。罪人を処罰出来て民衆の怒りの矛先を変えられる楽しいイベント。それが当たり前の世の中である。自分の記憶にある中で一番の醜態を晒した罪人はきっと彼女になるのだろうと漠然と思った。王子の隣で悲しげに罪人の首を見ている令嬢を見ながら。




