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テレーゼ院長のセフィロト見聞録  作者: 西風の剣
第8章:友人宅への訪問と出逢い
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第3話:植物の精霊と姉妹の想い

 アリーナとアンナの母娘を迎えて歓迎会を開いたテレーゼ姉妹。

 翌朝、テレーゼは彼女を心底慕っている人物?と出逢います。


 1月9日 サブタイトルの表記で「セミコロン」になっていた箇所を修正しました。

 アリーナとアンナの母娘を自宅に迎え入れた夜に、全員での歓迎会が行われ、母娘は美味しい食べ物(特にテレーゼが作った甘口のカレーをいたく気に入ったようだ)や飲み物にとても驚き、かつ喜んでくれていた。


 (そういえば、アデリナ、カトリナ、ヘレナを家に泊めた最初の夜も、食べ物で驚いていたわね・・・何にしても喜んでもらえて何よりだわ・・・)と、テレーゼ。宴が進むにつれ、母娘はだいぶ打ち解けてきたようで何よりである。






 歓迎会の翌朝のこと。今日は、姉妹全員で行う魔法と体術の自主鍛錬はお休みであるが、テレーゼが早起きして施術室の鉢植えに水をあげようと窓際に近寄ると、「ねえさま!」と、テレーゼを呼ぶ滑舌が成長途上中の声が聞こえてきた。

 そして、明らかにここ数日で目に見えて大きくなった、朝日に映えるペルレフォンニュルンベルクの鉢植えから、全長20センチほどの2対4枚の透き通った羽を持った、紫髪で耳が少し細長い、可愛い顔をした妖精のような女の子(作者注釈:彼女の服は魔力を纏うことでその代わりにしている)が現れ、まっすぐテレーゼの所に飛んできて、テレーゼの左肩に止まる。そしてとても愛おしそうに、テレーゼの顔を両腕で抱きしめてきた。


 「姉さま!やっと逢えました♡」と、小さな妖精のような彼女は、心底嬉しそうにテレーゼに話しかけてきた。


 「もしかして、ペルレ?」「はい、流石姉さま!私のことをすぐに解ってくれてうれしいです♡」と、テレーゼ&ペルレ。


 「ペルレは、植物の精霊になるのかな?」


 「はい、姉さまが私を毎日一杯お世話してくれて嬉しかったです♡一刻も早く姉さまに逢いたかったんですけど、3日ほど姉さまに逢えない日が続いて寂しいと思っていたら、今朝になってこの姿になっていて・・・大好きな姉さまに逢うことができました。もう絶対に姉さまから離れたくありません!」


 「ペルレ、ごめんね。妹たちと日本に旅行に行ってたのよ」


 「そうだったんですね。でもこれからは姉さまとずっと一緒にいますから、次は私も連れて行って下さいね。ところで、今まで姉さまの暖かく優しい魔力を身体にたくさん受け続けていたので、私も少しですが魔法が使えるみたいです。きっと姉さまのお役に立てると思います!」


 「何の魔法が使えるの?」


 「確認できたのは、雷魔法と植物の生長魔法と回復魔法、そして防御魔法と空間魔法です。ただ姉さまたちよりも身体が小さいので、何回も使えないのが残念です・・・」


 「そんなにたくさんの種類の魔法が使えるなんて凄いじゃない・・・残念がることはないわ。ペルレの魔法の多彩さは、施術室からも見えるテレビのアニメ番組の影響かしら?あと、口調は大人と同じなのね」


 「魔法のことは多分そうだと思います。姉さまのお役に立ちたいと思っていて、気がついたら使えるようになってました。あと会話は、姉さまに、接骨院で身体を治してもらっていた人たちとの会話を毎日聞いていましたし、テレビも一杯見ていましたので、それでだと思います」


 「ペルレ、初めまして。テレーゼさんの心と身体の中にいるティアナです。今後よろしくお願いしますね」と、テレーゼの身体を借りてペルレに挨拶をするティアナ。


 「ティアナ姉さま、こちらこそよろしくお願いします」と、次姉ティアナの挨拶に、こちらも挨拶を返すペルレ。見た目こそ可愛らしい精霊であるが、精神年齢はこれまでの本植物?精霊?の頑張りにより、大人と同等以上のようだ。






 「テレーゼ姉さん、おはよう。えっ!?その精霊みたいなの、ペルレか?」

 「姉さんおはよう。朝食の準備が終わった。ペルレ?その小さい娘?」

 「テレーゼお姉さん早いんですね。お姉さんの肩に止まっている子がペルレですか?本当に現れてくれたんですね」

 「テレーゼお姉ちゃん、おはよう♪あっ、イーナの妹のペルレだ!わーい♪」

 「テレーゼさん、おはようございます。その一緒に居る小さい人って、精霊ですよね・・・幼い頃に、いるという話は聞いたことがあったんですけど、私初めて見ました・・・」

 「テレーゼお姉ちゃん、おはよう!イーナちゃんの妹ならアンナとも妹よね!家族が増えてアンナうれしいな!」

 と、アデリナ、ヘレナ、カトリナ、イーナ、アリーナ、アンナ。みんなでテレーゼに、朝の挨拶と朝食の準備が終わったことを伝えに来てくれたようだ。


 「アデリナ姉さま、ヘレナ姉さま、カトリナ姉さま、イーナ姉さま、アリーナ姉さま、アンナ姉さま、ペルレです。これからよろしくお願いしますね」と、ペルレが滑舌は幼いものの、口調自体は大人と変わらない挨拶を行う。これには特にイーナとアンナはびっくりしたようだ。あと、妹の誕生を熱望していたイーナもだが、アリーナとアンナは、ペルレから「姉」と呼んでもらえたことが、家族の証に思えてとても嬉しかったようだ。





 ペルレも加えて朝食を行う。流石に9人も一緒だと、笑顔や時折笑い声が聞こえる賑やかな食事で、長姉であるテレーゼは、ほっこりとした居心地の良さを感じていた。


 ペルレの食事のことは心配であったが、幸い精霊になって姉たちと同じ食事が食べられるとのことで、何よりである。鉢植えの「本体」は、精霊として独立した現在も、ペルレの生命力の大きな源になっているとのことで、これまで通りテレーゼが大切に水や肥料を与えることにする。


 因みに、ペルレは元々知人が栽培していたエケベリアで、縁あって植物が好きなテレーゼに、丁度1年ほど前にプレゼントされたものである。ペルレ曰く、テレーゼに迎え入れられる前は、脇芽である彼女が誕生した後、原因は不明だが弱って枯れかけていた本体と切り離されてしまい、その後は挿し木されてペルレだけになったとのこと。話を聞く限り、元の植物から脇芽が発生すると、その続柄が母娘なのか姉妹なのかは不明だが別の人格?になるようだ。

 (同じ植物から生まれたクローンとは言っても別人というか別の個体なんだから、確かに言われてみると納得よね・・・)と、食事中にペルレが話してくれたことについて思い返すテレーゼ。


 ペルレは脇芽として誕生して1年半くらい(イーナとほぼ同じ)とのことで、セフィロトに来て成長が早まったことから彼女は既に開花可能なエケベリアである。成人?の彼女を人間の年齢に換算すると、ヘレナより年上で、アデリナより年下だと思われるが、彼女としては、末妹として「姉」たちから可愛がってもらえることが嬉しいらしい。


 (ということは、今の姉妹は、私が長女で次女がティアナ、その後は、カトリナ、アリーナ、アデリナ、ヘレナ、イーナ、アンナ、ペルレ、という順番になるわね・・・)と、テレーゼ。


 アリーナとアンナは、どちらも新年になってすぐに生まれたとのことで、日本で言う「早生まれ」である。セフィロトの年齢の数え方は、数え年と満年齢の両方が使われているが、マルクトの街やその周辺では、ツンフトマイスターだったジークリットの遠い先祖が、街の内外で強く提唱した満年齢が主流である。故に、それぞれ同い年の早生まれではないカトリナやイーナよりも若干年下であるため、この姉妹の順番に落ち着いた。尤も、そんなことは些細なことに過ぎず、9人の姉妹は今後もお互い仲良くしてくれるだろうことをテレーゼは確信している。






 「それにしても・・・本当にペルレが現れてくれるとは思わなかったわ」と、食事が終わった後に、テレーゼが姉妹全員に心情を吐露する。


 「姉さまが住んでいた日本だと、アニメや漫画とかを除いて、少なくとも目に見える形では植物の精霊がいませんから・・・でも、理由はどうあれ、どんな形でも、いつも姉さまのそばに居られるようになって本当に幸せです・・・」と、ペルレがテレーゼへの強い想いを口にする。


 「セフィロトでは、強い想いと魔力が集まったときに精霊が誕生する、と言われています。ペルレのテレーゼお姉さんに対しての逢いたいという強い想いと、お姉さんの強力無比な魔力があって、ペルレが誕生したんじゃないかと思いますよ」と、カトリナが自分の推察を話す。


 「カトリナの言うとおりだと思う。私がもし同じ立場だったら、やっぱりどんな形でも姉さんに逢いたい」と、ヘレナがカトリナの考えに同意する。


 「難しいことはよく解りませんが、ペルレが植物の精霊になってでも逢いたいと思うくらい、テレーゼさんのことが大好きなのはよく解ります。何の見返りも求めずに私たち母娘を癒やしてくれた心優しいテレーゼさんって、教会で話に聞く地母神様そのままですから・・・もちろん、私とアンナはテレーゼさんが大好きですし、出逢えて本当に幸せです・・・」

 「うん!アンナも、いつも優しいテレーゼお姉ちゃんが大好きなの!」と、アリーナ&アンナの母娘が、セフィロトで篤く信仰されている女神と同等のレベルで心酔している心情を口にする。


 「テレーゼさんの周りには、自然と人の和が広がっていきます。これは間違いなくテレーゼさんの人徳ですよ。だからこそ姉妹がみんな笑顔でいられるんですよ。私はテレーゼさんがこの世界にいる限り、ずっと一緒に居ますから・・・」

 「イーナも、大きな熊だったティアナお母さんみたいに、あったかくて強いテレーゼお姉ちゃんのそばが楽しいし、イーナもずっと一緒なの♪」と、ティアナ&イーナ。アリーナとアンナの母娘同様にテレーゼに助けられ受け容れられ、あまつさえ自らの命への危険も省みずティアナの命すら蘇らせてくれた、そんな誰よりも心優しいテレーゼへの強い想いを口にする。


 「テレーゼ姉さん、いつでも何度でも思うんだけど、アタシたちのところにやって来てくれて、本当にありがとう・・・」と、アデリナが妹たち全員の総意を伝え、感情豊かな彼女は、こらえきれなくなってテレーゼに縋り付いて泣き始め、他の妹たちも寄ってきて、目に涙を浮かべつつテレーゼの温もりを求めて触れてきた・・・そんな自分のことを心底慕ってくれる、健気で心優しい妹たちを持った自分の心が、この上なく暖かくて幸せで・・・涙もろいテレーゼは気付かないうちに目に涙を浮かべていた・・・

 ここにいる妹たちのためであれば、いついかなる状況であっても、たとえ自らの身体や心や命を犠牲にしても微塵も後悔しないだろう・・・自分自身の矜恃にかけて、強い確信を持ってそう言い切れるテレーゼである。






 (これからも、そしていつまでも・・・妹たちとの今の幸せを護れるように、そしてみんながずっと仲良く暮らしていけるように、私は精一杯頑張るわ・・・)と、テレーゼは頬を伝う涙を拭うことなく心からそう思うのだった。

 最後まで読んで下さり、ありがとうございます。


 ペルレは、以前から登場を予告していましたので、お気付きになった方も多かったのではないでしょうか。

 ペルレは末妹ですが、テレーゼとの付き合いが妹たちの中では一番長いこともあって、その身に秘めたポテンシャルは抜群です。本文でも触れたように、登場したばかりの段階で、テレーゼほどではないにせよ、それに次ぐレベルで魔法に長けています。加えて、近い将来、もう1人のテレーゼともいうべき頼もしい存在に成長していくことでしょう。


 次話は、テレーゼがある魔法の実験を行います。

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