帰還
昼
日高ら一行は瓦礫の山を後にし、拠点である高台へ大急ぎで帰っていた。
理由は単純。 お腹がすいたのだ。
「お昼お昼ー。この世界のご飯ってどんなのなんだろ?」
車長席に座る下北が楽しそうに言う。
「安心しろ。俺もまだまともな料理を食べたことがない。」
ティーガーの運転をしながら答える日高。 彼はまだこの世界に来てからパンしか食べてないのだ。
「残念だけど、お昼もパンだと思う。」
「逃げる時日持ちする食料しかもってこなかったしね。」
そう呟いたのは無線手席のリーフデと砲手席のジールだ。
「マジかー。 またパンかー。」
日高が嘆く。
「食べられるだけいいでしょ。」
そう言うのはパッシーだ。彼女は装填手席にいる。
そんなことを話していると突然ティーガーの無線から声が聞こえてきた。
『あーあー。 聞こえてる?』
聞こえたのはムートの声だ。
「聞こえてるぞ。 そっちの様子はどうだ? 」
『問題ないよ。 ねえへルックさん。』
『そうじゃな。 運転のほうもなんとかなっておるぞ。』
へルックとムートは今ティーガーの中にはいない。
二人はティーガーの後ろを着いて来ているテケ車に乗っている。 運転しているのはへルックだ。
出発前にちょっと運転のしかたを教えたらすぐできるようになった。
「へルックさん凄いねぇ。」
『そうかの? 慣れれば簡単じゃぞ。』
「いやおかしいでしょう?!普通の人なら運転すら出来ないですって!」
抗議の言葉を言いつつ外を見ると、いつのまにかテケ車が並走していた。
「へルックさん?!」
『ほっほっほっ。いやムートがな。』
『日高さーん! 競走しよう!』
その言葉を聞いた下北が大声で言う。
「競走?いいよやろう! みっちー速度上げて!」
「はぁ?! 嫌だよ履帯外れるだろ!」
日高は嫌がるが、横を見ればリーフデがキラキラした目でこちらを見ているし、後ろからはジール、パッシーからの声も聞こえてくる。
「くっそぅ! どうなっても知らんからな!」
彼はそう叫び、ギアを変更。そしてアクセルペダルを踏み込む。
その瞬間ティーガーは爆音を上げ加速する。
ティーガーVSテケ この世界では初であろう履帯車でのカーレースが始まった。
高台に到着した日高達はふらふらしながらティーガーを降りる。 舗装されていない道を全力で走ったため揺れまくったのだ。
ちなみにレースの結果は言うまでもないだろう。
出せる速度が同じくらいなら人数が少ない方が速いに決まってる。
そんな日高らの所に待機組の人達がやってくる。
「お疲れだなお前ら。凄い音だったがなにしてたんだ?」
そういって近づいてきたのはガタイのいい男性だ。
「いえ、少し競走を。」
「はっはっは。楽しそうだな。 えーと名前はなんだっけ?」
「日高です。 日高道行。」
「おお、道行って言うのか。 オレはブリクスムってんだ。」
そう言って握手をかわす。
「おや、大丈夫パッシー? 」
別の場所ではパッシーが女性に介抱されていた。
「ヘルダラさん。 ありがとうございます。 うう、気持ち悪い。」
どうやら車酔いしたらしい。
「ほら、向こうで寝てなさい。」
パッシーはヘルダラに連れられ、木陰の方へ移動していった。
「そう言えば」
思い出したように日高が話し出す。
「ブリクスムさん。捕虜の二人はどんな様子ですか?」
「あの二人の様子なら今はヴォルクとストラールの奴が見てるはずだ。 行ってみるか?」
「ええ、よろしくお願いします。」
二人は捕虜のいる場所へ向かった。