ep.1
――これは、とあるの男の手記の、その断片である。
8/31
今日は何と素晴らしい日であろうか!
私が長年研究してきたものが遂に完成したのだ。
若いころからの私の夢が、何十年も経てようやく叶った。今なら言えよう、これを完成させるために私はこの世に生を受けたに違いない、と。この発明は、人類の文明の発展に大きな変化をもたらす。間違いなく。
だが、まだ油断はできない。
明日からは完成品で最終テストをするように予定されている。
被験者は勿論私だ。万全を期して造ったのだ、欠損はないはずだが、もし他人で人体実験をして何かあったとしたら、それは私の科学者としてのポリシーに反する。
『自分の発明品には責任を持つ』
それは科学者として最も重要なことだと私は思っている。
……夜も深い、今日はここで終わりにしよう。
9/4
実験は成功だ!
あの後から身体に異常がないか48時間体制で精密検査を行ったが異常は一つもない。
念には念を押し、追加で実験を行うが、自身の経験からこれは大丈夫だろうと確信している。
開発者がいうのも可笑しいのだが、これは正に『奇跡』だ。自惚れているわけではないが、自分を褒めてやりたい気分である。
……前にも記述したが、これは近い将来、人類の役に立ってくれるであろう。それに自分が加担できたことがとても光栄で、非常に感慨深い。