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海運国家エーデンス王国

ーー エーデンス王国   side



「それで、サーカエルの街に入港した巨大な船のことは何か分かったのか?」

エーデンス王国の執務室で国王を交えた話し合いの最中に宰相が港を管轄する大臣に声をかけた。

「はい、現場の商業ギルドの職員と港関係者の話によると。

 ・船はイスタンブル王国のカージナル辺境伯領から来ている

 ・王国または貴族籍の船ではなく一般市民の個人船である

 ・マストや帆はなく謎の推進力で風邪に左右されずに航行できる

 ・馬車や人をそのまま積み下ろしできる機構がある

 ・乗組員はたった2人であったと

ということが今まで判明したことです。」

「あの巨船をたった2人で、信じられぬな。」

宰相がそう言うと

「それでどのくらいの荷を運べそうなのか?」

「今回の荷は馬車120台、人150人でございます。」

「何!そこまで積めると言うのか。」

「いえ、今回集まった商人らがということで、その倍は積めそうだと話しておりました。」

「信じらねぬ規模じゃな。」

「それと今回の件とは話が違うかとも思いましたが、時間停止の機能がついた大容量のマジックバッグを隣国で売り出したと言う話が聞こえて来ました。」

「それはダンジョンから出たと言うことか?」

「いいえ、その様なマジックバッグを製作できるものがいる様です。」

「それは是非欲しい品物・・・いや人物であるな。その情報もしっかりと拾って来なさい。」

「はっ。承知しました。」


海運貿易で財を成しているエーデンス王国にとってはとても興味深い話であった。



ーー サーカエル港の商業ギルド長  side


この港を管理しているのは、王国と商業ギルドである。

海運都市を目指しているエーデンス王国は、国内の港を全て直轄地として管理しており、領主を通さずに貿易の状況を把握できるため、正確な港と流通の状況を管理していた。


サーカエル港の商業ギルド長を任されているクックは、先日の巨大な船のことを考えていた。

「あの様な船が今から先の世に出てくる可能性は高い。しかも大きいということは貿易品の流通量だけではなく人の移動も大きくなると言うことだ。」

「しかし、あの船は海の魔物対策はどうしているのか?運だけで航海は出来ない。安全と速さがなければただ大きいだけの船ということで終わるかもしれない。だがあの不思議な推進力は魅力的だ、風まかせのガレオン船ではなく航海の時間が確実に予想できるからだ。」

などと独り言を口にしながら物思いに耽っていた。

そんな時来訪者が。

「失礼しますよ。」

と言いながら現れたのは、港の管理を国から任されている港湾局の局長カリンだった。

「これはカリン様、わざわざにお出向き何かございましたか?」

「何をのんびりしているのだクック商業ギルド長。先日の巨大船の情報を全て集めろと国王自らの下命であったはず。」

「あ、はい。その件は承知しております。もう直ぐあの船に乗り込んだもの達が戻ってくるところ、そこで詳細な情報を手に入れようと待っているのです。」

「ほう、そうであったか。そういえばここから10人ほどの者が雇われたと報告が上がっておったな。」

「そうです、あの船の中に入りくまなく調べる様に指示しておりますので、吉報をお待ちください。」

「うむ、それでは吉報を待っておるぞ。」

と言うとカリンはギルドを後にした。

「ふーっ。突然大物が現れると心臓に悪いですね。」

と額の汗を拭うクックだった。



ーー 臨時船員からの報告



港湾局長の訪問の次の日、クックが待っていた人物らが戻って来た。

「ギルド長ただいま帰りました。報告内容が山の様にございます。」

「そうであろう。では船の性能から報告してもらおうか。」

「はい。我々が乗り込みこの港を出てイスタンブル王国の港に着いたのは、事前の情報通り2日後でした。」

「情報通りか。して動力は何か分かったか?」

「はい、無理を承知で船長という男に色々と聞いたところ。」

「やはり何も答えなかったか」

「いいえ、すべて教えてくれました。」

「何、全てを教えてくれたとな。」

「はい。動力は魔石をエネルギー源に内燃機関という構造のエンジンなる機構が水の中で水流を作り進むのだそうです。」

「・・・よくわからんな。」

「さらに船の側面に水流を作り出す魔道具が備えられて、港内で船の方向を簡単に変えられるそうです。」

「ああ確かに出港の際に回転していたな。」

「そうです、だから船尾から乗り込んだ馬車が港に着いた時に船尾から出ることが可能なのです。」


「積荷の出し入れはわかった。それで魔物対策はどうしておるか聞けたか?」

「それですが、あの船の全体にドラゴンの鱗が使われておりました。」

「何!あの巨大な船全てにドラゴンの鱗が・・・いくら金を出せば作れるのか。それでは2隻目は無理な話か。」

「いいえギルド長、イスタンブル王国では後数隻同規模の船を作る予定だそうです。」

「何それは本当か。イスタンブル王国も海運業に力を入れ始めたということだな。」

「それが少々違います。」

「違う、とはどういう意味だ?」

「船を作るのは王国ではなく、あのファーストという巨船の船長が個人で作るそうです。」

「しかし、あの船には謎のエンジンなる動力やドラゴンの鱗が大量に必要なのだろ?個人でさらに作るという事は現実的に難しいだろう。」

「いいえ、それがあのファーストなる男はエンジンなる動力源とドラゴンの鱗を自分で調達できるそうで、今年のうちには2〜3隻は出来上がりそうだと聞いております。」

「・・・信じられぬな。報告できる情報なのか。」

ギルド長は情報の信憑性に確信が持てなかった。

しかし、それでもしないわけにはゆかぬ。


「他にはどんな情報があった?」

「あの船は夜でも航行できる機構が備わっておりました。」

「それは星か沿岸を確認しながらという事であろう。」

「いいえ、星の見えない日や視界の悪い風雨の日でもです。何でも方向と現在位置を船の中で確認できるそうで、航路を間違える心配もございません。」

「そんな技術あり得るのか?騙されたのではないか?」

「それが実際に沿岸の地形が表示されている円盤がございまして、そこに船の位置が表示されて動いてございました。」

「それこそ信じられぬ技術ではないか。イスタンブル王国がそこまで・・・いや、あのファーストという人物がその鍵を握っているということか。」

「はい、それに間違いございません。」

「それで船の船員は本当に2名しか居なかったのか?」

「実はそれも正確ではありません。船を動かしていたのはファーストという船長1人で、もう1人のドワーフは船大工で処女航海に乗り合わせただけだと申しておりました。」

「何、あの巨船をたった1人で操舵することが可能だと!それこそ信じられぬな。」

「それで積荷や人の乗船はどうなのだ?」

「あの船は荷物だけではなく人を運ぶことにも特化しておりました。人の休む客室が200室、1〜4人の部屋で広いホールに大勢が食事をすることができる食堂も備えられておりました。」

「それは真か?それでは大勢の人間が安全な旅をすることが可能ということになる・・・これは移動の革命と言えるな。分かった、文書にして渡してくれ直ぐに港湾局長の経由で王国に報告をする。」

「問題ありません、すでにこれに。」

と報告者は分厚い書類束をクックに手渡した。


「時代が変わる音が聞こえそうだ。」

クックのこの呟きは誰の耳にも聞こえていなかった。



ーー  エーデンス王国 王城の一室


「この報告を信じろと言うのか?」

宰相が大臣に尋ねる

「はい、真に信じられぬ報告ではありますが。これは実際に船に乗り込み隣国まで乗船したギルド職員の報告で、あの船の船長に直接尋ねたことがここに書かれていると言うことです。」

「・・・信じられぬ。これが本当であれば・・・我がエーデンス王国が一個人の後塵を拝することになるのだぞ。」

「実は冒険者ギルドを通じてイスタンブル王国の情報を探っていたところ次のことが判明しました。

・カージナル辺境伯領にとても優秀なドライ家と言う準男爵の一族がおり、そこの縁者があの船の船主で船長のファーストという男だそうです。さらにその一家は西部大森林の開拓をしており山の様に魔物を狩りさらには、マジックバッグを作製販売している

との噂でありました。」

「待て待て、それこそ信じられぬ。偽の情報で我らを惑わせているにではないか?」

「この情報については、イスタンブル王国の商業ギルドも関わっているようで信憑性は高いと思われております。」

「う〜む。分かった。結局あの船の船主が自分で素材を集めて船を作っているから何艘でもあの規模の船を作れるということなのだな。」

「はいその通りだと思われます。」

「王国が関わっていないのあれば、我が王国でも購入が可能ということではないのか?至急その点を確認せよ、可能ならば最低でも一隻は確保せよ。」

と命じて宰相は陛下に向き直る

「今の話話半分としても新しい航海技術がある事は間違いないようじゃ。我がエーデンス王国に取り入れ出来るものは金を惜しまず手にいれよ。」

「はっ、仰せのままに。」

という話で会議は終了した。



ーー その頃のファーストは


エーデンス王国が信じられぬ情報に騒いでいた頃、ファーストは増産のための素材集めに大森林に分け入っていた。

「船の素材としては地竜が一番だろう。ただ鱗であるのなら他のドラゴンでも同じ様な効果がある可能性も十分ある。特に水竜や飛竜の鱗は手に入れる必要がある。」

と言いながら森の奥へと進む。


5日後、ファーストはドラゴンの巣の様な岩場を見つけたのだった。

「ここはドラゴンの繁殖地なのか?それぞれの種類のドラゴンが塊になって休んでいる。」

とその異様な光景を感心しなが眺めていたが。

「そう言えばドラゴン種は、個々で他者にあまり関与しないと聞いたことがある。戦いは基本一頭がしていても他のドラゴンは知らぬ顔で参戦しないとの噂であったな。それならここでドラゴン狩放題ではないか。」

まだ可能性の話のみで現実性もないのにそれを信じてほくそ笑むファーストだった。



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