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初航海は驚きと感動の連続

ーー 初航海


船の内側が出来ていた。

ウヰスキーという名のドワーフは寝る間を惜しんで作り上げてた様だ。

ファースト(シフト)は差し入れの酒を樽で持ち込むと

「これから先は暫く俺の仕事だ。一杯やって英気を養ってくれ。」

というと

「ああ、飲みながらお前の仕事を眺めているぜ。」

と言いながらどかっと座ると酒を飲み始めた。


先ずはエンジンを乗せる。

船尾側の船底まで行くと、マジックバッグからエンジンを取り出してスクリューにつながる穴に動力の回転軸を差し込み船底にエンジンを固定した。

今度は補助エンジンの取り付けだな、水流の魔道具を前後左右に4機取り付ける。

船から降りて外殻の取り付けだ。

吃水線より下には地竜の腹側の鱗を魔力を込めながら変形させながら船体に貼り付けていく。

その様子を興味深くドワーフが見ている。

最後の仕上げは吃水線より上の外殻だ、地竜の上側の鱗を同じ様に貼り付けていく。

するとドワーフが

「今使っている素材は何だ?」

「これか?これは西部大森林の地竜の鱗だ。」

「なんだって!そんな大層な素材をお前・・自分で・・・。」

「仕入れ先か?自分で狩って来たんだよ。コイツは船にもってこいの素材だぞ。」

甲板の上の外郭は軽さと魔法に強いワイバーンの皮を貼り付けていく。

おおよそ2日で巨大な船の外殻が完成した。

操舵室の機関もエンジンと接続していく。

後はエンジン部の防水加工と各部屋の内装だ。

「後は頼んで良いかな?」

と聞けば親指を出して酒を飲むドワーフ。



10日後、完成の知らせを受けて港に向かうと、既に船は港に係留されていた。

港が手狭に見えるほど船は大きかった。

「この港も広げる必要があるな。」

と呟きながら船の甲板に目を移すとドワーフが手を振っていた。

「遅かったな、早く上がって来いよ。」

取り付けられた縄梯子を伝い甲板まで上がり操舵室に向かう。

内装は問題ないな。

ファーストは船内を回りながら必要な魔道具を設置しながら確認をしてゆく。

燃料は充填可能な魔石だ、燃料室と書かれた部屋に山の様に積まれた魔石が確認できる。


「船乗りはいつ来るんだ?」

「ドワーフが今直ぐにでも航海に行きたい感じで聞いて来たので。」

「俺1人いれば動かせるぜ。処女航海に行くか?」

と言い返せば、キョトンとしていたが意味がわかるとニヤリとして

「そうか、なら出航だな。」

と応じた。


ファーストがエンジン始動のスイッチを押す。

合わせて24気筒のエンジンの静かな振動が感じられる。

予備エンジンを動かしながら桟橋から横移動をし始めた船。

「おお!動いたぞ、しかも横に。」

興奮するドワーフ。

方向転換も問題なく港の出口を目指して微速前進する巨大な船に周りの小舟の漁民が驚きながら見つめる。


外洋に出てからが本当の意味での航海だ。

東に進路をとって速力を上げる。

「何と早い。これが風の力もいらない船の速度か。」

ふとドワーフが操舵室の機器に目をやる。

「ここに映っているのは・・・海岸線の様に見えるがまさか!海図なのか?」

「ああまだ完成していないがな、陸側からの海岸線は結構調べたんだよ、後は海から調査すれば貿易に必要な海図が完成するはずさ。」

と言いながらファーストは隣国の港を目指した。


今までのガレオン船なら、風まかせの航海で5〜7日掛かっていた航海も2日で走り切ったこの船の実力に唸るドワーフ。

港に入ると港の中は大騒ぎ。

なんせここでも港を半分ほど占拠する様な大型船が入港して来たからだ。


港を管理する職員が慌てたような様子で船から降りてくるファーストら2名を迎えながら

「何処の所属の船ですか?」

「イスタンブル王国カージナル辺境伯領の商業ギルド所属の船です。」

「ギルド所属・・・個人の船ですか?」

「そうだ、俺が船長で船主のファーストというものだ。」

と答えると

「入港税を頂きたいのですが・・・この大きさでは・・・金貨10枚ほどになるかと。」

「それで構わない、記録しておいてくれよ。」

と言いながら税を払い街中に向かう。



ーー 買い物しまくり、商人乗せまくり



巨大な帆の無い船が入港した事は直ぐに噂となり、港には一目見ようとする野次馬と商人が溢れ出していた。

ファーストは商業ギルドに立ち寄ると

「今港に空船を入港させている。イスタンブル王国方面に向かう商人や荷が有れば格安で積んで行くと情報を出してくれ。出航は3日後だ。」

と依頼を出して商業街に足を向けた。



ファーストはイスタンブル王国では見かけない果物や生鮮食品を大量に買い漁り、流行っている食堂にドワーフを連れて食事を摂ることにした。

「大騒ぎになってるな。」

「そりゃそうさ、あれだけの大きさの船にマストもないのにどうやって動いているのか不思議がらないことの方がおかしいだろ?」

「自分で作っていてもおかしいと思ったからな。」

「だろう、だがそれが常識になるのに時間はそうかからないはずだよ。」

「機構は理解したが、海の魔物相手にとなると話は別だ。あれには地竜の素材が使われてその心配はずいぶん低いだろうが他の船ではそうは行かんだろうな。」

「それならみんなでドラゴンを狩れば良いだけさ。」

「簡単に言うな!それが出来れば苦労はない。」

素材の調達が今後の課題か。


船内の個室はその辺の宿より豪華な部屋になっていた、

「この部屋なら宿の泊まる奴はいないだろうな。」

ドワーフが言う

「いや意外と陸が恋しくて外に出る奴がいるはずさ。」

「そいうものか?」


「それで明日出航ということで、かなり商人が集まっているが荷はどうやって積み込むんだ?」

「おい、船尾が開く様になっていただろう。あの扉を開いて港に接続すると馬車でそのまま荷が積めるんだよ。」

「ああ、そういう機構なのか。やっと理解できたぜ。」


ファーストはギルドを通じて乗り込む商人と荷を確認すると船を旋回させて船尾のハッチを降ろして馬車が乗り込める様にした。

それを見た商人らが驚きながらも馬車で乗り込み始めた。

商業ギルドの職員が、商人らを確認すると船内の船室に案内してくれた。

「こりゃ、凄い。荷積も楽だし船内の部屋は高級宿と変わらねえ。今回は安くで載せてくれたと聞いたが倍出しても文句ねえな。」

という商人の声が聞こえて来た。

船内に調理場があり臨時で雇った調理人が5名、食材と共にスタンバッテいる。


次の日の朝、汽笛を鳴らして出航の合図。

静かに船は港を出ていく。

沖に出ると信じられない速度で走り出す船に乗り込んだ商人らは驚きの顔で今後の貿易の話をし始めた。

「話によると2日でイスタンブル王国に着くそうだ。それなら生鮮食品が運べるしかもこの荷積みのシステムがいい。馬車ごと積むから乗り降り時の無駄がねえ。これからは船の時代かもしれんぞ。」

「ああ俺もそう思うぜ。こんな船室なら何日でも乗ってられるぜ。しかしどうやって進んでいるんだ?速さもだが小回りなんか信じられねえぜ。」

などと言う話が耳に入る。


2日後カージナル辺境伯領の港に着いたファーストの船から続々と馬車が吐き出されていく。

それを見たイスタンブル王国の商人らは、

「流通が変わった!乗り遅れるな!」

と口々に話しながら船でやって来た商人らと取引や船旅の感想を聞いていた。


船長室に訪問者が現れた。

商業ギルドの所長ウレール氏とセイジー商会長ヤスーイ氏の2人だ。

「失礼しますよ。おお、やっぱり貴方ですか。ファースト様。」

「さすが耳が早いですね、今後のこの船の利用の件ですか?」

「そうです。何でも隣国まで2日で行け、天候に左右されにくいとか?」

「そうですね、余程の嵐でなければ、問題なく予定通り着きますね。」

「しかも馬車ごと積荷を積めるとか?」

「船の揺れを抑える機構が付いているにで、馬車ごと積んで馬は馬舎で管理すれば荷の積み下ろしの手間が省けます。」

「船室も中々良いと聞きました。」

「後で確認してもらって良いですよ。高級宿に引けを取らないと自負してますから。」

「頼もしい、それで一度の航海で何処まで行かれる予定ですか?」

「今は一隻しかないので、あまり遠くまでは行けませんが数が揃えば定期航路で3〜5くらいの国を繋いでも大丈夫だと思いますよ。」

「それは素晴らしい。是非我がが商会にも参加させてください。」

「勿論です。」

ということで、管理と運営を商業ギルドに任せて形でファーストは2隻目の船の作成のための素材を求めて森に入るのだった。



ーー カージナル辺境伯   side



スタート・カージナル辺境伯は港に現れた巨大なマストのない船についての報告を受けていた。

「それでその船は個人の所有の船ということでいいのか?」

「はい辺境伯様、船大工のウヰスキーと商業ギルドに登録のファーストなる人物が3ヶ月ほどで作り上げたとに情報です。」

「あれだけの船を3ヶ月で・・・。それでどうやって動いているのだ?隣国の港までたった2日で行けるとの話ではないか?」

「はい、隣国からの商人に尋ねたところ間違いないとの回答でございました。」

「もしあの船が定期的の隣国との交易に使えるならば、我がカージナル辺境伯領は貿易でかなり潤うと思うが?」

「はい、間違いないかと。至急船主を呼びつけてその点を確認いたします。」

「うむ、あまり強硬な態度で臨むなよ、他所に行かれてはこちらが困る。」

「はい、肝に銘じておきます。」

領主の名を受けた家臣が港に向かって出発した。


執務室に1人残った領主は

「あの巨大な船を我がカージナル辺境伯で持てれば、国防にも強みが出るが・・・どれほどの値がするやら。」

と港を持つ領主として防衛力の向上は喫緊の問題であった。




ーー 船大工ドワーフのウヰスキー  side



初航海から帰って来たウヰスキーを待ち構える様に、同じ船大工らのドワーフが

「おい、ウヰスキーよちっとばかり顔を貸な。」

と最高齢のドワーフが引き摺るようにして船大工組合の建物にウヰスキーを連れて行った。


「それであの船のカラクリは何なんだ?」

「動力のことか?それとも魔物がいる海を平気で航海できる能力か?」

「どれもだ。たった2日であそこまで行けるたあ信じられんね。しかしそれが事実なら大革命じゃねえか。何?海の魔物を恐れずに航海できるのか?」

「ああ、船の外殻を覆っているのは地竜の鱗だ。その辺の魔物なんか屁でもねえ強さだよ。」

「ドラゴンだと!そんな素材をあの大きさの船に・・・信じられねえ、いくら掛かっているんだ?」

「素材は持ち込みだ、俺への支払いは金貨3000枚。同じ規模の船なら俺だけでも作れるが、外殻と動力のエンジンという機関と水流魔道具はアイツじゃなきゃ作れねえよ。」

「アイツたあ、一緒に乗ってた若え男か?」

「ああそうだ、ファーストという名の男でな地竜を1人で狩れる男のようだ。」

「ドラゴンスレーヤて奴か、それでこれからそうするんだ?」

「アイツの話じゃあの手の船を何艘か作って定期航路を作るて言ってたな。」

「その仕事、俺たちにも回ってくるのか?」

「勿論そうじゃなきゃ俺が忙しくて死んじまうよ。」

「ガッハハハ、そうかそれならいい。話が来たら教えてくれ、待ってるぜ。」

とウヰスキーの背中を叩いてその日の話は終わり、ウヰスキーが自分用に買って来ていた隣国産の酒を皆で飲むことになった。

「また買いに行けばいいか」



「面白くなって来たね。予想以上の影響力だ。これからも見ていこうかね。」

何処かで笑う神がいた。




ーー 辺境伯との話し合い



ファーストが辺境伯に呼ばれたのは、港に帰ってから3日後のこと。


「お初に御尊顔を拝見いたします、ファーストという商業ギルドに属する商人です。」

と辺境伯に挨拶をすると

「うむ、その方の活躍は耳にしておる。先だってはマジックバッグの販売をしていた様で、我がカージナル辺境伯も一つ買わせてもらったところだよ。」

と和やかな話から始まり、本題の船の話になった

「ところで、あの船は後何艘作ることが可能かな?」

「はい、可能であればスガルの港と他国の定期船を考えておりますので、最低でもあと2隻です。」

「そのことで相談だが、我がカージナル辺境伯軍に防衛のために一艘欲しいのだが。」

「そのことですが、船の中身自体は船大工のウヰスキーがいくらでも作れると思いますが。問題は船の外殻であるドラゴンの素材の入手にあります。それが手に入れば値段度外視で領主様にご購入していただけると考えています。」

「ドラゴンの素材がいるのか、それさえ入手できれば我に売ってくれるということだな。」

「勿論でございます。私はカオス村のドライ家の縁者になりますので、ご安心ください。」

「そうか、ドライ家の者か。分かった良い知らせを持っているぞ。」

ということで今後の港の使用許可をもらい貿易の目処が立った瞬間だった。



帰りゆくファーストを屋敷の窓から見つめる目が幾つか。

以前森で助けられた青年と馬車の中にいた謎の人物の目であった。

「お父様、今の方は?」

「今港に停泊している巨大な船の持ち主でファーストという者だよ。」

「やっぱりファースト様ですのね。」

「お前達が以前助けられたと言っていた恩人が彼で間違いないのか?」

「はい、兄上。彼が恩人のファースト殿に間違いありません。」

「そうかそれなら、近いうちにその件の俺をせねばな。」

と言いながら歩いて街並みに消える人影を見つめていた。



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