自重を知らない錬金術師
ーー 宿の部屋で錬金術作業
ギルドで聞いた商人の話を元に時間停止の効果を持つマジックバッグの制作に取り掛かる。
収納量は
・大〜屋敷程度の量
・中〜馬車15台分
・小〜馬車3台分
大については売り出すのは控えておこう。
中を金貨1000枚、小を金貨300枚で話をしよう。
と考えてそれぞれ5つずつ制作した。
商業ギルドにと言う建物を見つけて中に入り受付に行くと
「本日のご用件はなんでしょうか?」
「売りたい物があるんだが、登録した方がいいのかな?」
「売る物によりますが、量が多いまたは高価な場合は登録した方がお得だと思います。」
「それなら登録をお願いするよ。」
と言うと紙を差し出しながら
「ところで何をお売りいただけるのでしょうか?」
と聞いて来たので、
「時間停止効果のあるマジックバッグだよ。」
と答えながら書いていると、バタバタと裏の部屋に行き何事か話している様子。
書き終わった紙をテーブルに置いて待っていると、1人の男性を連れて戻って来た。
ファーストの書いた紙を受付嬢に渡しながら男性は
「先ほどお話しされたマジックバッグは今お持ちでしょうか?」
「あああるよ。」
と言いながらポーチ型のマジックバッグから二つの大きさに違うマジックバッグを取り出した。
この時点でファーストがマジックバッグを持っていることが分かる。
「これの効果と収納量は?」
「大きい方が馬車15台分、小さい方が馬車3台分でどちらも時間停止の効果がある。」
と答えると驚きながら
「確かめてもいいでしょうか?」
「ああ構わないよ。」
と答えてバッグを渡す。
「明日また来るから確認しておいてくれ」
と言い残しギルド証を手に外に出たファーストは、冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドの待合室の席に座り軽食を頼んだファーストは、先日の商人を探していた。
すると昼頃になってあの商人が仲間を連れてやって来た。
「商会長、今度のには少しばかり多くはないですか。今までの警護では心もとない感じがしますが。」
配下の男が心配そうな顔でそう声をかける。
警護依頼に来た様子の商人達、荷物が多く警護を増やすか悩んでいる様子。
ファーストはそんな2人に近づくと
「ああ、間違ったらすまないが商人で間違いないかな?」
「はいその通りです。私はセイジー商会長のヤスーイです、何か御用ですか?」
「ええ、この間ここで貴方が話していたのを聞いていて力になれるのではと思い声をかけました。」
「先日ここでの話ですか?・・・船の話のことかな?」
「そうです。今商業ギルドに商品を預けたのですが貴方なら有効に使ってもらえる気がするので一言声をおかけしました。」
「私に利がある・・・まさか!」
急に小さな声になり
「時間停止効果のあるマジックバッグですか?」
「はいその通りです。明日には検証も済むでしょうから今のうちに予約をすることをお勧めします。」
「あのう、量は如何でしょうか?」
「馬車で言えば3〜15台分ですよ。」
「15台分!幾つでの話ですか?」
「大きいものが一つでです。」
と言うと配下の男と真剣な話をしだし慌てるようにギルドを後にして出て行った。
ーー 商業ギルド side
商業ギルドでは今、大騒ぎになっている。
先ほど男が持ち込んだマジックバッグの性能検証のため、休みの職員までも呼び出して検証を進め始めた。
「小さな方は先ず時間停止の確認をしよう。大きな方は木材市場に行って量を確認するんだ。警護も頼めよ。」
と所長のウレールが捲し立てる。
このギルド始まって以来の大仕事となる。
「私の勘ではこれはダンジョン物ではなく、錬金術師が製作した物に違いない。多分他にも同じ物があるはず、ここで良い関係を作れば私は幹部に栄転間違いない。」
とニヤけ顔が収まらない感じで値段を考えていた。
ダンジョン物のマジックバッグは
・時間停止の効果があり、馬車1台分〜金貨1000枚
・時間経過が遅い効果あり、馬車3台分〜金貨800枚
・時間経過の効果なし、馬車1台分〜10台分、金貨100枚〜500枚
と言うのが相場と言われている。
ファーストの考えた値段は安すぎるのだ。
そんな商業ギルドに商人が慌てた感じで入って来た。
受付嬢が要件を尋ねると。
「ここにマジックバッグを持ち込んだ者がいるでしょう。検証が済めば私が買い取りたいので予約に来ました。いつ頃値段が決まりますか?」
「少々お待ちください。」
受付嬢が裏に引き篭もり暫くすると所長と出て来た。
「どこでその情報を?」
「持ち込んだ本人が私に声をかけてくれました。」
「そうですか、今検証中ですが問題はバッグが2種類一つづつあると言うことで、どちらをお求めですか?」
「値段次第ですが・・・出来れば2つともまたは大きい物を、それがダメならば小さな物を複数個お願いしたい。」
「持ち込まれたのは2つですが、まだあると思いですか?」
「多分私の勘ですが・・・まだお持ちの気がします。」
「分かりました明日には検証も済んでいるでしょう。朝一番でお話ししましょう。出来れば彼の方も呼んでもらえればさらにいいお話ができそうですが。」
「そうですな、ウルイ。冒険者ギルドに行って来なさい。」
と配下を向かわせておおよその値段を聞いてお金の準備に走り出した。
冒険者ギルドにはまだファーストの姿があり、明日1番の面会が話し合われた。
ーー セイジー商会長 ヤスーイ side
今回王都の本店からカージナル辺境伯領に偶然帯同して来たが、この様な大口の商談に化けるとは運が良いとしか思えない。
あの若い男は、冒険者ギルドに加入していてたまたま私たちに話を小耳の入れてから、数日のうちにマジックバッグを用意したことになる。
用意したと言うか製作したにではないだろうか?
身に付けていた装備品も一点物のような高品質の感じがしていたし。
ここカージナル辺境伯領においては、王都でも噂の子供がいると聞いているし・・・まさか関係者ではないだろうか?
ヤスーイ商会長はお金を準備しながらそんなことを考えていた。
次の日の朝。
商業ギルドに集まる関係者。
「ファースト様どうそ、皆様お待ちです。」
受付嬢にそう言われながら別室に入るファースト。
「遅れた様で申し訳ありません」
と言いながら頭を下げたファースト。
「いえいえ、時間は指定していなかったのですから問題ありません。」
と答えるウレールギルド所長に頷くヤスーイ商会長。
「来てそうですが、昨日の検証結果と今後の取引時の値段交渉を行いたいと思います。」
「どうぞ」
「先日の検証の結果、ファースト様の申告の通り小さなバッグが馬車3台分強、大きなバッグが馬車15台分強でどちらも時間停止の効果が認められました。」
「おお!」
報告に感嘆するヤスーイ商会長。
「そこで値段の話になるのですが、その前に確認ですが。同じ物を今後も提供いただけるか、今回の一度のみかで値段が変わります。」
と言う所長にファーストは
「ハッキリ言えば今後も提供は可能です。私は出来れば航海による大量物流ができれば良いかと考えています。」
「おおそれは私も同じ考えです。」
すかさずヤスーイ商会長が応じる。
「しかし船による物流は幾つかの問題があるため、そこまで発展しないのではないかと考えられています。」
所長が商業ギルドの見通しを話す。
「いいえ、今後船は大きく発展しその輸送能力は大きくなると断言します。」
と言い切るファーストに
「そこまで言い切る根拠がおありなのですね」
とヤスーイ商会長。
「有ります。ただしその技術をどう開示するかが問題です。今回はマジックバッグと言う魔道具で物量を増やす事を優先しましたが、航海の安全と正確さを見せることができれば皆さんの考えを変えられると思っております。」
とファーストが言うとヤスーイ商会長が
「支援が必要な場合は私が全面協力を惜しみません。」
と言い出し、慌てて所長も追随した。
「ゴホン、では値段の方ですが。大きい方を金貨3000枚、小さい方を金貨800枚ではいかがでしょうか?」
所長がギルドとしての評価額を提示する。
「高すぎませんか?」
「そんなことはありません、まだ安い方だとも思えます。」
「そうですか、そんなに高いと元を取るのに時間がかかりすぎますよね。今回は特別その半額ではどうですか?」
「半額ですか?しかしそれでは今後の取引に支障が・・・。」
「いやいや、先ほどもヤスーイ商会長が今後の事業拡大の際に前面支援を申し出てくれました。その分を差し引いてと言うことではどうですか?」
「ファースト様がそう言われるのであれば、ギルドとしても問題はありませんが」
するとヤスーイ商会長がファーストの手を取ると
「セイジー商会はこのご恩に必ず報いてみせます。二つとも買取でお願いします。」
「分かりました。ただギルドにおいても目玉商品がないのはお困りでしょうから、同じ物を再度提出しますのでこちらは正規の値段でよろしくお願いします。」
と2つのバッグを取り出して預けた。
「やはりお持ちだったのですね、と言うか貴方がお作りになられたのでしょうか?」
所長がバッグを預かりながら質問する
「詳しいことは言えませんが、製作者と私は近い関係にありますと答えておきます。」
と言葉を濁して、取引は終了した。
その後セイジー商会がファースト連絡を入れる手段を尋ねて来た。
「カージナル辺境伯領ならここ商業ギルドに、王都であればこの住所のドライ家にお願いします。」
と紙を手渡した。
それを見たヤスーイ商会長は
『やっぱり間違いない、噂の関係者だ。』と心の中で納得した。
ーー 船を作るぞ
次の日ファーストは南の港に立っていた。
「ここが港か、もう少し大きいと思っていたが・・・拡げるのは問題ないか。」
と言いながら港の地形や湾の深さを確かめていた。
その後、係留されている船を見ながら漁協の男性に
「あそこに見える船がこの辺りでは一番大きいのかな?」
と3本マストのガレオン船を指差した。
「ん!船か、ああそうだあれがこの港に入る最大に船だ。」
「それ以上の船もあるのか?」
「見たことはないが、よその国には4本マストの船があると聞いたことがある。」
「ありがとう、参考になったよ。」
とお礼を言って港を離れて、工房がある方へ足を向けた。
船大工などが集まる工房街に向かうとドワーフと言われる所属の姿が見え始めた。
「すまないが教えてくれないか?」
と声をかけると若い見習いの様な男が答えた
「なんだい?兄さん。」
「この付近で船造りが一番と言う親方はどちらか知りたいのだが。」
「一番と言えばほら、そこのウヰスキーという看板の店の親方が一番だろうな。」
「ドワーフにウヰスキーか、見えるようで怖いな。」
「ありがとうよ、これで飯でも食ってくれ」
と銀貨を数枚握らせて教えてもらった店のドアを開ける。
「すいません。どなたかいますか?」
とがらんとした店の中で声をかけると
「はーい、ちょっと待ってね。」
女性の声が返って来た。
暫くすると小柄な女性があらわれて
「お客様ですかな?御用は?」
と問いかけてきた。
「船を作って欲しいのだが、できれば急ぎで。」
「船をと言いますが大きさは?うちは地位だなものは作っておりませんが。」
「大きさはこの世界で一番を狙います。しかもマストや帆はありません。魔導エンジンで動かす予定です。」
と答えるながら一枚の大きな紙を広げてみせた。
そこには船の設計図が書かれていた。
「長さ・・300m!幅40m・・高さ・・50m!・・・お客さんこんな夢物語の依頼は受けられませんよ。」
と困ったもんだと言う顔で断りを入れたが、裏からその話を聞いていた風のドワーフが現れて。
「これは・・・実現できるのか?外壁は金属?木ではないのか。この大きさで浮くのかこの小部屋が肝なのか・・・ここに動力が・・・面白い。」
設計図を見たまま顔を上げずに
「これを作るための金はあるのか?」
「ああ、あるぞ。先ずは金貨3000枚置いとくからそれと外装の金属というのは俺が加工するからその内側の基礎を作って貰いたい。エンジンと書いている動力源も俺が作るから出来上がった物を見てからここを調整して欲しい。」
「お前、錬金術師か魔道具師か?」
「どちらもだ、出来るか?」
「設計図がありそこまでしてくれるのなら3ヶ月で作ってやる。しかし条件がある。」
「なんだ?」
「この船が航海するときに乗せてくれ」
「そんなことかいいぞ、その内同じ物をという注文が殺到するだろうがね。」
「そうなりゃ、酒を飲む暇もねえかもな。ハハハハ。」
豪快に笑うドワーフがファーストの手をしっかり握っていた。
ーー 船のエンジンを造る
ファーストからシフトに戻ったシフトは、カオスの自宅に向かっていた。
予定より長くこちらに来てたからな。
「母や父にお土産を買って帰ろう。」
とかなり慌てて買い物を終えると、馬車を飛ばしていた。
今回の商売で金貨2000枚以上稼いだシフトは、カージナル辺境伯領の領都に屋敷を購入していた。
これも商業ギルド経由でだ。
これからもちょくちょく行き来する必要があるし、家族が来た時にも宿泊場所に困らないと考えての判断だった。
早く返ってエンジンを開発しないとあのドワーフは張り切っていたからな。
と思いながら外殻の素材を何にするか考えていた。
「軽くて硬い物質・・・ドラゴンの鱗がいいのか?」
などと考えていると時間が経つのも忘れて気づけばカオス村の近くまで来ていた。
「行きは2日かかったのに1日でついてら?」
自宅の馬車置きに馬車を置き、馬に飼馬を与て家に入ると家族が揃ってで迎えてくれた。
「シフト、帰ってくるのがおそいよ。お土産あるの?」
「はいはい、色々やっていてね。お土産ありますし、土産話もあるよ。」
と言いながら次々にお土産を出して手渡した。
暫くはお土産を見たり食べたり飲んだりして騒いでいた家族が、
「お土産話って何なの?」
「ああ、カージナル辺境伯領の領都スガルの街に家を買った。」
「ええ、王都にも買ったのに。お金は?」
「稼いだんだよ。マジックバッグを売って。だからいつでも行けるよ。」
「それは嬉しいわね。」
母は王都に行けなかったので街に買い物に行きたい様だ。
「今度も使用人を雇ったのか?」
父が王都の家のことからそう聞いて来た。
「管理人は雇った。掃除程度はしてくれると思う。」
と言いながら地図を書いて鍵と一緒に渡した。
次の日からシフトは工房に籠るとエンジン開発と、外殻に使う素材の検討をし始めた。
「やっぱりドラゴンだよな、でもどの種類が良いのか?防御力か軽さか。」
空を飛ぶドラゴンは討伐が難しいということで、地竜を狙うことにした。
西部大森林に分け入りながらファーストに変身する。
ファーストの体格に合わせて防具や剣を創造魔法と錬金術で作っていたのだ。
前世のタングステンを想像して創造魔法を発動したら
[ヒイロガネ]
という金属が出来上がった。
この世界で伝説級の魔法金属の様だ。
かなり強度に高い金属の様で、盾ならドラゴンのブレスにも耐えると鑑定で出ていた。
森の中に入ること5日目に地竜を見つけた、デカい。
体長50mはあるワニと亀を合わせた様な姿。
魔眼の看破を使い弱点を探すと
[ 首の付け根、腹側の甲羅 ]
「僕の最大の攻撃はこの剣に風魔法を纏わせる斬撃だ。多分攻撃魔法は効果がないだろう。」
と考えて、眠り薬を大量に作り地竜の餌に混ぜて食べさせてから狙うことにした。
地竜の活動を観察しているとあることに気づいた。
近くにある湖で1日一回水を飲みに来ることだ。
大量に作った眠り薬を水魔法の水の膜で包み、水を飲み始めた地竜の口元に流すことだ。
上手く地竜が水ごと薬を飲み込んだ。
暫く地竜の後をついてゆくと、いつもの寝床に行く前に立ち止まり眠り始めた。
「上手く行った様だ。」
ファーストになったシフトは、気配を殺して地竜の首元に近づく。
「多分殺気を出せば気付かれる、無心で斬りつけよう。」
首の横に立ち剣を構えると、薪でも割る様な気持ちで風魔法を纏わせたヒイロガネ製の剣を振り下ろした。
「ズシャッ!」
剣の長さ以上の斬撃が地竜の首を断ち切った。
「この剣凄すぎやしないか?」
と思いながらも反撃する暇も与えず、ドラゴン種を倒したことに大きな手応えを感じた。
身体に熱い感覚が湧いてくる。
レベルが一気に上がった気がする。
地竜の大きな身体を収納すると家に向かって帰り始めた。
もう直ぐ森を抜け出るというところで、争う声が聞こえた。
「お前達は父の恩を仇で返すというのか!」
若い男が襲撃者達に対して大きく叫んでいる。
「恩より金の方が大事な時もあるんですよ、坊ちゃん。」
と卑下た笑いの男が剣を構えて答える。
姿を見るに貴族の様だが、ここで貴族と言えばカージナル辺境伯ぐらいのものだが・・・。
坊ちゃんと呼ばれた若い男は、馬車を背に守る感じで立っている。
馬車の中に大切な人がいるんだろう。
襲撃者は5人、倒れているのは御者と兵士のような格好の男2名。
見た感じ襲撃者が悪いのは一目瞭然な感じだ。
ファーストは、ゆっくり歩きながら声をかける
「こんな森で何やってんだお前達!」
「ん!・・・誰か知らんが関わらん方が身のためだぜ。」
と言いながら襲撃者の2人が逃すまいと後ろに回り始めた。
ファーストは風魔法のエアーカッターを後方に飛ばす。
「うう」「ぎゃー」
2名の男らが両足を切断され倒れる。
「おいコイツからやるぞ!」
先ほどから喋っている痩せたいやらしい感じの男が、3人がかりで攻撃して来た。
ファーストは剣を抜くといつ切ったかわからないほどの剣撃を放つ。
3人をほっといて若者に近づき声をかける。
「大丈夫ですか?」
しかし若者はファーストの後ろの男らのことが気になっている。
「何をしてやがる!」
と言いながらいやらしい男が歩こうとした瞬間、首がころりと落ちた。
残りの2人もそれを見て逃げようとしたし瞬間、同じく首がポトリと落ちた。
目を丸くしながらその様子を見ていた若者がハッとして、ファーストを見る。
「で、怪我はないですか?」
「け、怪我ですか?・・・ありません。しかし御者と騎士が・・・。」
「馬車に乗せて森を出ましょうか?」
と提案すると
「お願いできますか、僕は馬車が操縦できないので。」
「良いですよ、馬車の中の人にも安心する様伝えてください。」
「ありがとうございます、貴方は何処の方ですか?」
「この先にある開拓村の縁者です。」
と言いながらマジックバッグに布で包んだ死者を収納すると、御者台に座り手綱を引いた。
30分ほどで森を出た一行、ファーストが行き先を尋ねる。
「カージナル辺境伯領の領主邸へ。」
「なるほど、領主様の縁者でしたか。」
それではと馬車馬に鞭を打った。
2日後の夕刻、カージナル辺境伯領の領都に着いた。
城門で衛兵に後を頼んでから死体を引き渡した。
「お礼をしたい、来てはもらえぬのか?」
若い男がそう言い出す。
「申し訳ありません、直ぐに家に帰る必要がありまして。」
「そうか、無理してここまで同行させた様だ。名前だけでも教えてくれないか?」
「そうですね、ファーストと言います。商業ギルドに登録していますので、連絡はそこに。」
と答えて自宅の方に歩き始めた。
家に帰ったのは次の日の昼頃だった。
「遅くなったな、エンジンを開発しないとな。」
と言いながら工房に入り、設計図を元に部品を作り始める。
簡単な機構なら創造魔法で造れるが、細かい部品(基盤など)は錬金術で作るのだ。
12気筒のエンジンを作り上げる、排気量は12000c c馬力は2000馬力。
これを2機で2本のスクリューを回転させて推進力を得るのだ。
さらに補助エンジンとして水魔法の水流を出す魔道具を左右に2機ずつ用意した。
「これで小回りが可能なはずだ。」
エンジンが完成すると外殻の研究に移行する。
広い平原で地竜を出し、解体を始める。
ヒイロガネのナイフや剣は非常に切れ味がよく、スッスと解体が進む。
上の甲羅の部分は魔法耐性があり非常に硬い鱗であった。
したの甲羅は滑らかな水を弾く性質がある様で船底にもってこいの素材だった。
切り離して一部を手に持ち魔力を流しながら錬金術を行使すると、グニャグニャと変形し接合も自由であった。
「良いこれなら大丈夫だ。」
とホッとしたシフトだった。




