Moon〜明るい夜の月〜
若輩が書いているので、失笑するかもしれません。
でも、どうかおつきあいください。
まもなく――月が沈む。
そうと分かっていても、空はまだ真っ暗だ。澄んではいるが星は出ていない。
月があまりにも、大きくて明るいから。
その月は、今の短い時間しか見れない、空に高く輝いているときの黄金色と、昇っているときや沈む時の白銀色、両方見ることができる。
今日は満月だ。遥か彼方の何もない、真っ黒な地平線の上に、大きな大きな満月が、最後の光を放っていた。
その光を受けて、何もない平原の上にただ一つある、小高い丘の麓に、一人、人が佇んでいた。
その人の服は、闇のように黒いためか、景色とまじりあっている。
どうやらこの丘は墓地のようだ。十字架が立っている墓がいくつもいくつも、月の光でその輪郭をはっきりとさせている。
しかし、人がいるその丘の麓は、他の墓とは一つだけ、ぽつんと離れていた。
墓標も何もない、ただの土の盛られた墓というより塚の前に、その人は立っていた。見下ろすように。
一振りの、月に負けないほど銀色で、折れてしまいそうなほど薄く、細く、長い剣を高々と振り上げて。
その人はなんのためらいもないように、いや、むしろ決別するかのように、その剣を真新しい塚の天辺の中央に突き刺した。
たった一瞬のことだった。ずぶりと刺さった剣は、刃の3分の1ほどまで土に埋もれていた。
さした人は、右手を突き上げた。なんなのだろう、降り注いでいた月光は、全てその人の手の周りに集まったように見える。
そして、その人は、輝く手を静かに振り下ろす。塚に向かって。
一瞬、ほんの一瞬、暗く眠っているこの地が、明るくなった。塚には一瞬、輝く陣のようなものが現れた。
そして次の瞬間、全て元通りに、何事もなかったかのように、またこの大地は眠りについた。
その人は剣の刺さった何も変わらない塚を見て、ほっと息を吐いた。そして振り返った。
その人のまさに白銀の月の色のような髪が、光を受けて輝く。
そして、その人はそのまま丘を下りた。一度も振り返らずに。
地平線へと、満月へと、歩きつづけるもう小さくなっていくその黒い影に、どこからか現れた黒い塊のような小さい影が、静かに寄り添う。
剣が刺さった塚は、影達を見送るように、そこにいた。月の光を受けて。
剣は月の光を受けて、ぴかぴかの銀色の刃が特に、異常なほど、しかし淡く輝いていた。
剣には何か、文字が刻まれていた。
Moonnight Blade――月光夜剣、と。
そして――二つの影が見えなくなったころ、月は沈む。
書き終えて、はーっといきをつきました。
ずっと書きたかったものだったので、世に出て嬉しいです。
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