マリアたちの選ぶ途 -Le choix du saint-・3
(流石にそれはやめてくれ…)
ええ、無茶にもほどがあると言わんばかりに、あたしの提案に難色を示しているのは黒マリ…痴女皇国の方のマリアリーゼです。
では、どうすれば。
(とりあえずサン=ジェルマンのおっさんに聞いてみなよ…)
ええ。
実はこの時点で黒マリの方、すなわち痴女皇国側では大体の避難計画が出来上がっておりまして、あとは実行に移すだけって状態だったのです。
ただ…それをそのまま、採用するわけにはいきません。
何故ならば、聖院規範を逸脱したことをするのが確定していたからなのです…。
ええ、黒マリと違って、あたしは聖院規範を簡単にブッチできない立場なのです…。
で、そのサン=ジェルマン氏に連絡を入れますとですね。
(ええと、聖院の方のマリアリーゼだよね…痴女皇国の方じゃないよな)
(なぜそう念入りに確認を…)
(僕も一応は感情や怨恨というものと全く無縁じゃないんだよ…)
つまり、サン=ジェルマン氏にとって、聖院のあたしか痴女皇国の黒マリかで、対応を変えたいようです。
昔の前科や確執があるから仕方ない気もしますが、なるべく公平正大に振る舞って欲しいとは思うんですけどね。
で、氏の意見は、はいどうぞ倍率ドン。
(クイズ番組じゃないんだから…でさぁ、まずは自分たちでやらせてみれば?)
は?
正気ですか。
(だって軌道エレベーター作ってあげたんだぜ? なら火星や金星や木星圏の衛星って選択肢もあるじゃない。何ならリュネ世界の宇宙島。あれ痴女皇国世界の方で保存してるんでしょ?)
つまり、連邦地球の直面する問題は、連邦地球の人間たちでまずは解決させてみろ。
サン=ジェルマン氏は、そうおっしゃりたいようなのです。
はぁ…。
(で、その上でどうしようもないって事になってさ、万事休すで手を上げてしまってから助けてあげても遅くはないんじゃないかな…)
確かに、サン=ジェルマン氏の言われる通り。
聖院規範に照らし合わせても、その方が良いのは理解出来ます…。
しかし、何かが違う。
何か、特大の間違いをしでかす事になるのでは。
その不安めいた勘があるのです…。
(マリア姉さん…何でしたら私がシミュレートしましょうか?)
言ってくれたのは、エマちゃんこと、聖院側の高木エマニエル。
Immanuel Takagi 高木エマニエル infinitum Suction. 無敵卒 Slut and Angel Visual 天使外観 Physical Structure Manager,Holly temple. 聖院建造物担当顧問 Savior (M-IKLA-22) インマヌエル型救世主兵器・M-IKLA22型人間形状・MIDIシリーズ全領域迎撃機動戦闘機 Deus promissiones suas semper servat. 対人類契約救世使者
この子は生まれた時の諸々がものすごくややこしいのですが、とりあえず聖院側のクリス父さんとジーナかーさんの子供扱いとして登録されています。
そして…痴女皇国のエマちゃんと全く同じ機能性能を持った、人間型の救世主兵器…インマヌエル型MIDI、M-IKLA22と呼ばれる、とんでもない存在でもあります。
正直、この子の全性能を解放してもらえれば、問題は迅速に解決すると思うんですけどね。
「それをやると弊害あまた。むしろ、痴女皇国世界の私もそうなんですけど、この災害を乗り越えた”あと”のためにも私が単にジーナ母様とクリス父様の娘として生まれてはいないのですから…」
つまり、エマちゃんの見解でもこの地球寒冷化は「元々は人間が乗り越えなくてはならないハードルであり、私は乗り越えられないのが確定した後の収拾役」なのだそうです…。
お分かりでしょうか。
しかし、エマちゃんは同時に聖院の運営を助ける役割があります。
そして、痴女皇国のエマちゃんほどにはめっちゃくちゃな事をしていませんが、やろうと思えばできる子です。
具体的に、どういう事が出来るか、一例を挙げてみましょう。
「聖院島丸ごとNB本星に移設できます。一瞬で」
だ、そうです。
つまり、これをやってもらえたら、聖院の機能と人はそっくりNB本星へ避難することができるのです。
実際に、痴女皇国側のエマちゃんは、今聖院エマちゃんが言ったことに近い…いえいえ、もっとすごいことをやるみたいなのですけどね。
ですが…単純に、それをできない…やってはならない理由があるのです。
まず、聖院を開闢した初代様。
この方は、それまでの神様時代のあれこれの暴走や失敗の責任を取らされて聖院島に封じられたような存在です。
そして、同様に日本列島に該当する八百比丘尼国に封印されたのが、初代様のお姉様である通称:おかみ様。
このお二方は、元来ならばうかつに他に行くことができません。
例えば、北欧いけにえ村作戦。
あの時に、おかみ様がいけにえ村にお越しになっていた際、大山咋神という八百万神種族の神様が授けた神域結界設定の杭で、いけにえ村が隠れるのを防いだことがあるんですけどね。
https://novel18.syosetu.com/n5728gy/77/
あの杭によって、おかみ様や崇徳上皇陛下が動けるようになったのですよ、あの村一帯で。
つまり、日本の神社もそうなのですが、ご神域という区分けがある場所…それも上位の神様ほど強い結界の神域が、その生存には必要なのです。
で、聖院でも、実は類似のものがあるんですよ。
他ならぬ聖院本宮の石造りの構造体と、その背後の聖院開闢記念大堤の石。
そして、本宮地下深くの墓所に格納された、金衣や銀衣の死亡時にその上で身体が燃える儀式に使われた、石造りの寝台がそれです。
あの寝台は、逝去の儀式に供される金衣なら金衣その人一名につき、一台を必要とします。
で、もしもあたしが死亡する場合は、新たに寝台を必要とするのです。
つまり…初代様や二代目様にデルフィリーゼおばあさま、クレーゼ母様などが痴女皇国世界では復活してますけどね。
あの寝台こそが、非実体生命化した金衣なら金衣の意識を保存しておくための依代なのです。
つまり、聖院を聖院島ごと持って行く、というのはこの墓所などの地下設備も込みで移植しないと機能が損なわれるからなのです。
比丘尼国にしても同様です。
伊勢の神宮はもちろんですけど、大江山の元伊勢大神宮とその地下のあれこれも、持って行く必要があるんですよ。
で、比丘尼国はまだいいとして。
もっと重要な問題があるんです、移植しちゃうと。
「痴女皇国の私も言ってますけどね。通常ならば数百万年から一千万年はかけないと連邦世界の地球のかつての含有量で、地下資源を蓄積するだけの諸々の活動が有効とはなりません。それを可能な限り短縮しても十万年は絶対に必要です。そして…その活動を制御する存在も、聖院地球に残留する必要があるんです。活動拠点となる聖院本宮…つまり、聖院島ごと」




